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必要以上に相手を大きくしていない?「カラーバス効果」に要注意!

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第9回目。
今回のテーマは「カラーバス効果」。相手のレベルによってパフォーマンスに差が出てしまうこと、ありますよね。いつでも安定して自分の力を発揮するためには、どんな考え方が必要なのでしょうか?

相手のレベルにパフォーマンスが左右される、その原因は?

相手のレベルにパフォーマンスが左右されてしまい、いつも一定の力を発揮できない、そんなことはありませんか? 例えば、格上が相手だと萎縮してしまったり……。逆に格下と見なされる相手なのに、いつも通りのプレーができないということもあるかもしれません。実はこれ、「カラーバス効果」が働いているのかもしれません。

カラーバス効果とは、特定のことを意識し始めると、日常の中でそのことに関する情報が自然と目に留まるようになる現象のことを言います。
例えば、「赤い靴が欲しい」と考えていたとしましょう。そうすると、街中で赤い靴を履いている人に自然と目が行ってしまったりしませんか? 他にも、テレビや雑誌で赤い靴が出てくると、無意識にそちらに意識がいってしまったり……。これは、実際に赤い靴を履いている人が増えたとか、テレビや雑誌でよく赤い靴が取り上げあれるようになったからという訳ではなく、赤い靴という情報を脳が優先的に認識するようになったから起きる現象です。

今度はサッカーの場面に置き換えて、カラーバス効果がプレーにどんな影響を与えるか考えてみましょう。
例えば、相手チームにすごく上手いと言われている選手がいるとします。そうすると、その選手が履いているスパイクもすごく良い性能のものに見えたり、ウォーミングアップを脱力してやっていたら、「ウォーミングアップは脱力してやるのがいいんだ」と感じるかもしれません。こんな風に、その選手の使っている道具や一挙一動が全て良いものという風に色眼鏡をかけて評価してしまうのです。もちろん、実際にその選手がすごく良いスパイクを履いているとも、良いウォーミングアップをしているとも限りません。ここで重要なのは、色眼鏡を外して、その選手の正確な情報を得ることです。

必要以上に相手を過大・過少評価しないことが重要

 

正確な情報を得るためには、現実離れしたものの見方をしないことが重要になります。すごく上手い選手だからといって、使っている道具も含めて何から何までパーフェクト、何てことは滅多にないですよね。その選手が特にドリブルが上手くてスピードがある選手だったとしたら、その部分では勝てなくても、もしかしたらボールコントロールやパス、トラップなどでは上回っているかもしれません。相手の良いところは認めつつ、必要以上に相手を大きくしてしまわないようにしましょう

私もプロになったばかりの頃は、カラーバス効果の影響を受けていたように感じます。入団した際には、小さい頃から知っているJリーグの選手達がチームメイトにもたくさん居ました。その選手達の振る舞い、所作、プレー全てがすごいと感じて、ピッチ内でも遠慮してしまい、思ったようなプレーが出来なかったり、自分の意見を発言することが出来ずにいました。確かにみんなすごい選手ではあるのですが、今になりよく考えてみると、自分が上回っていた部分もあったし、もっとお互いがプレーしやすいように自分の意見は伝えなければいけなかったなと感じています。

さて、ここまでの例では全て相手を必要以上に過大評価してしまっていましたが、逆に相手が格下と見なされる時でもカラーバス効果の影響を受けることはあります。「格下相手」という色眼鏡をかけたまま相手を見てしまい、相手の良いところや自分より上回っている部分を見落としてしまうのです。そうすると、実際にプレーした時にギャップを感じて、いつものパフォーマンスが発揮できないこともあります。この時も大切なのは、色眼鏡を外して相手を分析することです。必要以上に相手を大きくすることも、小さくすることもしないことです

いつでも自分のパフォーマンスを発揮するために……

お子さんが相手によってパフォーマンスが落ちてしまうようなら、保護者の方はお子さんが相手をどのように見ているのかを一緒に考えてみてあげてください。もしかすると、カラーバス効果で必要以上に相手を大きくしてしまったり、小さくしてしまっているかもしれません。そんな時は、「ここなら負けてないんじゃない?」といった具合に、上手く認識を正す方に持っていけるといいですね。この部分を理解できれば、どんな時でも自分の実力を安定して発揮できるようになるはずです。

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

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