メインコンテンツに移動
マルチスポーツはなぜ良いのか? 複数のスポーツをするメリット<前編>

マルチスポーツはなぜ良いのか? 複数のスポーツをするメリット<前編>

【マルチスポーツ】という言葉をご存じですか? メインで行うスポーツ以外にも、複数のスポーツを経験することです。うちの兄弟の周りには、幼い頃からサッカー以外にも複数のスポーツを実践する子が実に多く、運動能力がぐんぐん成長している様を目の当たりにしています。そこで今回は、マルチスポーツのメリットについて考えてみたいと思います。

欧米では主流の「マルチスポーツ・アプローチ」

夏は海でボディボードを楽しむ

欧米では、幼い頃はさまざまなスポーツを行ったほうが良いとする「マルチスポーツ・アプローチ」が主流だといいます(※1)。たしかに、サッカー選手に限らず、大成するスポーツ選手は幼少期にメインスポーツ以外にも意図的にたくさんのスポーツに触れていたという話はよく聞きます。

例えば、野球の大谷翔平選手はバドミントンと水泳を、テニスの錦織圭選手はサッカーをしていたというのは有名な話。また、サッカーの久保建英選手も、ラグビー体験やサーフィン体験など、サッカー以外のスポーツに触れる機会を作っていたようです (※2)。

また、オフシーズンはあえて別のスポーツをすることが決まっている国や地域もあるといいます。なぜそこまでマルチスポーツは推奨されているのでしょうか。

マルチスポーツのメリット

親子でボルダリングの体験

各種能力の向上

1つ目は、各種能力の向上です。各種能力とは主に【運動能力】と【非認知能力】が挙げられています。運動能力はその名のとおり、俊敏性・柔軟性・瞬発性などといったあらゆるスポーツをするのに必要な能力のことです。また、マルチスポーツを行っている子は、身に付けた運動能力を応用する力も高いといいます。

また、非認知能力とは、主に意欲や自信、忍耐や自制、協調や共感などといった、テストや勉強では測りにくいメンタル面の能力です。たくさんのスポーツを経験すると、異なる環境や新しい指導者、仲間に出会えますよね。その刺激が子どもの非認知能力を飛躍的に高めてくれるのだと思います。

けが予防

ある研究によると、幼少期から1つのスポーツを行ってきたユースアスリートは、そうではないアスリートと比べて練習のし過ぎによるスポーツ傷害のリスクが1.5倍、総合的なスポーツ傷害のリスクが 1.6 倍高くなることが報告されているそうです!(※1)

また、小学生年代のサッカー選手は早期にサッカーのみに専念する傾向があり、その早期専門傾向が強いほど膝や踵といった成長関連障害が発症しやすいという指摘もされています(※3)。

サッカーが大好きで夢中な子ほど、ついついサッカー以外には目もくれずに打ち込みがちですが、そのせいで体を壊してサッカーができなくなったら悲しいです。小学生年代くらいまでは体のためにも、サッカー以外のスポーツを取り入れてあげるのがよさそうですね。

燃え尽きリスクの低下

低学年ではサッカーを離れバスケットボールクラブに入っていた時期も

早期に1つのスポーツに固定すると燃え尽き症候群の可能性を高めるという説は多く、複数のスポーツをやっているほうが燃え尽きリスクが下がるそうです。

実は、我が家の長男は一時期サッカーから離れた経験があるので、この意味がとてもよく分かります。幼稚園からずっと大好きで続けていたサッカーでしたが、小学生に上がるとチームの雰囲気が一気に厳しくなり、練習が楽しくなくなってしまったことがありました。親子で話し合った結果、一旦サッカーをやめて他のことをやってみよう、という結論になりました。サッカー好き夫婦としては、サッカーが嫌いになってしまうことが何より一番避けたいことだったのです。

やりたいことをやってみるのが一番だということで、他にどんな習い事をやってみたいか聞いたところ「バスケと水泳」と即答。さっそく体験し、近所のスクールやチームに通うようになりました。そして数カ月が過ぎたころ、小学校で活動しているサッカーチームの存在を知ったら「行ってみたい」と言いました。あまり急がず、まずは雰囲気を見に行き、その次にあらためて体験をすることに。実際に体験してみると、とにかく楽しくボールを蹴る雰囲気が気に入った長男は「やっぱりサッカーもやりたい!」と入会を決めました。

学年が上がるにつれ、バスケや水泳はやめてサッカー一本に。中学生になるときに「サッカー以外の選択肢もあるよ」と何度か話し合いましたが、本人はジュニアユースのクラブチームに行く選択をし、今は本当に心からサッカーを楽しんでいます。「高校も絶対サッカー部があるところに行きたい!」と話しています。

サッカー以外のスポーツも経験したからこそ、あらためてサッカーの楽しさや「自分はやっぱりサッカーがいい!」という気持ちが強まったのかなと思っています。

実際にどんなスポーツをしている子が多いのか?

我が家は兄弟共にサッカーがメインですが、兄は先ほど書いたように「水泳」と「バスケットボール」を、弟は「陸上」「体操」「水泳」を習っていました。幼い頃は冬にスキーにもよく行きました。弟はまだ小学生なので、今も別の競技やスポーツの機会があれば積極的に参加しています。

実際、サッカーにプラスしてどんなスポーツが人気なのかは、次回のコラムでまとめたいと思います。「あの子はあのスポーツを続けていたな」「このスポーツについては、あの子の親に聞いてみよう!」など、次々に話を聞いてみたいサカママの顔がたくさん浮かんだので、数多くのスポーツの経験談やメリットを紹介できると思います! 来月もどうぞお楽しみに!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

※1 大山 高 「欧米主流のマルチスポーツ・アプローチとは?」 帝京大学
※2 久保 建史 「おれ、バルサに入る!」
※3 長野 康治 「マルチスポーツ活動によるスポーツ障害予防効果および身体機能変化の検証」 日本女子体育大学

WRITER PROFILE

まりこ
まりこ

臨床心理士/公認心理師
オフィスkahunaカウンセラー
14歳と11歳のサッカー兄弟のママ。サカママ歴12年。
長男はおっとりマイペースに地域の街クラブでサッカーを楽しみ、次男は強烈な負けず嫌いを生かし強豪クラブで切磋琢磨。心理の専門知識が役立った経験を踏まえ、実体験や失敗も絡めながら情報を発信します。
HP

Pick Up

走りが変われば、プレーが変わる!走力を伸ばすトレーニング

走力はトレーニングによって変わっていくもの。ここでは、サッカーの走りにつながるトレーニングをご紹介。回数をこなすより、一回でも“上手くできる”ことを意識して!

知っておきたい!サッカーで求められる走力とは?

サッカーにとって欠かせない「走る」という運動。実は、サッカーと一般的な走りには違いがあるって、知っていますか? サッカー選手に必要な走力について、アビスパ福岡でフィジカルコーチを務める野田直司さんにうかがいました。

【レポート】佐藤龍之介選手の母・希代子さんのパフォーマンスがアップする食事サポート

ファジアーノ岡山で活躍する佐藤龍之介選手の母・佐藤希代子さんを迎えて行ったサーモスpresentsのイベント。ここでは佐藤さんが心がけていた、食事にまつわるサポートをご紹介!

【サカママのキニナル】三笘薫選手の著書 世界NO.1選手になるための『VISION 夢を叶える逆算思考』って?

日本代表、そして世界最高峰のプレミアリーグで活躍する三笘薫選手の著書『VISION 夢を叶える逆算思考』。一見むずかしそうなタイトルながら、分かりやすく文庫化になり、実はサッカージュニアやサカママに響く120の「技術」と「理論」が綴られています。ここでは、その一部をご紹介!

【レポート】サイエンスxデジタルを使ったサッカー脳の鍛え方Vol.4

7月19日に開催した4回目となるSTEAM サカママイベント。ここでは、サッカープログラムを活用した講義やグループワーク、映像を活用したトレーニングの模様をお届けします!