ジュニアアスリートに多い「貧血」を予防する方法【鈴木啓太の腸内環境を整えよう vol.11】
腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さんによるコラム。今回は、とくに夏場になりやすい「貧血」を予防する方法についてお届けします。
サッカーをやっている子は貧血になりやすい?!
貧血に大きく関わってくる「鉄分」。まずは、鉄分の代謝についてお話します。
身体に吸収された鉄分は、そのまま骨髄に運ばれて赤血球の材料になるのがメインです。その他、一部は肝臓に貯蔵されたり、ミオグロビンとして筋肉の生成の材料に使われたりもします。
摂取した鉄分の一部は再利用されるのですが、毎日、尿や便から1~2mg喪失されます。ですので、喪失される鉄分を毎日摂取する必要があるのです。
さらにジュニアアスリートは、上記以外にも鉄分を喪失しています。というのも、トレーニングをすると大量に汗をかきますよね。じつは汗からも鉄分は喪失するのです。
また、衝撃により一部の赤血球が破壊をされることで、鉄分が喪失されることがわかっています。例えば、マラソン選手は足裏を地面にたたきつける回数が多いため、足裏の衝撃により赤血球が破壊されて、鉄分の一部が喪失されてしまうのです。
サッカーもぶつかりあう、衝撃のあるスポーツですので、鉄分を喪失しやすいということです。
また、小学校高学年から中学生にかけて成長期の子どもは、成長にあわせて筋肉の量が増え、それに伴って筋肉に使われる鉄分の量も増えていきます。
つまり、ジュニアアスリートは、運動と成長により鉄分が喪失されるので、非常に貧血になりやすい時期です。とくに夏場は、食事の量が減ったり、汗の量が増えるので、より貧血になりやすいといえるでしょう。
ジュニアアスリートに多い貧血の原因とは?
ジュニアアスリートの貧血の主な原因は、鉄分の不足です。
厚生労働省 鉄の食事摂取基準(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aq.pdf)にもあるように、小学校高学年から中学生は、他の年代に比べて、鉄分の必要量は多く設定されています。
また、上記で述べたようにジュニアアスリートは、発汗や衝撃、ケガによる出血、成長に伴う筋肉量の増加などで喪失してしまう鉄分が多いため、必要な量の鉄分を摂取できていない場合があるのです。
鉄分の不足は、胃や腸の調子が悪いことも要因になります。例えば、チームから成長期だからごはんをいっぱい食べるようにと言われて、無理をして食べていると胃腸に負担になってしまいますし、朝ごはんを食べてすぐに朝練に行ったり、あるいは練習後、食事をしてすぐに就寝していると、胃腸への負担から吸収不良となり、鉄分の不足をまねいてしまうのです。
また、エネルギー不足が貧血の原因となることがわかっています。とくに成長期はエネルギーの必要量も多くなるため注意が必要なのです。
貧血になると、どんな症状がでる?
貧血になると、下記のような症状がでます。
- 頭痛、めまい、眠気
- 持久力の低下、疲労感
- 舌炎、爪の変形
- 結膜蒼白
朝、なかなか起きてこなくなった(起きるのが億劫になっている)、今まで普通に練習についていたのに、急についていくことができなくなった、爪が白っぽいなども、貧血の可能性があります。日々、お子さんを観察するようにしましょう。
また、上記の症状が重い場合は、一度医師に相談してみてください。
なお、練習や試合中など、気分が悪くなった選手が貧血かどうかをチェックするには、あっかべーをさせて目の下の結膜部分をみるといいでしょう。白っぽくなっていると、貧血の可能性があります。
貧血予防のポイント① 鉄分豊富な食材をとる
栄養素の中でも鉄分は、とくに体内で吸収されにくいってご存知ですか?
そのため、貧血を予防するためにも、鉄分が豊富な食材を積極的にとることが大事です。
鉄分は、上記の図のように「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分けられ、体内への吸収率が異なります。
肉類(とくに赤身)や内臓類(レバー)、魚類などを含む「ヘム鉄」は吸収率が20~30%あります。
一方、緑黄食野菜や卵類、海藻類、豆類、貝類などを含む「非ヘム鉄」は、吸収率が2~5%しかありません。ただし、非ヘム鉄と一緒に、ビタミンCやたんぱく質を一緒にとることで吸収率はアップします。ゴーヤチャンプル(卵+ゴーヤ)、チンジャオロース(牛肉+ピーマン・パプリカ)などがその例です。
また、非ヘム鉄を使ったメニューがあれば、デザートにオレンジやキウイ、または、100%の柑橘系ジュースをプラスするといいでしょう。
ヒレ肉、カツオ、卵、青菜(ほうれん草、小松菜)は日常的に使いやすく、鉄分も豊富です。また、サバ缶やあさり缶も、既に火が通ているので調理も簡単です。成長期はとくに鉄の必要量が増えるため、ヘム鉄はもちろん、非ヘム鉄も上手に取り入れていきましょう。
貧血予防のポイント② 腸を整える
ある研究では、腸内細菌、とりわけ酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌が鉄分の吸収を助けていることが報告されています。
つまり、土台となる腸を整えることで、鉄分の吸収をあげる可能性があるということです。ですので、ビフィズス菌・乳酸菌が含まれるヨーグルト、キムチなどの発酵食品の摂取や、ビフィズス菌・酪酸菌の増加を助ける食物繊維の摂取を心がけましょう!
貧血予防のポイント③ バランスよく食べる
上記で述べましたが、エネルギー不足も貧血の原因になってしまいます。
そのため、エネルギー不足にならないように、バランスよく食べることが重要です。
成長期はエネルギー必要量が多いので、しっかり食べているつもりでもエネルギーが不足しがちです。3食+補食もとるように心がけましょう。また、食べてすぐに寝る、食べてからすぐに運動するのは消化に悪いため、食後2時間はゆっくりできる時間を作ることです。
鉄分豊富なレバー。オススメの食べ方は?
とくに鉄分が豊富な食材がレバーです。例えば、1食あたり豚ヒレ肉に含まれる鉄分が1mgに対し、鶏レバーには5gの鉄分が含まれています。また、鶏レバーよりも、豚レバーのほうが鉄分が豊富。
とはいえ、お子さんが苦手だったり、食卓にあまりレバーを使った料理は並ばないのではないでしょうか。そこで、弊社の管理栄養士によるレバーの下処理の方法とオススメの調理法をご紹介します。日頃から、レバーも取り入れるように心がけてくださいね。
下処理の方法
- 血抜き:食べやすい大きさに切って、流水で表面の汚れや血を洗い流す(薄く切るとさらに食べやすくなります)
- 臭み取り:牛乳または氷水に20~30分ほど浸して、キッチンペーパーでよく水気を切る
オススメの調理法
- にんにくや生姜、カレー粉などで風味をつける
- 甘辛煮や竜田揚げ、唐揚げにすると子どもでも食べやすい