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マルチスポーツは怪我予防のカギ? ―アメリカの現実と我が家の取り組み

マルチスポーツは怪我予防のカギ? ―アメリカの現実と我が家の取り組み

こんにちは、テキサスのサカパパ japa-ricanです!
我が家の息子はU10シーズンが開幕し、ここまで5戦5勝で首位を独走中。時に「これはアメフトか⁉」と思うほど激しいプレーが繰り広げられるアメリカのU10サッカー。何度も蹴られ、引っ張られ、倒され、悔しさと痛みで涙を流しながらも立ち上がり、再びボールを追いかける息子。その姿に熱血コロンビア人コーチから「お前はWarriorだ!」と声をかけられながら、縦横無尽にボールを追いかけまわしています。チーム全体のモチベーションも高く、何より息子が心から楽しそうにプレーしている姿を見られるのは本当に嬉しいことです。

ただ、順調なときほど気をつけたいのが「怪我」。サッカーを続ける以上、怪我は避けて通れません。私自身も14歳の春、県内の強豪高校への準特待生入学が決まった直後、Jリーグ下部アカデミーとの練習試合で1ゴール2アシストとサッカー人生最大の活躍をした翌週に、左膝前十字靭帯断裂と半月板損傷を負いました。復帰には1年を要し、プロへの夢を諦めざるを得なくなった辛い経験があります。だからこそ、息子の怪我には人一倍敏感になってしまいます。

最近も子どもたちの友人2人が相次いで骨折。さらには先月、息子の大好きなコーチまで足首の靭帯断裂を負いました(驚くことに彼は3日の休息後、指導復帰し1カ月後にはプレー復帰映像まで送られてきましたが(笑))。こうして周囲の怪我の話を耳にするたび、リスクの大きさを痛感します。体格差が広がり、プレー強度が増す中で、息子もいつかは大怪我に見舞われるのか――そんな覚悟もしています。良くも悪くもアメリカのジュニアサッカーは荒い!

そんな中、知り合いのユースアスリート専門理学療法士が、怪我予防の効果的な取り組みの一つとして「マルチスポーツ」の取り組みを推奨してくれました。今回はその意味やメリット・課題、そして現実的な取り入れ方について考えてみたいと思います。

マルチスポーツとは

「マルチスポーツ」とは、ひとつの競技だけでなく複数のスポーツに取り組むこと。例えばサッカーと野球を並行して行うケースや、シーズンごとに競技を切り替えるケースも含まれます。日本では「ひとつの道を極める」ことが美徳とされるため馴染みが薄い考え方ですが、アメリカでは特にジュニア期に奨励されているスタイルです。

専門家が推奨する理由(メリット)

•怪我予防:オーバーユース(使いすぎ)による故障を防ぐ
•運動能力の向上:投げる・打つ・跳ぶ・走るなど多様なスキルを獲得
•メンタルのリフレッシュ:新しい仲間や環境に触れることでメイン競技での燃え尽きを防止

理学療法士の友人も「同じ部位の酷使による怪我は本当に多い。だからこそマルチスポーツは大切」と強調していました。

しかし、現実的に複数のスポーツをやらせられるのか、という問題に直面します。

現実的な課題(デメリット)

•時間的負担:練習や試合のスケジュール調整が困難
•移動負担:アメリカでは送迎必須で家族全体の負担大
•経済的負担:会費・用具・遠征費などが高額
•休養不足:怪我予防のはずが、かえって休息不足につながる矛盾

アメリカでの実情

息子のチームには16人の選手が登録されていますが、マルチスポーツをしているのはわずか3人。アメフト、野球、バスケを並行していますが、本格的に両立しているのはバスケの子だけ。そして彼らに共通するのは2つ。「運動能力が高い」ことと「経済的に余裕のある家庭」。つまり、マルチスポーツを取り入れることは理想としてはよく語られるものの、実際にはかなりハードルが高いのです。

学校スポーツとの違い

「アメリカはマルチスポーツに取り組むアスリートが多い」というのは事実ですが、これは主に学校スポーツのことを指します。日本の部活動では在校期間中ずっと同じ競技に取り組みますが、アメリカの学校スポーツでは年間を通して競技を季節ごとに変えるため、自然と複数のスポーツに関わることが可能です。費用もクラブより安く、親の送迎負担も少なめで、学校単位でのスポーツ活動ならマルチスポーツに取り組むことは十分に可能です。

ただし、学校スポーツのトレーニングの質や指導者の専門性はクラブに劣る場合が多いようです。要するに、「楽しく幅広くやるなら可能」「高いレベルを目指すなら難しい」というのが、アメリカにおける一般的なマルチスポーツの実情です(なお、アメフトやバスケットボールなどのアメリカ発祥スポーツでは、学校ベースでの取り組みが中心で、トップレベルのトレーニングや試合環境も学校スポーツで整う場合が多いようです)。

我が家での工夫

理想は理解していても、現実的にマルチスポーツを続けるのは難しい家庭がほとんど。そこで我が家では「遊び」として別のスポーツや運動を日常的に取り入れる工夫をしています。例えば、

•家の前で1対1のバスケ対決
•種類の違うボールで遊ぶ(アメフト、野球、テニスボールなど)
•鉄棒(アメリカでは鉄棒がない学校が多くみんな逆上がりができません!)
•音楽に合わせ創作ダンス
•プール遊び

家の内装業をしていた父の血を受け継ぎ、私もDIYで裏庭にSASUKEコースや竹馬を作ったり、トランポリンを組み立てて設置してみたりしました。

要は「自主練の代わりに別の動きで体に刺激を与える」くらいの軽い発想で、日常的に無理なく楽しめることをできる範囲で取り入れるようにしています。

親としては「子どものためになることは何でも!」と思いがちですが、無理なものは無理。大切なのは、家庭の状況に合ったやり方で無理なく続けること。そうすることで、子どもも余計なプレッシャーを感じずに楽しくさまざまな運動に触れることができ、メインであるサッカーに集中して長く取り組み続けていけるのではないでしょうか。

ゴールデンエイジ真っ只中の息子を見ると、「毎日でもボールを蹴らせたい」と思ってしまいがちです。しかし、ひとつの動きや技術に偏った反復トレーニングばかりでは、短期的には成長や成果が見られるかもしれませんが、長期的には怪我のリスクが高まったり、競技そのものに対しての燃え尽き症候群に陥ったりする危険もあります。バランスよく、無理なく、楽しく――ジュニア期はこれが一番だと私は考えています。

WRITER PROFILE

japa-rican
japa-rican

アメリカ テキサス州ダラス郊外在住。3人の小学生の父親。
日本で生まれ育ち、プロサッカー選手を目指して高校時代に2度全国大会に出場するも、膝の大怪我で夢は叶わずその後渡米。アメリカ生まれの長男は3歳でサッカーを始めて現在U-9クラブチームに在籍。ジャパニーズ アメリカンである息子を見守りながら、驚きや発見の連続であるアメリカ ジュニアサッカーについてブログで発信中
⚽日本人親子のアメリカ サッカー記⚽

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