ゴールキーパーという特殊なポジションを目指すメンタルの構築 〜サカママが論文調査と現状から気づいたこと〜
こんにちは。サカママライターのHIROです。さて、いよいよ秋もそろそろ終盤を迎え…師走を迎えようとしています。前回の記事では、息子のある試合での事件(!?)からバレーボールをはじめるに至った経緯までをお話しさせていただきました。今回は、ゴールキーパーという特殊なポジションと“強い心の構築”について、普段研究者もしております立場から、1つの論文と現状によって感じたことを書かせていただきます。
メンタル最強のゴールキーパーを目指す!?
息子は、自分に自信がないことに対しては心が折れやすいです。前回の記事で記載した、ゴールキーパー(GK)なのにボールから逃げた事件も、息子の心が折れたことで起きたのだろうと私は思っています。一方で、自分自身で「いける!!」と自信を持っているときの息子の気迫や底力は、大人からしても無限大だと感じることが多々あります。
私からすると、「なぜあえて責任が重いGKを、息子はやらせてくれと買って出るのか?」親としてはできれば避けていただきたいポジション…と疑問しかないのですが、どんな状況に陥っても今のところ(!?)はまだGKをやっていきたいようです。
そこで、なんでも知りたい私は、GKの心理的状況について調べてみました。少し古くなりますが福井ら(2015年)は、GKが失敗を克服する心理的プロセスに関する論文を発表していました(※)。著者らは「GKの失点は屈辱や恐怖や後悔というネガティブな思いとの戦い」と述べており「GKに代表されるアスリートが、失敗経験を克服することは競技継続と成功に向かうために重要な問題であると言える」の後に「競技継続をしているアスリートは失敗経験に向き合い、それを乗り越えその経験を次の行動に活かしてプレーを続けていることで克服している」としています。
つまりは、サッカーを続けないと失敗は克服できない! ということです。シンプル(笑)!! でも難しい!! この、気分が落ちてしまった状況のときに、まだ発展途上の子どもたちの心にどう向き合うのか…。それが親としての大きな課題だと思います。
コーチが最強の味方だった!!
さらに、福井らの論文には、2015年時点でサッカーのGK指導の重要度と指導法の普及に大きな関心が寄せられていたようで、日本サッカー協会(JFA)ではGKへのより質の高い指導体制を構築しはじめたと示しています。しかし、問題点として、効率的にGK指導を行えるものは決して多くはない点があげられ、その原因に「GKの心理的側面が理解されていない」ことが挙げられるそうです。2025年現在では、GK専門のスクールも開講されているなど、理解が深まりつつあるのだと思いますが。
息子が所属するチームのコーチの1人に、GK経験者の方がおられます(Nコーチと呼ばせていただきます)。Nコーチが息子にとってかなりの支えになっていることは間違いありません。親としても涙腺崩壊だった出来事としては、試合で息子がGKをやったときに、相手にシュートを入れられてしまったのですが…息子は自分がボールをキャッチしたにもかかわらず、相手がそのボールを蹴ってしまいそれがゴールとしてカウントされてしまったのです。
息子は低学年ながらも口が達者なので、審判に抗議しましたが認められず。試合も負けてしまい、息子はベンチで大号泣。そんなときにNコーチは、息子が泣き止むまで、ずっと息子を抱きしめてくれていました。
こんなに包容力のあるコーチが周りにいますか!? その他の場面でも「(息子の名前)ほどいいキーパーは他のチームにはいないぞ!」とどんな時でも試合結果ではなく、息子の成長に対してコメントをくださり、息子のやる気を引き出してくださいます。こんな素敵なコーチいますか!?(笑)前述のGKの心理的側面を理解できる指導者が少ないなかで、一生ついていきますと思える最強のコーチと出会えたと思っています。

「自分の心を強くしたければ、周りに優しくしなさい」
最強のコーチ陣がいるなかで、息子は最強のGKを目指しているわけですが、家庭でのフォローとして私が気をつけていることがあります。それは、私自身でも非常に経験したことなのですが、「チームメイトに優しくすること」です。当たり前と思うかもしれません。しかし、チームメイトも2年生なので、まだまだやんちゃでスキルも発展途上なので、プレー中も自分の理想とは違ったことが多々起きているはずです。
そこを同じチームメイトがイライラしたりヤジを飛ばしたりするのは、私の中では絶対にNGです。チームのみんながみんな、とても熱心に一生懸命にサッカーをするチームなので、ミスしたときの罪悪感は子どもながらに大いに抱くはずで、そこに追い打ちをかける必要はないと思っているためです。そういうときこそ、ポジティブな言葉をかけて、チームを鼓舞する心の余裕を息子には持ってほしいと考えています。これを地道に続けることでチームワークが強固になり、切磋琢磨して、自然と強い心が構築されていくと思っています。

参考文献
※福井邦宗, 豊田則成「ゴールキーパーが失敗を克服する心理的プロセスの検討」スポーツ心理学研究(2015)42(2), 67-79.