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チーム移籍をするもっとも多い理由とは?チームと選手に対するリスペクトの大切さ【Monocular#21】

チーム移籍をするもっとも多い理由とは?チームと選手に対するリスペクトの大切さ【Monocular#21】

サカママの皆さん、いかがお過ごしでしょうか。サカママライターのマツユミです。新学期が始まり、生活リズムを整えるのにバタバタする時期ですね。

サッカーキッズにとっては、夏休み中に取り組んだ練習や試合を通して、心身ともに成長した手応えを感じ始めているのではないでしょうか。一方で、サッカーシーズンも本番に入り、チーム間はもちろんのこと、チーム内で選手同士のポジション争いが激しくなり、それぞれに試合出場時間の差が出てくる時期でもあります。

そんなとき、チラホラ出てくるのがチーム間の移籍です。サッカーがチームスポーツであること、ジュニア年代から厳しいトーナメント戦やカップ戦が展開されていることや1チームあたりの選手の数など構造的な課題も多くあります。今回のコラムでは、息子がこれまでに出会った移籍選手を振り返りながら、年度途中の移籍について皆さんと考えてみたいと思います。

移籍する選手の共通点とは?

年度途中の移籍の際は、選手登録の都合など繊細な問題がある為、移籍する保護者から突然のお知らせとして連絡が来る事もしばしば。しかし、よくよく話を聞くと、次の2つの理由を挙げることが多く、どの選手の移籍背景にも共感してしまいます。

理由その01:試合の出場機会

私たち親子がこれまでに出会った選手の中で、最も多かった移籍理由は「出場の機会を求めて」です。AチームとBチーム、クラブによっては更にCチームまで編成している事があります。どこに配置されているかによって、試合数や練習内容なども大きな違いが出てくるため、選手はもちろん保護者にとってもチーム発表の時は、緊張感が走ります。

息子が所属していたチームはおよそ半年に一度チーム編成があり、その度に、希望チームに入れなかった子どもたちが涙を流す姿をたくさんみてきました。また、配属されたチームでスタメンを取れるかベンチに回るかで試合に出場できる機会が大きく異なります。その結果、ベンチに回らざるを得ない選手や試合数の少ないチームに配属された選手が、より多くの試合出場機会を求めて移籍していきました。

理由その02:指導方針

次に多かったのは、異なる指導方針を求めての移籍です。選手数やコーチの数によって指導の手厚さに差があることは、サカママのみなさんなら承知のことだと思います。チームによっては、GK専属コーチやフィジカルトレーナーがいるチームもありますね。また、とにかくチームの勝利にこだわるか、チームの勝敗に関わらず選手一人一人の成長にこだわるかという、指導方針もクラブチームによって様々です。息子の所属していたチームは、勝利が優先される指導方針だった為、より個人にフォーカスした指導を求める選手は移籍していきました。

 
移籍を経験した仲間と一緒にテクニックスクールに通っていました

国によって違う移籍の考え方

実は、小学生年代の選手の移籍自体がこれほどまでに話題になるのは、日本社会の特徴・仕組みと似ている点があります。日本では移籍を繰り返す事はマイナスな印象になる事が多くありますが、サッカー王国である欧州地域では、年に何回も自分に合ったチームに移籍をすることが常態化されています。面白いことに、移動の理由は、日本と同じ「出場機会」と「指導方針」が多いようです。

 
欧州ではジュニア年代はストリートサッカーで鍛えることも

これらの地域では、「所属チームに納得がいかないならば、コーチやチームとしっかり話し合おう」、そして「子どもにとってより良い選択をするための移籍を歓迎しよう」という小学生年代の育成に対する考えが根ざしています。それは一方で、「チーム・コーチ・チームメイトを大切にできないならば移籍しよう」や「コーチを信頼できないならば、異なるコーチを探そう」という、チームに対するリスペクトの文化にもつながっています。

サッカーを好きになる環境作りが大切

ジュニアの選手は、どの子もサッカーと出会ってまだほんの数年しか経っていません。今所属しているチームだけしか知らないという選手や保護者も少なくないと思います。だからこそ、その選手に合ったチームに移動しながら、もっともっとサッカーを好きになることができる環境づくりを進め、どこのチームに所属していても、サッカーキッズ一人一人の成長を願いサポートできるといいですね。

WRITER PROFILE

マツユミ
マツユミ

「みんなちがって、みんないい社会とは?」を日々考える社会科学系研究者。2人のボーイズ(12歳・9歳)を育てるサカママ。兄は、サッカー8年目。一方、弟は兄の影響でサッカーを始めるも、現在はアイスホッケーに夢中。スポーツ医の夫と愛犬の5人家族。