メインコンテンツに移動
「サッカーを仕事にする」ということ2023 #01 アパグループ株式会社 元谷一志さん

「サッカーを仕事にする」ということ #01 アパグループ株式会社 元谷一志さん

サッカービジネスの最前線で働く人々を特集する恒例企画。今年はサッカー日本代表を支援する企業の方々を中心にお話を伺った。ユニフォームや会場のバナー、中継映像で流れるCMなどで露出するブランドロゴ。その背景には関わる人々の想いや目的、そして夢が込められている。“選手”ではない各々のサッカーとの人生の関わり方を紹介する。

今回はアパグループ株式会社 社長兼最高経営責任者(CEO) 元谷一志さんに「サッカー関連の事業」「日本代表支援」「ホテル業界との共通点」などサッカーとホテル業界の関わりについてなどお話を伺った。

 

元谷一志さん(MOTOYA ISSHI)

アパグループ株式会社 社長兼最高経営責任者(CEO)

1971年4月20日、石川県出身。学習院大学を卒業し、住友銀行にて5年間勤務した後、1999年にアパホテル株式会社に入社。2022年にアパグループ社長兼最高経営責任者(CEO)に就任。2009年から子ども向けのクリニックなどサッカーに関連した事業の展開に従事し、今年からJFA ナショナルチームパートナー契約を締結。

Q1学生時代に熱中したことは?

将来を見据え見識を広める

幅広い知識を追求し、洞察を深めることを意識していました。家業を継ぐにあたって、『事業』というものは正解がないと考え、さまざまな課題に対処するために広範な見識を養うことが重要だと思いました。そのため、私は何にでも興味を持ち、行動を起こすことを大切にしました」

Q2普段意識していることは?

広い視野を持って行動に移す

「“Think Globally , ActLocally”という視点を大事にしています。“世界規模の視点で考えて、真っ先にすべきことから着実に行動する”ということです。これはサッカーにも共通すると思っていて、例えばサッカーをやっているお子さんは、“Think Globally”の観点から世界基準のサッカーを見て、できれば体験する。そこから“Act Locally”で今できることから着実に歩んでいくのです。

この視点を幼い頃から持つほど意識が高く、自信を持つことにも繋がります。日本代表の久保建英選手(レアル・ソシエダ)がこの例に当てはまりますが、彼も幼少期に世界トップレベルの育成機関を持つFCバルセロナの下部組織に入団して素晴らしい成長を遂げました。現地で生活して世界を体感したことで、技術だけでなく言語やメンタリティの面でも成長を遂げることができたのだと思います」

Q3サッカー関連の事業について

子ども向けのイベントから日本代表のサポートまで

「金田喜稔氏(元日本代表・名蹴会会長)と対談をした際に、新潟県の上越妙高の広大な土地を使って将来的にメセナ(文化振興)をやりたいというお話をしたところご賛同をいただきました。それからアパリゾート上越妙高のグラウンドを使って2009年から10年間サッカークリニックを行ってきました。

11年目からはこれまで行ってきた個人を対象としたクリニックと、クラブを対象としたU-11の大会を併せた『アパ名蹴会レジェンドカップ』としてイベントに昇華させ、今年で15回目を迎えています。

宮本恒靖氏(元日本代表・JFA 専務理事)や播戸竜二氏(元日本代表)といったゲストをお呼びし、日本代表レベルの技術を子どもたちに体感してもらい、トップレベルで活躍してきた方たちの言葉を伝えて欲しいという想いで続けて来たイベントでもあります。こういった形で15年間草の根で行ってきた活動が、JFA ナショナルチームパートナーとして日本代表を直接サポートできることに繋がったので、とても嬉しく思っています」

Q4日本代表支援について

世界を相手に誇れる文化をお互いにサポート

「サッカーはファン人口が35億人、競技人口は8億人と言われています。ファンの数だけでなく熱量も凄まじく、2022 年のカタールワールドカップで優勝したアルゼンチンでは、現地で大会を見るために家を売って資金を工面した人がいたそうです。ここまで人を熱くさせる競技は他にあるでしょうか(笑)。

サッカーは、世界規模で大きな影響力を持つスポーツとして、その存在感を強く感じます。我々はホテル業界として、世界を相手にビジネス展開しています。今年の4月にアパホテル〈新宿 歌舞伎町タワー〉が営業を再開(行政からの一棟借り上げ要請を受け、休館していた)した当初、訪日外国人旅行者が宿泊客の92%を占めていたそうです。

世界中から多くの宿泊客が訪れ、そのため「日本のホテル」と同時に「ワールドワイドなホテル」とも言えるでしょう。サッカーとホテル業界は、国際市場に向けて訴求力を持つ分野として、相性が良いと感じています。サッカーのスポンサーシップは、アイデンティティとしての価値があると信じています。ヨーロッパや南米では、サッカーが宗教と結びつくほどの熱狂的な信仰を持ち、それがアイデンティティの一部となっています。

日本では宗教の影響力は相対的に弱いかもしれませんが、サッカーそのものが、日本人らしさを強調し、誇りを持つ要素となっていると考えています。同様に、日本のホテルは世界中で高いサービス品質や機能性を提供しており、その環境は他国には見られない素晴らしいものです。この素晴らしいサッカーとホテルを、相互に支え合い、世界中に広め、国際的な成功に向けて歩みを進めることは、大いなる意味があると信じています」

社長室に大切に保管されている代表ユニフォームにはドイツ遠征の際に書いてもらったという久保建英選手のサインが入っている。

Q5ホテル業界との共通点は?

環境の変化に順応し自らも進化していく

「我々が掲げるビジョンとして、『1ホテル1イノベーション』というものがあります。新しいホテルを一つ作る毎に一つ新しい設備や機能を作るということです。同じサービスを続けていると満足度が下がってリピーターが減ってしまうため、常に新しいものを導入していくことが重要です。

生活に関わるものでも、スマートフォンであったり、Wi-Fiであったり。30年前にはなかったものが今はあって当たり前のものになっていますよね。それはホテルでも同じで、30年前に我々が起業した時に、当時は必要なものが全て揃っている究極の客室だと思っていたものが今、究極ではなくなっているのです。Wi-Fiがないホテルは選ばれませんよね。

当時は素晴らしかったものが、時代が進むとともに耐えられなくなっているのです。お客様の期待とブランドへの要求は高まる一方ですから、私たち自身も変化しなければならないのです。サッカーも同様に常に変化し続けますよね。

2010年の南アフリカワールドカップで優勝したスペインが、当時強かったポゼッションサッカーに囚われてカタールでは上手くいかなかったように、“その時はその時の常識、今は今の常識”があるわけです。それに対して『恐れず柔軟に変化できるか』ということが、サッカーも企業も問われているのです。新しいものを受け入れ、適応できるものが生き残り、乗り遅れるとレギュラーから外れていくのです」

Q6日本代表支援の影響は?

クラブ単位でのサポートも増加

「アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉では、部屋の壁面やベッド、テーブルなどがサムライブルーのカラーや肖像でデザインされた『サムライブルールーム』という客室があります。JFA夢フィールドが目の前にあることも含めて、聖地として根付いていければいいですね。さらに今回日本代表をスポンサードさせていただくことによって、これまで関わりがなかったJリーグクラブや下部組織のチームから遠征での宿泊の指名をいただくことが増えてきました。快適で過ごしやすいホテルだという評価をいただけているのはすごく嬉しいですね」

Q7印象深いエピソードは?

現地観戦でより大きな目標への課題を実感

「9月に行われたドイツ代表戦を現地で観戦して来て、カタールワールドカップからさらに進化した日本代表を見ることができました。海外でプレーする選手が増え、選手層が厚くなっていると思いましたし、流れを途切れさせないためにも、Jリーグでプレーする選手がより移籍しやすくなるシステムや、海外移籍する際の移籍金を高騰させる仕組みをJFAが作っていかないといけないと感じました。ワールドカップ優勝を目指すにあたって、そういった面をもっと論じていくタイミングなのではないかと現地で感じましたね」

Q8高校生に伝えたいことは?

可能性を広げる行動を

「まさしく“Think Globally , Act Locally”ですね。視野を広く世界基準で見て、できれば肌で感じて体験してください。そのためにまずは、見識を広げるということがすごく大切です。好奇心を持ち続けることで、幅広い知識を獲得し、新たな機会に迅速に対応できる行動力を身につけることができます。この姿勢を持つことで、さまざまな可能性が広がり、新たなチャンスに向けて準備が整います。ぜひ、これを意識して日々の生活に取り入れてみてください」

今年3月にはサッカー日本代表パートナシップ契約の記者会見が開かれ、元谷CEOが今後のビジョンを語った。

思い出の1ページ

日本代表のさらなる進化を実感
「9月に行われたドイツ代表との試合を現地観戦しました。ワールドカップからの成長だけでなく、より上位を目指す上での課題を実感する機会にもなりました」

ある1週間のスケジュール

8:00 役員ミーティング
9:00 朝礼&社内連絡
10:00 広告代理店打ち合わせ(サッカーイベント)
11:30 新規ホテル開業地視察
13:00 昼食
14:00 経営企画会議
16:00 チームミーティング
17:00 デスクワーク
19:00 会食(金融機関)
21:30 退社

女子ワールドカップで躍動したなでしこジャパンメンバー全員のサイン入りユニフォーム。「このエンブレムの上に輝く星が男子サッカーにも付く日が来るといいですね」(元谷CEO)

Pick Up

ニチバン presents ママが知っておくべきケガの知識について(全3回)

サカママの皆さま、ケガには種類があることをご存知ですか?
現在もケガに多くの子どもたちが悩んでいます。ケガが悪化してしまうと、今後のプレーに大きな影響が出てしまうことも…
サカママに大好評のオンラインイベント『ケガ予防講座』の内容を更にアップデートしたイベントを開催します。この機会にぜひご参加ください!

2025年度サカママライター募集【一緒にサカママWEBを盛り上げませんか?】

2025年度から新たにサカママライターとしてご活動いただける方を募集します。サッカーキッズをサポートするママたちに役立つ情報を発信して、一緒にサカママWEBを盛り上げてみませんか?
読者にとって身近な存在として、自分が持っている情報を発信してみたい!という方はぜひこの機会にご応募ください。

実録!ジュニアユースセレクション~合格から入団以降の流れと注意点

小学6年生世代にとってはジュニアユースのセレクションもいよいよ佳境に入っていると思います。そこで今回はセレクションに受かった後のスケジュールや注意点、クラブチームから合格いただいた後の動きなどを経験を踏まえてお伝えしていきます。

卒団式、何やってる?気になるあれこれをサカママに聞いてみた!

サカママ&サッカージュニアにとって3月は「卒団」のシーズン。そこで卒団式特集を全2回でお届けします。第1回は、卒団式はどんなことをしているか、記念品は何を贈るかなど、気になるあれこれを調査しました。