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モチベーションを保ちやすい目標設定の仕方とは?

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第12回目。
今回のテーマは「モチベーションを保ちやすい目標設定の仕方」。目標を立てても途中で諦めがち……というお子さん、少なくないのではないでしょうか? そんな時は、モチベーションを保ちやすい目標になっているかを確認してみましょう!

モチベーションを保つためには、目標設定の仕方も大切

目標を決めたのになかなかモチベーションが上がらず、結局長続きしなかった経験はありませんか? 私もよく明日から新聞を読もう、ダイエットを始めようと目標を立てるのですが、3日坊主で続かないことがあります……。目標を設定することは大切ですが、モチベーションを保ち達成まで取り組み続けるためには、その設定の仕方も大切です。

結論から言ってしまうと、目標設定で大切なのは「自分が求めている姿に本当に近づけているのか、日々成長を感じられるか」という2点です。自分が求めている姿が「大きな目標」で、それを達成するために「小さな目標」があると考えてください。特にモチベーションを保つためには「小さな目標」の設定の仕方を考える必要があります

実例で見る!モチベーションを保ちやすい目標設定の仕方

 

それでは、実際に私が相談を受けた例に沿って、モチベーションを保ちやすい目標設定の仕方を見て行きましょう。

以前、ジュニアユースの選手から「体力をつけるために毎日3km走ると決めたけど、続けられなかった」という相談を受けました。なぜ続けられなかったのかを聞いてみると、「キツイし楽しくない。やらなきゃとは思うが、いざとなると面倒くさくなってしまう」とのことでした。

ポイント①目標達成した先のなりたい姿を意識する

そこで、まずはそもそもなぜ体力をつけたいと思ったのかを聞いてみました。ここで「なぜ」を聞いたのは、自分が求めている姿をしっかり意識できているかを確認したかったからです。言い換えれば、大きな目標と小さな目標に相互関係があるかどうかの確認です。そこがあやふやだと、なかなかモチベーションも保てません。

彼の答えは、「体力がないせいで、試合に出られないから」でした。彼にとっては、「大きな目標=試合に出る」ということですね。そこで、「毎日3km走れば、試合に出られるようになりそう?」と聞いてみると、「分からないけど、出るチャンスは増えると思う」と答えてくれました。どうやら、自分のなりたい姿への意識や、大きな目標と小さな目標の相互関係は問題なさそうです。

ポイント②より具体的で細かな目標設定をする

次に、達成までのモチベーションを保つためには、自分の状況をよく整理して、できるだけ細かい目標を設定しなければいけません。彼の場合、目標の方向性は間違っていませんが(試合に出たい→体力をつける)、その内容をもっと具体的にする必要がありました。そこで、一緒に短期目標とスケジュールを設定してみることにしました。

まず、「体力をつける」をより具体的に「試合中にフルで走り切れる」と言い換え、これに対する今の到達度を聞いてみました。60%くらいとのことだったので、2か月後に何%までいきたいかを確認しました。すると70%との答えだったので、必ずクリアできるか確認すると、65%と返ってきました。

ここで数値が下がること自体は問題ありません。むしろ、短期的な目標(今回であれば2か月)や小さな目標であれば、より現実的で達成できそうなものにすることをオススメします。ハードルが高すぎると自分の成長を感じにくく、モチベーションが保ちづらいからです。

「体力をつける」が「2か月後までに試合をフルで走り切る体力の65%程度まで持っていく」に変わったので、次に変えるのは「毎日3km走る」という部分です。彼と一緒に1週間のスケジュールを確認してみると、サッカー以外の習い事もしており、「毎日」は現実的ではないということが分かりました。そして、現状の1km走のタイムを確認してみると、4分30秒くらいとのことでした。

これらの情報から設定しなおした目標が次のようなものです。

月曜日:ゆっくりでもいいので3km走り切る
水曜日:少しペースを上げて2km走る(目安11分以内)
金曜日:さらにペースを上げて1km走る(目安4分15秒~35秒)

どうでしょうか? 毎日3kmに比べるとだいぶハードルが下がった感じがしますが、その分、細かくより具体的な目標になりましたよね。こうすると、日々の取り組みの中でもタイムが少し縮んだといった成長の実感が持ちやすくなります

この目標を立てた一か月後、もう一度彼に話を聞いてみると、週3日しっかり取り組めており、毎週少しずつタイムが上がってきていると報告してくれました。 また、当初は2か月後で65%の目標でしたが、この時点で試合の時にはそれ以上走り切れている実感があるとのことでした。

目標設定のポイントは、日々成長を感じられるか

 

いかがでしたでしょうか? 彼の例からも分かるように、モチベーションを保ち続けるためには「日々成長している」という達成感を味わえる目標にすることが大切です。漠然とした目標だとなかなか成長しているという実感がもてずに途中で挫折してしまいがちです。漠然とした目標にしないためには、「細かく」「具体的に」「現実的に」という3点を意識してみてください。

また、少し時間のかかる作業にはなりますが、細かいスケジューリングはぜひ取り入れて欲しいと思います。つい分かりやすく「毎日」といった頻度でスケジューリングしがちですが、実際は他の習い事などもあって日によって割ける時間も変わってきますよね。細かくスケジューリングをすれば、無理なく取り組める目標が立てられますし、やるべきことも明確になって「達成したい」という意欲も出てきます

「うちの子、目標は立てるんだけど、なかなか最後まで取り組めないんだよなぁ……」とお悩みの方は、ぜひ今回の内容を参考にお子さんともう一度目標の再設定をしてみてほしいと思います。きっと日々の成長を感じながら、達成までやり切れるはずです。

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

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