指導者の言霊「橋本英郎 プエンテFCスクール代表/東京ヴェルディ」
ジュニアの頃に「サッカーが好き」という気持ちが根付いてほしい
私がスクールをはじめたきっかけは「子どもたちに現役選手と触れてもらいたい」という思いがあったからです。また、子どもたちにとって、このスクールがジュニアユース、さらにその先はプロや海外へとつながっていく架け橋になりたい――そんな思いもあり、「プエンテ」(スペイン語で「架け橋」)というスクール名にも込めています。
子どもたちには、スクールを通して、とにかくサッカーを好きになってもらいたいと思います。それは僕の信条でもあるからです。今なお現役選手でいるのも、サッカーが好き、サッカーが楽しいからですし、だからこそ、まだまだ続けたいという思いがあります。子どもたちには、将来サッカー選手にならなくても、大学生、社会人になってもサッカーを続けてもらえるような、“サッカー好き”になるきっかけを与えられればと思っています。現役選手としては、プレーをみせて、視覚や感覚で覚えてもらうことも大事だとは思うのですが、それよりも、子どもたちのゲームに交ざったり、一緒にシュートやドリブル練習をすることを大事にしています。
ジュニア年代は、サッカーが好き、楽しいという気持ちが深く根付いてほしい時期です。その気持ちがないと、上手くなっていかないからです。ただ、この年代は、サッカーだけに固執しなくてもいいと思うのです。私自身、小学生の頃は、サッカーの練習は月に2 回のみで、バレーボールもやっていましたし、日々、公園でいろいろな遊びもしていました。その経験がジュニアユース、ユースへと進む中で、活かされていると感じたことが多々あったのです。ですので、少年団や街クラブに入っていても、サッカー以外の競技に興味を持ったら、それもチャレンジすればいいですし、その中で、やっぱりサッカーが楽しい、おもしろいと思えば、サッカーをどんどん追求してもらえればと思います。
すぐに正解を与えるのではなく子どもの発想を大切に
ジュニア年代を指導する上で大事なのは、すぐに正解を与えないことです。指導者は選手経験があると、どうしても何かプレーで問題が起きた時に、すぐに正解の動きをみせてしまいがちです。けれど、そうしてしまうと、子どもならではの突拍子もない発想を奪ってしまうことになるのです。答えを与えるのではなく、ヒントをできる限り散りばめて待つ。そのヒントは子どもたちの楽しさを引き出す要素になり、それが指導者としてのやりがいにもつながっていくと思います。
子どもたちの中には、無理して練習に行っている子もいるのではないでしょうか。でも、練習に行けば新しい発見があると感じれば楽しみになり、自然と前向きな気持ちになるはずです。ですので、指導者は同じことを繰り返すのではなく、どうすれば子どもたちの探求心をくすぐることができるのかも考えてほしいのです。ただし、それが“楽しいこと”だけになるのではなく、その中には緊張感も必要です。そうすると、子どもたちは試合をしてもチャレンジする気持ちがのってきたり、よりプレーに集中できるものです。また、その時に指導者が、どういった言葉をかけるのか、何をみせるのかも重要になってきます。
親御さんは、結果の良し悪しだけを子どもに言ってしまいがちではないでしょうか。良かった時は、褒めてあげればいいのですが、問題は失敗した時。悪かった結果について言うのではなく、「よくあそこでチャレンジできたね」など、少し視点を変えて言葉をかけてあげてほしいと思います。
また、最近は子どもの試合をビデオに撮っている方をよく見かけます。でも、子どもにとっては、録画した自分のプレーを観るよりも、J リーグや海外の選手の試合を観たり、また、違うチームの選手の上手いプレーを見ることのほう重要なのです。そして、その時に、親御さんが「あのプレーいいね」「これを真似してみたら」など、声をかけてあげると、前向きな気持ちになり、練習にも落とし込みやすくなると思います。
(2018年3月発行の25号掲載)