季節の変わり目に注意したい運動誘発性喘息(アスリート喘息)について
厳しい暑さもやっと和らいで、朝晩は過ごしやすい気候となってきました。みなさん体調はいかがですか? 仕事柄、気管支炎、喘息症状の患者さんが増えてきたので、秋~冬に向かって季節が進んでいるのを感じています。
先日、夜の練習を終え帰宅した息子から「練習中に急に息がしんどくなってきて、ゼーゼーってなってん。休んだら大丈夫やったけど」と言われました。帰宅時の呼吸音は正常だったので、一過性の症状だったと判断しましたが、ここ数年は身体も成長して、同様の症状が出現していなかったので油断していました。
運動誘発性喘息(アスリート喘息)って?
みなさんも寒い時期に、マラソンやランニングなど運動中に息が吸いづらい、呼吸が早くなったり急に咳き込んだという経験はありませんか? これらが運動誘発性喘息(アスリート喘息)の症状の一部です。
「喘息」といっても原因によりさまざまな種類があり、それぞれ対処法も違いますが、今からお話しすることは、普段からコントロールが必要な喘息と診断された方、普段から喘息症状がない方の両方に起こりうる症状になります。

運動をすることで誘発される喘息症状を運動誘発性喘息といいます。我が国のオリンピアン(夏、冬)の喘息有病率は11.2%〜12.9%といわれています。これは非競技者に比べて高い有病率です。
サッカー選手ですと、元日本代表の岡崎慎司さん(関連した書籍も出版されています)、元イングランド代表のデビッド・ベッカムさんがいます。
運動誘発性喘息の知識がないと対処法もわからないため、運動を制限せざるを得なくなります。適切なケアを行えば発作は起こりにくくなり、運動制限は必要ありませんので、競技能力の向上も問題なくできます。
運動誘発性喘息の症状
・運動を始めると咳が出る
・胸の圧迫感がある
・息苦しくなる
・呼吸する度にヒューヒュー、ゼーゼーと音がする
※注意点としてこれらの症状がみられるからといって、必ずしも運動誘発性喘息とは限りません。
症状が出たときは専門医による診察を受けることが重要です。
そして、症状が出るタイミングも人によって異なり、運動開始から終了時にかけて咳や呼吸困難が出る即時型反応と、運動終了後、数時間経過してから症状が出る遅延型反応があります。
要因
・気道内の温度の急激な変化
・気道の水分喪失による乾燥
・炎症性物質が産生され気道が収縮する
これらから考えると、秋から冬は喘息が起こりやすい季節ということになります。

なぜスポーツをしていると喘息が起こりやすい?
運動誘発性喘息は、持久力が必要な運動で起こりやすく、マラソン、ランニング、サッカー、テニス、バスケットボールなどの競技が挙げられます。また、スキー、スケートといった冬スポーツも、冷えて乾燥した空気を吸い込むために発症する確率が高くなります。急に換気量が増加し、気道が乾燥・冷却されることが主な原因です。
特に起こりやすいスポーツとして、マラソンやサッカー、ラグビーなどの
・屋外で行うもの
・運動量が激しいもの
・持久が必要なもの
気をつけられることは
・急激に運動を開始せず、しっかりウォーミングアップを行う
・温度の変化、湿度の低下で気道が敏感になるので、水分をこまめに取る、マスクの着用などを行い加湿する
・定期治療と運動開始前の薬物療法を行う(喘息の管理に準じて普段から症状が起こりにくい状態を維持する)
対処法と治療法については
『喘息予防・管理ガイドライン2024』(一般社団法人日本アレルギー学会)で、運動誘発性喘息の管理の基本は、日頃から長期管理薬を継続して喘息をコントロールする。それに加えて、運動前には十分なウォーミングアップを行い、必要に応じて運動の15分前に短時間作用薬を吸入することが効果的とされています。
運動中に症状が出た場合はすぐに運動を中止し、楽な姿勢を保ちながら休息し、必要に応じて気管支拡張薬を使用します。

息子も医療機関に受診し、喘息症状の予防のため定期的な吸入薬の使用の指示がありました。症状が出たときの対処法、吸入薬の使用手順などの指導を受け、競技を続けるために自己管理する必要があると感じたようです。
寒くなっていく時期ではありますが、体調管理を行いながらサッカーを楽しんでほしいと思います。
今年度の最後のコラムになります。一年間、読んでいただきありがとうございました。