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Jリーガーたちの原点 vol.54「中山雄太(FC町田ゼルビア)」

Jリーガーたちの原点 vol.54「中山雄太(FC町田ゼルビア)」

サッカーが大好きだった幼少期。両親と兄姉が教えてくれたこと

ごく普通の公立中学サッカー部でプレーしていた少年が、高校年代から各世代別代表でキャプテンを務めるまでに成長し、21歳で海外移籍。現在はFC 町田ゼルビア(以下、町田)で活躍する日本代表DF、中山雄太のキャリアは少々異色だ。

茨城県龍ケ崎市出身の中山は小学1年生のとき、地元の北文間サッカースポーツ少年団でサッカーを始めた。同じ少年団に通っていた10歳上の兄と7歳上の姉の影響で、小さな頃からボールが身近にあったという。「低学年から週4、5回、本気でサッカーに取り組むようになってすぐ夢中になり、プロ選手になりたいとずっと思っていましたね。当時はトップ下で、高学年になるにつれて上級生のチームで出場することも増え、同学年の中では自然とリーダー的な立場になりました。チームを引っ張るという意識はなかったですけど、気持ちは強いほうで前に出ることも多かったし、俗に言うガキ大将だったと思います」

ほかの何よりもサッカーが好きだったという中山。「少年団以外でも、ひたすらリフティングをしたり、ひとりでもとにかくボールを蹴っていましたけど、それが本当に練習だと思わないくらい、ずっと楽しかったんです」

そんな末っ子の奮闘を、ともに教師である両親は温かく見守ってくれたそう。「練習の送り迎えはもちろん、食事面など身体のことも色々と考えてくれました。年の離れた兄と姉も『サッカーノートを書いたらいいよ』など、サッカーをしていた経験からアドバイスをくれたり、そういう環境はすごくありがたかったです。両親から『勉強しろ』と言われたことはありませんが、勉強することの大切さはよく教えられました。将来、何をするにしても学校での学びは役に立つ、自分にとっての財産になるということですね。僕自身、プロ選手になれるように頑張ってはいたけど、それが叶うかはわからなかったので、勉強も少なからずやっていたし、習い事のピアノと習字も小学校6年間は続けました」

少年団で非凡な才能を発揮していた中山だが、中学生になっても地元の龍ケ崎市立愛宕中学校の部活動でサッカーを続けた。1年生から上級生のチームに混ざってピッチに立つ一方、学校生活でも成績は優秀で、学級委員長や体育祭の団長を務めるなど文武両道を歩んでいたという。

人生を変えた中2の練習試合。柏での試練を成長につなげて

そんな中山に2年生の冬、人生の転機が訪れる。1年生から選出されていた県トレセン(地域の優秀選手を集めて行う練習会)で出場した、柏レイソル(以下、柏)U-15との練習試合。実力者ぞろいの相手に対し、中山はミドルシュートを決めるなど、柏のスタッフや選手も驚く活躍を見せる。「その試合後、柏からオファーが届いて、中3から通うことになったんです。自分の現状を考えたときに一番いい環境でサッカーができると思って選んだのですが、柏に入ってプロというものをより現実的に意識するようになりましたね」

1年生からセレクション経由で加入するのが普通だった柏U-15では異例の“移籍”。プロのアカデミーで始まった新たな挑戦を中山はこう振り返る。「印象深い出来事が2つありました。ひとつは、入団前に初めて練習に参加した際、あるトレーニングで1回もボールを触れずに終わったこと。すごく衝撃的でしたけど、同時に“こんな上手い選手たちと一緒にやれるんだ”と嬉しくなったのを覚えています。もうひとつは、加入後すぐに大ケガをしてしまったこと。そのせいでU-15ではほとんどプレーできず、“もうサッカーやめようかな”と心が折れそうになることもありましたが、自分と向き合い、辛抱強くリハビリを続け、ケガを乗り越えられたことで、僕の人生の土台となる精神が鍛えられたと思います」

U-18には昇格できたものの、柏の選手として本格的にプレーできたのは高校2年生に入ってから。しかしケガが癒えた中山は、そこから鮮やかな上昇曲線を描く。すぐさま実力をアピールしてレギュラーの座を獲得すると、2013年6月にはトップチームに2種登録され、8月にはU-16日本代表メンバー入り。3年生では、当時のU-18監督でのちにトップチームを指揮する下平隆宏監督からキャプテンに任命された。「チームがうまくいかない時期に悩むこともありました。そのとき監督に言われたのが、何か言葉をかけて人を引っ張っていくよりも、自分が先頭に立って前に進んでいけば、必然的に周りがついていく指針になれるということ。自分が一番先にやってみるという姿勢をそこで身につけられたのは大きく、今も僕の中に染みついています」

トップ下やボランチが主戦場だった中山がセンターバックをやるようになったのも、このケガ明けの時期だ。「最初はまったく楽しくなかったです(笑)。攻撃してなんぼだと思っていたので、すごくストレスを感じていて…。でも、だんだんとやりがいや立ち位置を自分の中で見出していきました」

そして迎えたU-18最後の大会、高円宮杯U-18サッカーリーグ2014プレミアリーグEASTでは見事クラブ初となる優勝。だが、中山の記憶に刻まれたのは、その後に喫した敗北だった。「最後に東西王者が戦うファイナルがあって、そこで(セレッソ大阪U-18に)負けたことが何よりも心に残っています。自分のキャリアに成し遂げられないものが残ったということが僕にとっては大きく、その悔しい気持ちを持ってプロに臨もうと思えた敗戦でした」

中山雄太選手試合風景

困難に出会うのは頑張っている証。「能動的」に取り組むことが大切

翌2015年にはJ1デビューを飾り、2年目からレギュラーに定着。オランダとイングランドで5年半プレーし、町田と日本代表で活躍する今も、そのベースには「中高生時代の経験がある」と語る中山。最後に、全国のサッカージュニアとサカママに向けてメッセージを残してくれた。「プロになるという夢をできるだけ多くの子どもたちに叶えてほしいと心から思います。ただ現実は、ほとんどの選手がプロになれない世界。目指す過程で挫折を味わうこともあるでしょう。でも困難な状況が訪れたときこそ、それは自分が頑張っているからなんだ、本気でそこを目指しているからなんだというふうにとらえてほしいですね。全力で頑張った経験は、必ずほかのことや違う形でも生きると思うので、まずは今現在、自分が目指しているものに全力で突き進むことを続けてほしいです。

保護者の方々は、そんな子どもたちが自主性を持って物事に取り組めるような精神面のアプローチをしてあげてほしいと思います。同じことでも強制的にやらされるのと能動的にやるのとでは習得率が違います。そして、子どもが道に迷いそうになったときには、ベクトルを良いほうに向けさせるようなサポートをしてあげる。僕の両親がそうで、どうしても足が止まってしまうときに手を差し伸べてくれました。また、自分が何をしたいかを考え、選ぶのは自分自身だということも教えてもらいましたね。僕の場合、それが自分で考えて行動する、自分の行動に責任を持つという姿勢につながったので、大事なことなのではないかと思います」

中山雄太選手試合風景

写真提供/FC町田ゼルビア

(20257月発行 soccer MAMA vol.54 「Jリーガーたちの原点 vol.54」にて掲載)

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