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女子サッカー選手に必要な食事量とは?

女子サッカー選手に必要な食事量とは?

女子サッカー選手の身体の悩み」をテーマにした、順天堂大学医学部附属順天堂医院・浦安病院の女性アスリート外来所属の上木先生によるコラム。第3回は、女子サッカー選手に必要な食事量とはどれくらいなのか、その考え方についてご紹介します。

第2回のコラムはこちら

必要な食事量とは?

 

練習などの運動で身体を動かす機会が多い女子サッカー選手は、運動に利用されるエネルギーを上乗せして食事をとる必要があります。ですから、本当は運動量に合わせて食事量を調整するほうがよいのですが、実際はどうでしょうか?

食事量が足りているかが簡単にわかる方法は、体重を測ることです。体重が増えれば、食事量が多い又は運動量が少ない、体重が減れば、食事量が少ない又は運動量が多い、と言えるでしょう。

小中学生は成長期真っ只中にあるため、特に体重は増えることはあっても減ってしまってはいけません。身長の伸び、成長曲線に合わせて増加していることが大切です。

選手たちから「どれくらいのエネルギーを食事からとればいいですか?」というような質問を多くいただきます。実際に契約をしてサポートをしている選手には、食事の聞き取りをし、個人にあった方法と合わせて推定したエネルギー量をお伝えすることはありますが、日々活動量や食べるものが異なるため、あくまでも目安となります。実際に食事内容を聞くと、日々の継続的な練習をしていることもありエネルギー消費量が多く、本人が思っているほど食事量がとれていないケースも多く見受けられるのです。

必要なエネルギー摂取量を正確に知ることは難しいので、まずは目安量を確認することから始めるといいでしょう。下の表1で、お子さんに当てはまる年齢と性別の基礎代謝基準値を見つけてください。その値にお子さんの体重(kg)と下の表2にあるⅡ(ふつう)の値をかけましょう。この値が、普段の生活に必要なエネルギー摂取量の目安となります。

推定エネルギー必要量(kcal/日)=
基礎代謝基準値×体重(kg)×身体活動レベルⅡ(ふつう)

※身体活動レベルⅡ(ふつう)とは、座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む場合

参照体重における基礎代謝量
【出典】厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020」
年齢階級別に見た身体活動レベルの群分け
【出典】厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020」

また、成長期である17歳までは、下の表にある成長に伴う増加分のエネルギーをプラスすること、そして運動をしている女子サッカー選手は、さらに運動分のエネルギー量をプラスする必要があります。

成長に伴う組織増加分のエネルギー
【出典】厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020」

なお、実際のエネルギー必要量は、結果として食べたものが身体で使われてどうだったか、そして体重の増減があったかという結果でしか判断できないものです。ですから、定期的に体重測定を行い記録をして、体調やパフォーマンスと合わせてチェックをすることをお勧めします。

運動のエネルギー消費量はどれくらい?

次に運動によるエネルギー消費量の目安についてです。メッツ(METs)を用いて計算します。メッツは、さまざまな身体活動の強度を示す指数です。

運動によるエネルギー消費(kcal)=
1.05kcal×メッツ×時間×体重(kg)

サッカーは7メッツなので、サッカーを1時間練習し体重が50kgの場合は、 1.05×7×1×50=367.5kcal となります。

※その他のメッツについてはこちらを参考にしてください。
国立健康・栄養研究所の改定版「身体活動のメッツ(METs)表」(2012年4月11日改定)

従って、下記が女子サッカー選手の必要なエネルギーの目安になります。

推定エネルギー必要量 + 成長に伴う増加分のエネルギー + 運動によるエネルギー消費量

定期的に練習を重ねる女子サッカー選手は、毎日運動分のエネルギー補給をしないとどうしても不足してしまいます。常に甘いものが食べたかったり、日中の眠気が強かったりなどの自覚症状がある場合は、エネルギー不足かもしれません。また、疲れやすい、練習についていけない、筋肉がつきにくいなども同様です。充実した練習をするためには、毎日不足することなくエネルギー補給をしていきましょう。

栄養バランスの考え方

 

食事を毎食栄養価計算するのは現実的ではありませんよね。とはいえ、毎日なんでもありかといえばそうではありません。品数や量が毎食安定しないのも考えものです。ここでは、食事の組み合わせの基本についてご紹介します。あくまでも基本ですので、まずは押さえておくべき考え方になります。

ひとまずは、お皿の数とその皿にのせる食材を目安に整えれば、自然とちょうどいいバランスに近づけることができるのです。皿にのせる食材を下記のように5つに分けて考えます。

①主食の皿
(ごはん、麺、パン、シリアルなど)
女子アスリートのエネルギーの元になる、炭水化物が多く含まれます。成長や運動量に合わせてしっかりとりましょう。

②主菜の皿
(肉、魚、卵、大豆製品)
メインのおかずで、たんぱく質が多く含まれます。この皿のおかずを多く食べるよりも、3食に分けて毎食とることのほうが大切です。たんぱく質は筋肉だけではなく、血液にも関連し、不足すると貧血になることもあります。過不足なくとりましょう。

③副菜の皿1~2皿
(野菜、きのこ、海藻など)
野菜や大豆製品などのサブのおかず(小鉢やサラダ)や汁物を用意します。体調に合わせて、食材の種類や調理法、量などを調整するといいでしょう。

④乳製品の皿
(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
骨を構成するカルシウムが補給できます。成長期には欠かせない食品です。脂質が多く含まれているため、状況に合わせて低脂肪牛乳や低脂肪ヨーグルトも活用しましょう。

⑤果物の皿(果物)
糖質やビタミンが補給できます。アスリートは習慣化してとりたい食品です。

①から⑤まで6皿を、毎食そろえることが基本です。難しい場合は、皿数ではなく、5つの要素としてワンプレートにのせることから始めてもいいでしょう。この食べ方を土台にし、競技や個人の特性、コンディションに合わせてアレンジを加えてオリジナルのアスリート食に調整していくこと、そして、そのプロセスが最も大切になります。まずはできる範囲で取り組み、お子さんの体調の変化を確認してみましょう。


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