成長期はカルシウムと腸内環境を意識しよう!【鈴木啓太の腸内環境を整えよう vol.14】
腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さんによるコラム。今回は、成長期と腸内環境にまつわる話をお届けします。また、これからの季節にぴったりな成長期の子にオススメのあったかレシピもお見逃しなく!
成長期は「カルシウム」を補給して、骨量を高めておくこと
スキャモンの発育発達曲線からもわかるように、小学生の高学年から中・高校生にかけては、成長が著しい時期です。
また、下記のグラフからもわかるように、成長期に一番関連する骨量(骨の密度)は、身体の成長とともに増加し、男性は20歳、女性は18歳頃にピークを迎え、その後は年齢と共に徐々に減少していきます。
そのため、成長期には積極的に「カルシウム」を補給して、骨量を高めておくことが大切です。成長期にカルシウムが足りているかどうかは気付きにくいものですが、この時期にしっかりカルシウムを摂っておかないと、後々、骨によるケガが増えたり、骨粗しょう症になることも!
なお、成長期に疲労骨折や軽い骨折がよく起きる場合は、カルシウムが足りていないことが原因でもあるので、とくに意識して摂ることが大事です。
牛乳のみで考えると、コップ4杯ちょっとの量が必要
成長期(12~14歳)に、どれくらいカルシウムを摂ればいいのかというと「男子:1,000mg/日、女子:800mg/日」が推奨されています(日本人の食事摂取基準 2015年版より)。男子の量を牛乳のみで考えるとコップ(200ml)で4杯ちょっとの量に。多いようにも感じますが、それほど成長期にはカルシウムが必要というわけです。
また、10~11歳と30~49歳のカルシウムの必要推奨量はさほど変わらないのですが、子どもと大人では身体の大きさが違うことから、子どもは大人よりも2~3倍のカルシウム量が必要といえるのです。
10~17歳はカルシウムの吸収率が高まる時期
カルシウムは吸収率が良くない栄養素です。ただし、カルシウムの吸収率は年齢によって変化し、10~17歳(思春期)はカルシウムの吸収率が高まる時期でもあるのです。だからこそ、この時期にカルシウムを摂ることが重要に!
また、食品別でもカルシウムの吸収率は異なります。カルシウムが多い食品の中でも、最も吸収率が高いのが牛乳です。それでも、吸収されるカルシウムは約40%。カルシウムを多く含んでいる小魚でも約33%、野菜(小松菜やモロヘイヤなど)も約19%しか吸収されません。
そのため、効率よくカルシウムを摂るには、どんな食品から摂るのかも大事になってくるのです。
腸内環境を整えておけば、カルシウムもしっかり吸収できる!
カルシウムの吸収は、腸内環境にも影響しています。
11~14歳の女児が食物繊維を4週間摂取し、カルシウム吸収量を測定したところ、カルシウムの吸収量が増加したという結果に!つまり、食物繊維を摂ることで、腸内環境が改善されてカルシウムの吸収量が増加したと考えられます。
また、無菌のマウスと腸内細菌のいるマウスの研究では、無菌のマウスは、腸内細菌のいるマウスに比べて、栄養素を吸収しにくく、体が小さいという結果もでています。エネルギーの吸収面にも腸内細菌が働いているといえるのです。
腸内細菌は、カルシウムをはじめ、栄養素の吸収に大きく関係しています。成長期は、とくにエネルギー量と栄養素の必要量が増加するので、食事量をしっかりとることが大事ですが、そのためにも、栄養素をしっかり吸収できるように、発酵食品などを摂り入れて多様性のある腸内環境をつくるこが重要なのです。
サッカージュニアは骨量が高まりやすい!?
実は、骨の成長には、カルシウムだけでは不十分です。カルシウムにプラスして、骨の吸収を助けるビタミンD、骨の形成を助けるビタミンKも一緒に摂ることがポイントです。
- カルシウム:乳製品、小魚、大豆製品、小松菜、ほうれん草、モロヘイヤ etc.
- ビタミンD:鮭、しいたけ、青魚 etc.
- ビタミンK:葉物野菜(ほうれん草、小松菜、春菊など)、大豆製品、海藻類(のり、ワカメなど) etc.
ビタミンDは食事から摂ることも大切ですが、実は日光(紫外線)に当たることで体内でも産生されるのです。肌をどれくらい露出しているかによるものの、夏の昼間なら5分程度外に出て日光浴するだけでも、必要量のビタミンDが摂れることも。
そのため、サッカーを頑張っている子どもたちは、皮ふからビタミンDがつくられている可能性は高いといえるでしょう。
とはいえ、これからの時期は日照時間が少なくなり、紫外線も低くなるので、ビタミンDがつくられる量は少なくなってしまうことに。ですので、サッカーをやっている子どもたちも、ビタミンDを含む食材を一緒に摂ることが大事です。
なお、スポーツをやっている子どもは、足裏の刺激から骨にも刺激がいくため、骨量が増加することがわかっています。サッカーをやっている子どもは、運動をしていない子に比べると、骨量は高まりやすいといえるのです。
成長期の子にオススメの「鮭とほうれん草のドリア」
最後に弊社の管理栄養士による、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKがとれる、成長期の子どもたちにオススメの「鮭とほうれん草のドリア」をご紹介します。寒くなるこれからの季節、ぜひ一度、作ってみてください!
材料(2人分)
鮭の切り身 | 1切れ |
ぶなしめじ | 1/2パック |
ほうれん草(下茹で済み) | 100g |
ご飯 | 400g |
有塩バター | 40g |
牛乳 | 400ml |
薄力粉 | 大さじ4 |
ピザ用チーズ | 100g |
A | |
酒 | 小さじ1 |
塩 | 少々 |
B | |
コンソメ | 大さじ1 |
こしょう | 一つまみ |
作り方
- 鮭を耐熱皿に入れてAをふり、ラップをして電子レンジで火が通るまで加熱し、骨と皮を取り除き、身をほぐしておく
- しめじは石づきを切り落とし、手でほぐす
- ご飯をグラタン皿に入れておく
- フライパンを中火に熱し、有塩バターを入れて溶かし、②を加えて炒める。火が通ったら弱火にして薄力粉を加えて混ぜ合わせ、粉気がなくなったら牛乳を加える
- かき混ぜながら弱火で熱し、とろみがついたら①とほうれん草、Bを加えて混ぜ合わせ、火からおろす
- ③に⑤、チーズの順にのせて、オーブントースターで表面に焼き色がつくまで焼いて完成
参考:Whisner et al. J Nutr. 146(7):1298-1306 (2016)