TVドラマから学ぶ「サッカーしかない」からの脱却方法【Monocular#8】
サカママの皆さん、いかがお過ごしですか? サカママライターのマツユミです。
夏休みに入りましたが、毎日暑い日が続いています。そんな日は、クーラーを効かせた室内でアイスクリーム片手にTVを眺めるのはいかがでしょうか?
そこで今回のコラムでは、サッカーを題材にしたTVドラマ、「オールドルーキー」(TBS系 日曜21時から放送中)を眺めてみたいと思います。ドラマを通して、「サッカーを言い訳にしない時間の過ごし方」について親子で話すキッカケ作りになれば嬉しいです。
「僕からサッカーをとったら何も残らないんです」
さて、今回のコラムのヒントをくれた「オールドルーキー」、息子もハマっているドラマです。ストーリーは、現役を引退したJリーガーで元日本代表の主人公、新町亮太郎(綾野剛)が、セカンドキャリアとして飛び込んだスポーツマネージメントというフィールドで奮闘するというもの。
第一話では、チームの解散を機に所属先を失った新町が、スポーツマネージメント会社に新たな所属先を探す依頼をする姿が描かれています。自身の気楽な予想に反して、オファーをくれるチームは見つからず、途方にくれた新町は、マネージメント会社の高柳社長(反町隆史)に泣きつきます。そのシーンは、かなり衝撃的でした(涙)。土下座をしながら泣きつく新町と高柳社長のやりとりを眺めてみましょう。
新町「引退は受け入れます、ただサッカーからは離れたくないです、コーチでもいいです……」
高柳「ライセンスはありますか?」
新町「ライセンス?……そうだった……」
高柳「元日本代表がこんなことをしていてはダメですよ!」
新町「じゃ、僕はどうすればいいですか?」
新町「誰か僕を助けて!」
新町「5歳からサッカーしかやってないんです!そんな僕からサッカーをとったら何も残らないんです」
新町の泣じゃくる姿が画面いっぱいに映し出されます(涙)。このシーンを見て、私も息子も「おいおい!サッカーを言い訳にしないでほしい」という思いを持ちました。すべてのサッカーキッズが、「どうすればいいのですか?」から「どうすればいいか自分で考えてみます」へ思考を向けられること、そして何より、「サッカーしかない」から「サッカーがある」と胸を張れる未来に向けて今できることはなんでしょう?
サッカー選手には自分で未来を切り開く時間と環境がある!
プロサッカー選手の平均引退年齢は、およそ26歳と言われています(上代・野川2013)。サッカーは、野球(およそ29歳)や相撲(およそ32歳)に比べて、若いうちに引退を余儀なくされるだけではなく、退職金・年金制度のあるプロ野球やセカンドキャリアに関する慣例がある相撲とは異なり、「Jリーグ功労金制度」がようやく設立されたという厳しい現実があります。
しかし、若い年齢での引退やキャリア形成のためのリソースの少なさを裏返してみると、サッカー選手には自分の力で自分の思い描く未来を切り開いていく時間と環境が十分にあるといえます。だからこそ、すべてのサッカーキッズが成長していく過程において、「サッカーを取ったら何も残らない」時間の過ごし方ではなく、色々なスポーツをしてみたけれど、「やっぱりサッカーが大好き」という思いや、様々な経験や体験を通して「すべてはサッカーに繋がっている」という実感を持つことができる時間の過ごし方ができるといいですね。
この夏は、サッカーとは異なる経験も積んでみよう
一生懸命ボールを追いかける日々を言い訳に使わないためにも、この夏は思い切って、一旦サッカーから離れて異なる経験を積む時間を意識してみてはいかがでしょうか?
TVドラマ「オールドルーキー」は、現在6話まで終了しています。そこには、自分の未来のために必要なライセンスは何かを知らない新町の姿はもうありません。お時間のある方は、ぜひご覧ください。
さて、今回はこの辺にしましょう。今後もサッカーに関わる面白いドラマや映画をみなさんと共有していきたいと思います。引き続きお付き合いください。
参考資料
- 上代圭子,野川春夫 2013 「日本人元プロサッカー選手のキャリアプロセスに関する研究―自主的な引退と非自主的な引退に着目して」『生涯スポーツ学研究』vol9, No.1・2
- J. League Hand Book 2021
- 2020年度Jリーグ功労金制度授与対象者について https://aboutj.jleague.jp/corporate/release/556/