練習の努力を無駄にしない! 自信を持つことへのつなげ方
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第23回目。練習に励んでいるのになかなか自信が持てない。逆に周りと比べて自信を失ってしまうこともあると思います。今回のテーマは、「努力を無駄にしない、自信へのつなげ方」についてです。
「練習をしても自信が持てない」は多くの人が抱えている!?
「努力しても自信がない」
保護者の方からこんなご相談がありました。「息子は一生懸命努力しているのですが、いつも自信がなさそうにプレーしています。練習しているのだからもっとチャレンジすればいいと声をかけるのですが、なかなかチャレンジできません」
息子さん(A君)に話を聞いてみると、「誰よりも練習をしているけどあまり自信がなくて、チャレンジしようと思っても安全なプレーを優先してしまいます」ということです。このような悩みは、大人の選手も抱える問題になります。一生懸命練習に取り組み、自主練習も重ねているのに自信が持てないということです。
『努力して練習をすれば自信を持てる』
こういった認識があるかもしれませんがこれは違います。練習をすることによって自信がついたり、逆に練習をたくさん重ねているのに自信を失ってしまっている選手もいたりします。この辺りを考えながらサポートを考えていきます。
現状と理想の状態を整理する
A君に今取り組んでいることについて聞いてみました。
「パスに自信がなくて、練習の時間も周りの選手より多くパスの練習に取り組んでいて、自主練でも壁当てのパスを毎日やっています。でも同じようなパスミスをしてしまい、自信がなくなっていく感覚があります。」
A君は練習することで自信をつけようと取り組んでいる様子でした。
A君にパスに対する理想的なプレーについても聞いてみました。
「落ち着いて味方が受けやすいところに出したい。ダイレクトパスも浮かさず味方の足元に出せるような、質の良いパスを出せる選手になりたい」
質の良いパスとはどんなパスなのか詳しく聞いてみると、「浮いたり弾んだりせずに、地面を這うようなスピードのあるパスがしたい」ということでした。
達成感を持つことが自信につながる
自主練をして、以前と比べて上達したのか聞いてみました。「前より自分の理想とするパスができるようになっている気がするけど、まだまだだめです。」ここまで聞いていると、技術的には少しずつ上達しているはずなのに自信は持てていないことがわかります。
つまり能力の向上と自信の向上は比例しない場合があるということです。技術的に、能力的に以前より上達しているのに自信は失い続けるという現象が起きています。これは日本人に多い考え方ともいわれているところですが、理想と現実の2ラインで物事を考えていることが原因とされています。自分の理想のプレーと現実の自分の実力を比べ、常に「自分はまだまだだめなのだ」と否定感を味わい続けながらプレーしていくと自信は失われます。否定感を味わうのではなく、達成感や満足感を味わえると自信につながりやすくなります。
達成感を得るための目標設定
自分にとっての達成感を得るために、理想のプレーと現実の自分の実力との間に『今の自分の実力なら越えていける目標』を設定していくことがおすすめです。
今のA君の実力なら練習中に理想的なパスは何本通せそうか聞いてみると、
「5本なら通せると思います」
この目標を持って練習に臨んでもらいました。すると「自分の目標は達成できました。いつもよりいい感じだなと感じながらプレーできた感覚があります」という心境の変化を伝えてくれました。
努力を無駄にせず自信につなげていこう
このように達成感や満足感を味わえるとより自信につながっていきます。まずは今の自分の実力で越えられる目標を決めて達成していく。そして自分の実力に自信が持てた時、よりチャレンジにつながりやすくなります。
お子さんが努力しているのに自信が持てない場合は、理想の目標と自分の実力の間の目標を一緒に考えていけるとお子さんの自信につながり、よりチャレンジ精神を持てるようになります。ぜひお子さんの頭の中を整理するお手伝いをしてみてください。