風邪予防のポイントは、今注目の「酪酸菌」―前編【鈴木啓太の腸内環境を整えよう vol.3】
腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さんによるコラム。今回は、腸内環境から風邪を予防する方法をご紹介します。
アスリートは風邪を引きやすい!?
アスリートは、身体が強いっていうイメージがありますよね。でも、アスリートはハードなトレーニングにより免疫力が低下しやすく、風邪を引きやすいとも言われているのです。
★免疫についての記事はこちら
実際に国際大会でも、医務室を訪れる選手の41%は風邪症状を訴えているといった論文(Med Sci Sports Exerc. 2007;39:577-86.)も発表されています。
■ロンドンオリンピックにおける内科系疾患の割合
では、一般の人よりも風邪を引きやすい状態にあるアスリートが、風邪を引かずにいられるのはなぜなのでしょうか?
弊社でアスリートの腸内環境を4年間研究した結果、アスリートの腸内環境は、菌の多様性(種類の豊富さ)があり、酪酸菌が多いことがわかったのです。とくに酪酸菌は一般の方と比べると2倍も多いことが確認されています。
つまり、腸内にたくさんの種類の菌がいること、且つ酪酸菌が多ければ、風邪予防にもつながるといえるのです。
今、注目されている「酪酸菌」とは?
「酪酸菌」って、耳にしたことありませんか?弊社ではかねてより酪酸菌に注目していたのですが、今、腸内細菌の中でも、とくに注目されている菌なんです。
酪酸菌とは、酪酸を生み出す菌の総称のこと。酪酸菌は、短鎖脂肪酸(脂質を構成する脂肪酸の一種)のひとつで、私たちが摂取した食物繊維を分解して酪酸を作りだします。
酪酸菌は、腸内環境を整えるのはもちろん、免疫細胞にも働きかけ、免疫力をコントロールする働きを持っていると言われています。免疫力は低すぎると体調を崩してしまい、高すぎるとアレルギーなどを発症してしまうこともあるので、免疫力を調整し、バランスよく保ってくれる酪酸菌は、日々の健康にも大きく影響するのです。
他にも、酪酸菌の働きにより
- 健康長寿
- インフルエンザを軽減
- 大腸がんを予防
などが期待できると言われ、今後、さらに注目されるのではないでしょうか。
参考:AuB酪酸菌についての記事
酪酸菌を増やす方法は?
ビフィズス菌や乳酸菌にはたくさんの種類があり、食品にも添加しやすいので、いろいろなメーカーさんが研究されて、ヨーグルトや飲料など含まれている食べ物も多いですよね。酪酸菌も、調べてみると、ぬか漬けやチーズなどに含まれていると表現されているものもあるのですが、それはごく微量。また、酪酸菌は臭いがきついので、「酪酸菌入り〇〇」のように食品に含むのはハードルが高いとも言われています。
酪酸菌を増やす一番の方法は、食物繊維を多く含む食べ物(高食物繊維食)を摂ることです。汁物・鍋物を具沢山にしたり、白米を雑穀やもち麦入りに変更したり、おやつや食後のデザートにみかんなどの果物を食べるだけでも、食物繊維の摂取量を増やすことができるものです。1日を通して色々な食材で食物繊維を積極的に摂れば、酪酸菌をはじめとする免疫力をコントロールする菌が増えるので、風邪予防につながるというわけです。