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楽しみたいのに楽しめない…感情の整え方を紐解く

楽しみたいのに楽しめない…感情の整え方を紐解く

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第34回目。楽しむことが結果につながると分かっていても、どうしても楽しめないときというものがあります。楽しめる自分を取り戻したいときは、実は行動を先に見直すことが重要です。

楽しみたいのに楽しめない

小学6年生のA君からこんなご相談がありました。

A君:「最近プレーがうまくいかなくて悩んでいます。楽しんでやろうと考えながらやっているけど、楽しくならないです。どうしたら以前のように楽しくサッカーができるようになりますか?」

楽しみたいのに楽しめない、みなさんもそんな経験があるのではないでしょうか?

私も現役時代は、楽しめているときのほうがいいプレーをできている感覚があったのですが、そうしたくてもできないという経験もたくさんありました。そんなとき、どのように楽しめる自分を取り戻していくのかお伝えしていきます。

まずはA君にこんな質問をしてみました。
どんなときにサッカーが楽しめていますか?

A君:「僕はポジションがミッドフィルダーなので、ボールをたくさん触れているときは楽しいです。あとは、前を向いてプレーできているときはいろいろなところにパスが出せて楽しいです!」

楽しめているときはこのような状況でした。
それでは、最近楽しめていないのはなぜなのか聞いてみました。

A君:「ボールをあまり触れないからですね。触れないのでイライラしてきて、そのまま終わってしまいます」

楽しめない原因=ボールを触れていないことだと分かりました。そこで、A君にこんなことを聞いてみました。
ボールに触れているときは、どんなことができているときですか?

A君:「周りが見えているときと、間にポジションを取れているときはボールを受けることができていると思います。あとは、ヘイ! と声を出せているときは味方が気づいてくれるので、よくパスが来るように思います」

感情の仕掛けづくりは行動を整理することから

ここで考えていきたいのは、楽しいという感情は“楽しもう”と思考を回せば出てくるのか? ということです。感情は、出来事に対して心が反応している状態です。つまり自分が感じていることなので、人は感情を考えて出しているわけではなく、無意識に出てきているということです。

大事な試合で、緊張しようと考えているから緊張しているわけではないですし、好きな食べ物を食べるとき、おいしく感じようと考えているからおいしいという感情が出てきているわけでもないのです。こんなとき、思考で感情を作り出そうとするのではなく、行動を先行して感情を出していく仕掛けづくりが大切になってきます。

最後にこんなことを聞いてみました。
過去にサッカーが楽しめているときは、サッカーを楽しもうと考えていましたか?

A君:「とくに考えていなかったです。とにかく集中してプレーしていたら楽しいなと思えた感じです」

それでは、まずは楽しもうと考えることをやめましょう!
パスをたくさん受けられるように、周りを見ることや間にポジションを取ること、もらうときにヘイ! と声を出すことだけに意識を向けてやってみましょう。
とアドバイスをしてメンタルトレーニングを終えました。

数日後、A君からこんなご報告がありました。

A君:「言われたことを意識してプレーしたら、ボールを受けられる回数が増えてきました! ミスもあるけど、今はすごく楽しくサッカーができています!」

行動を先行して考えることで、感情の仕掛けづくりをすることができます。
“楽しまないといけない”と考えながらプレーをすると、集中力も落ちパフォーマンスも低下します。感情ではなく行動を意識することで、集中力も高まりパフォーマンスの向上にもつながります。

パフォーマンスの先に楽しいという感情があるというふうに考え、まずは行動を整理していくと、楽しんでできるサッカーをより体現しやすくなると思います。

お子さんをサポートする際は、楽しいがどのように出来上がっているのか、行動をまとめてみることがおすすめです。ぜひ一緒に頭の整理をする際に質問をしてあげてみてください。

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

★株式会社43Lab HPInstagramFacebookTwitter

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