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今さら聞けない!?サッカールール「ハンドの反則の改正」

1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ!
今回は「ハンドの反則の改正」について。2021/22の競技規則の改正では、ハンドの反則に関する変更がありました。どんなときにハンドとなるのか、改めて整理してみましょう。

2021/22競技規則改正で「ハンドの反則」に変更が

最近のJリーグの試合を見ていて、「え、今のはハンドじゃないの?」「何か変わったの?」と思う方がおられるのではないでしょうか。2021/22の競技規則の改正で、Jリーグ、JFL、なでしこリーグは6月19日から「ハンドの反則」について変更がありました。今回は、その要点を説明していきたいと思います。

結論から言うと、今回の変更は大きな変更ではなく、「競技者の手や腕がボールと接触した場合でも、すべてが反則になるわけではない」という原則が再度強調されています。手や腕に当たったら「ハンドの反則」にすることが多くなりすぎ、PKによって勝敗が決まることが増えたので、見直そうという流れになったと聞いています。

ハンドの反則は、手や腕の動きの妥当性がポイント

手や腕でボールに触れるとハンドの反則になりますが、冒頭でも述べたようにすべてが反則になるわけではありません。意図的にボールに触れた場合はハンドの反則になりますが、意図せずに(偶発的に)ボールが手や腕に当たる場合もあります。
このような場合は、動きの流れの中で競技者の手や腕の動きに妥当性があるかが、主審の判断の基準となります。競技者の体の動きから手や腕の動きが正当ではないと判断された場合は、不自然に体を大きくしたとみなされ、ハンドの反則となります。

それでは、どのような状況だと「手や腕の動きに妥当性がない」とみなされ、ハンドの反則になるのでしょうか。

反則となる場合

①手や腕で体を不自然に大きくして、次のように手や腕でボールに触れる場合。

  • 手や腕が明らかに体から離れ伸ばされている
  • 手や腕が明らかに肩より上に伸ばされている

手や腕の位置がその状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は不自然に体を大きくしたとみなされます。

②競技者の手や腕が次のような状況であり、手や腕にボールが当たった場合。

  • 競技者はボール/ボールの進路/相手競技者にチャレンジしていた
  • 相手競技者がシュートする前に、競技者の手や腕は既に体から離れていた
  • 競技者の手や腕は、ほぼその位置に保たれた状態でボールが腕に当たった
  • 競技者の手や腕は妥当な位置と判断されず、「大きなバリア」としてボールの進行を妨げた

「大きなバリア」とは?
手や腕が体の幅を大きくするような位置にある状況でボールに触れる/当たることによってボールの進行を妨げ、相手競技者のシュートやクロスボールをブロックし、重要な状況に影響をもたらすことを言います。

反則とならない場合

手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものであり、また、競技者の体の動きから妥当であると判断された場合。

  • 手や腕が体に近い位置にある
  • 手や腕は体から離れているが、競技者の「自然な」動きによってその位置にある
  • ボールに当たるのを避けようとして、手や腕が体の内側の方向に動いている
  • 自身で意図的にプレーしたボールが触れる/当たる
  • 手や腕は既に広がっているが、ボールが予期しないところ(近くにいる味方競技者からなど)から来て腕に当たる
  • 手や腕が競技者の体を支えようとしている(倒れそうになったときに地面に手をつくなど)

先ほど反則となる場合にあげた「手や腕が明らかに体から離れ伸ばされている/肩より上に伸ばされている」状況であっても、競技者のプレーや体の動きによっては、手や腕の位置が妥当とみなされ反則とならないこともあるのです。

このように、主審はその状況において競技者のプレーと関連して、手や腕の位置が妥当なのかどうかを判断しなければなりません。選手も反則となるリスクを理解しておかなければなりません。

得点につながる場面でのハンドは?

得点につながる場面で偶発的にボールが手や腕に当たった場合は、その直後に得点が生まれたかが、反則になるかならないかの判断のポイントとなります。(※もちろん、意図的に手や腕に当てた場合はハンドの反則です)

反則となる場合

  • 偶発的であっても、ゴールキーパーを含め、自分の手や腕から直接得点する
  • 偶発的であっても、ボールが自分の手や腕に触れた直後に得点する

このような場合はハンドの反則となりますので、得点は認められません。

反則とならない場合

  • 偶発的にボールが手や腕に当たり得点の機会が作りだされただけ(当たった直後に得点するのではなく)
  • 偶発的に味方競技者の手や腕に当たって来たボールを得点する

得点がボールに当たった直後と判断されない場合はハンドの反則ではないので、得点は認められます。また、ボールがゴールに入らずゴールラインを越えたならば、ゴールキックやコーナーキックとなります。ゴールラインを越えない場合はそのままプレーが続けられます。

審判は一貫した判断基準を、選手はリスクを小さくするプレーを

以上、ハンドの反則の改正について、IFAB(国際サッカー評議会)はシンプルにしたかったと思われますが、ハンドの判定は従前より主観的になりがちなので、妥当かどうか(受け入れられるかどか/理解できるかどうか)の議論が絶えないのではないかと思います。

審判員としては、裁量の幅が広がったとは言え、サッカーをどのように理解するかを追求し、一貫した判断基準を持つことが求められていると考えます。選手の皆さんはハンドの反則のリスクを小さくするプレーをしてもらいたいと願っています。

 

アンケート

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WRITER PROFILE

小幡 真一郎
小幡 真一郎

1952年7月21日生まれ、京都府出身。元国際主審。
サッカーの競技規則の側面から、サッカーの持つ魅力、またはサッカーそのもののを伝えたいと思います。著書に7月21日発売『おぼえよう サッカーのルール』(ベースボールマガジン社)、『すぐに試合で役に立つ! サッカーのルール・審判の基本』(実業之日本社)、『失敗から学ぶサッカー審判の教科書 しくじり審判』(カンゼン)がある。