鈴木輪太朗イブラヒーム(徳島ヴォルティス)「いつも自分が一番下手だと思ってやってきた」
192cmの長身を活かした打点の高いヘッドを武器に、高卒J1入りを果たした。U-18日本代表候補に名を連ね、ガーナ人の父と日本人の母を持ち、抜群の身体能力を誇る。しかし彼がここまで来られたのは、“ギフト”に頼らないひたむきさにあった。
プロは試合に出るためにすべてを高め合っている
-3月ルヴァン杯でのFC東京戦でJデビューを飾りました。
「まず感じたのが、これまで経験したことのない緊張感でした。高校サッカーでもスタジアムでやったことはあったけど、プロとして、スタジアムに立つ感覚は全然違いましたね。でもピッチに入ってみたら楽しかったんです。いい意味で課題がわかりました」
-プロの試合で感じたことは?
「やはり高校年代とはプレスのスピード、パスのスピードが全然違いました。止める、蹴るの技術レベルから違うし、オン・オフのメリハリが全然違う。オン・ザ・ピッチになると全員のスイッチがバチっと入り、練習から常に緊張感をもってやっています。プロでは全員が試合に出るためにすべてを高め合っている印象ですね」
-課題として取り組んでいることは?
「プロの舞台で僕が求められているのはどれだけゴール前で仕事ができるかだと思っています。僕がゴール前にいることで、相手にとって脅威になる存在にならなくてはいけない。相手をなぎ倒してでもシュートに持っていく必要があると思います」
-選手権の神奈川県予選準決勝では、ライバルの桐光に逆転ゴールを奪いながら、惜しくもPK戦の末に敗れてしまいました。
「ケガで大会に出られなかった中、桐光との試合にみんなが連れて行ってくれたんです。僕はそこ(桐光戦)だけは絶対に試合に出ると決めていて、みんなに恩返しをするつもりでやりました。試合には敗れてしまったけど、逆転ゴールを決めることができたし、途中出場した15分間は高校サッカーで一番の宝物になる特別な時間だったと思います」
やることがいっぱい。でも、それが楽しい
-プロへの経緯は?
「コロナ禍の影響で、活動休止期間も長く難しい状況でした。選手権予選後も肉離れを起こしてしまったのですが、徳島ヴォルティスが待っていてくれたので、練習参加では『この誘いだけは逃すわけにいかない』と思って必死にやりました」
-3月にはU-18日本代表候補の練習試合に出場しました。
「今はチームで一番下手だし苦労しています。でも高校選抜との同年代との試合ではいい感触でプレーできました。過去に一度U-18でプレーしましたが、その時よりやれている印象があります」
-夢だったプロになれて感じたことは?
「当たり前ですけど、やることがいっぱいあることが分かりました(笑)。でも、今はそれが楽しいんです。努力することは全然苦じゃないです」
-高校生プレーヤーに向けてメッセージをお願いします。
「僕はただサッカーを頑張っていただけだけど、それが一番大事なのかもしれない。悩んでいても、結局行動しなかったら意味がないです。コロナ禍で難しい時期なのはわかりますが、僕でもプロになれたんだから(笑)、みんなも目標に向かって頑張ってください!」
写真/©TOKUSHIMA VORTIS