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「挑戦する心を育むには?」アメリカ少年サッカー記24

アメリカでも話題になった日本のサッカー少年のエピソード

「お母さん、知ってる?日本のサッカー少年の話がアメリカのネットで話題になっているよ」、と息子が言ってきました。何のことかと息子の話をよく聞くと、どうやら数年前にクリスティアーノ・ロナウドが来日した際に、日本のサッカー少年がロナウドに直接質問したやりとりのシーンのことを言っているようです。

その子は3つの質問をロナウドの母国語であるポルトガル語で用意し、それを読み上げてロナウドに質問したのですが、周りの取材陣から笑い声が上がりました。それに対してロナウドは、「なぜ笑うのか? 彼はポルトガル語を上手く話しているよ」と言い、笑った大人達を牽制しました。そして、「君が一生懸命努力しているのだから、この大人たちはハッピーになるべきだ」と言い、ポルトガル語を学んでインタビューしたこの子のチャレンジ精神を讃えたのでした。

そして今年、この少年が高校サッカー選手権でプレーし、見事に優勝したことが日本で再び話題になりました。このエピソードが海を越え、アメリカの少年少女たちにも興味深い話として伝わったようです。

子どもの挑戦する心を育むには?

 

スポーツは、一瞬一瞬が挑戦の連続です。例えば、サッカーなら一対一を仕掛けるかどうかや、パスを出すタイミング、シュートを打つのかパスを出すのかの判断を、素早く選択し続ける必要があります。

その過程において、親としては、子どもが何事にも挑戦する心を学び、今後もその心を育んで欲しいと思います。というのも、幼少期の頃は何事にも躊躇せず、常に挑戦心を持ち続けるように見えた姿勢が、年齢が上がるにつれ、少しずつ失われつつあるように感じるからです。

大人になった自分を振り返ると、もはや挑戦心よりも、挑戦して失敗した時にどう思われるのか、その羞恥心の方が圧倒的に大きく感じます。ひょっとしたら、子どもの挑戦心は、周りにいる大人たちの言動によって、知らず知らずのうちに削られてしまうのではないでしょうか? ロナウドに質問をした少年の記者会見場での大人の笑いも、子供の挑戦心を阻害することになり得るのではないでしょうか? そこで今回は、子どもの挑戦心を育む声かけについて紹介します。

批判者ではなく、応援者になる魔法の言葉

アメリカの文化で日本と大きく違うように私が感じることは、年齢に関わらず「とりあえずやってみる。そして失敗したら、また考える」という、とりあえず挑戦する精神です。失敗ありき、でもやってみる姿勢が浸透しているので、子ども達は当然のごとく、大人のコーチもよく挑戦して、よく失敗します。サッカー協会のような巨大な組織でも、大掛かりなシステム変更を一瞬のうちに施行し、とりあえずやってみる俊敏性は高いです。

そんな国での、子供達の試合後の声かけは、たった一つでシンプルです。

「Good job!(よくやった!)」

例えどんなに大差のついた試合でも、子ども達が頑張ったことは間違いありません。その挑戦に対して「よくやった!」と声かけするのです。これは、自分の子どものチームメイトに留まらず、対戦チームの選手にも同じ言葉をかけます。私は接戦で負けた相手選手に、この言葉を投げかけるのを躊躇しちゃった時があるのですが、周りを見るとたくさんの大人達がそう声かけしていました。

子ども同士もチームに関係なく、「Good job」と、互いの名前を呼び合いながら健闘を讃えます。このポジティブな言葉は、試合をリセットします。良い試合であっても悪い試合であっても、1試合ごとに気持ちを切り替えて次の試合に意識を向けます。この言葉かけを通して、また新たな挑戦に挑むよう子どもの背中をそっと押すのです。

試合の復習はもちろん大切です。練習したことが試合でできていたかどうかや、今後の改善点を見つけることで、次の新たな挑戦へとつながっていきます。しかし、この反省会で子どものミスしたプレーやチームの問題点を親が指摘してしまうと、子どもの挑戦心が削がれることがあるそうです。親としては、子どもの成長を手助けしたい故の行動ですが、試合での自分のプレーがどうであったかは、子ども自身が一番良くわかっています。だからこそ、試合を終えた子どもへの第一声は「よくやった!」の言葉で、その試合の挑戦を称えることが今後の成長へと繋がっていくのだと思います。

どうしても失敗が気になる場合には、自分の意見をいう前に、まずは子どもがどう考えてプレーしていたかを聞いてみるのが良いそうです。そうすると、子ども自身が自分の言葉で考えるようになり、子どもの挑戦心を育む手助けにもなるそうです。それでもなお自分の意見が言いたい場合には、意見を言っても良いか、子どもに了承を得てから発言するのもお勧めだそうです。このように段階を踏むことで、子どもとの信頼関係を崩さずに、次の成長へとつなげることができるかもしれません。

Life is a challenge

 

ある記者会見で、若かりし頃のクリスティアーノ・ロナウドがこう言っています。

「Life is the challenge, and I’m a challenge man!(人生は挑戦です、そして私は挑戦者です!)」

そして、アメリカのサッカー女子代表アレックス・モーガンはこう言います。

「Winning and losing isn’t everything; sometimes, the journey is just as important as the outcome.(勝ち負けが全てではありません。時には、その道のりが結果と同じくらい重要になるのです)」

いくつになっても、挑戦心を持って、サッカーにも人生にも立ち向かえるよう、大人の私達は子どもの挑戦を応援し続けなくちゃ、と思いました。

WRITER PROFILE

近本 めぐみ
近本めぐみ

日米で色々な大学、研究所を渡り歩く理系研究者。現在はアメリカ在住、在米歴と息子のサッカー歴が8年のサカママ。サカママWEBでのコラムを通して、アメリカならではのサッカー育成の面白いところ、興味深いところを発信していきます。

★外部ブログ「アメリカ発少年サッカーの育成事情」でも執筆中

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