スポーツ現場でも行われる熱中症対策「クーリング」とは?
みなさん、こんにちは。スポーツナースの山村です。
熱中症シリーズ3回目は、暑さ対策の1つ「クーリング」についてです。今回ご紹介するクーリングは、夏以外の季節に発生する真夏日でも行える対策です。看護師として働く私もスポーツの現場などで行っていて、急な暑さにも対応できるようぜひ参考にしてください。
クーリングとは?
まずは、対策をご紹介する前にクーリングについて知っておきましょう。クーリングとは、ケガをした際に患部を冷やすことを想像される方もいるかと思います。
捻挫や打撲の際に行う応急処置は「アイシング」と言います。このアイシングの目的は、腫れや内出血を最小限に抑えることや、痛みを軽減させる事になります。 それに対し、クーリングとは上がりすぎた温度を適正な温度まで下げることを目的になります。
プレクーリングとパークーリング
ケガをした際の、アイシングについてはまたの機会にお話しさせていただきますね。 クーリングの中でも、実施するタイミングで呼び方が違います。「プレクーリング」とは、運動前に行うクーリングであり、「パークーリング」は運動中に行うものを指します。(詳細は過去記事も参照してみてください)
ここで注意していただきたいのは、熱中症とは身体の深部体温が上昇し引き起こされます。少し木陰で休んでマシになる初期とは違い、重症になれば身体を冷やすくらいでは深部体温は下がりません。病院では重度の熱中症患者に血管内冷却用チューブを足の付け根の太い血管から挿入し、体の中から冷やして救命を行います。
出典元:旭化成ゾールメディカル
それくらい、熱中症は起こると怖いものになります。そのため、そうなるまでにできる予防がとても重要になります。その予防策の1つがクーリングになります。
クーリングの実用例とは?
ここからはクーリングの実用例をご紹介していきます。プレクーリングで紹介されることの多いアイスベストですが、なかなかチームで人数分を確保することは難しい現状があります。そんなアイスベストの代わりになる対策をご紹介します。
出典元:C Lab 松本康佑(@C_Lab_football)
クーラーボックスに氷水を入れ、ビブスを冷やしておく。それをハーフタイムに着用することでアイスベスト代わりになります。ビブスは普段より使用するため、どのチームも持っている事が多く、それを代用してできるのはとてもいいですよね。またビブスは絞りやすく、ベンチサイドなどを水浸しにしなくても済みますね。試合だけでなく、普段の練習にも取り入れやすいと思います。
出典元:C Lab 松本康佑(@C_Lab_football)
さらに、このアイスビブスを着用するために、それまで着ていたユニフォームを脱ぎます。その際にわずかな時間でも干しておく事で、ユニフォームがついた汗の水分を蒸発させる事ができます。衣類が汗を吸収しやすくなることは、熱中症対策に有効に働き、まさに一石二鳥ですので、ぜひお試しください。
保冷剤で対策ができる手掌冷却とは?
次に紹介するのが手掌冷却です。手の平には、体温調節の役割をになう血管が多くあります。その血管を冷やすことで、全身の温度を下げる事ができます。(昨年のコラムも参照してください)。
代表的なものが、冷水の入ったバケツに手をつける方法ですが、これは1度にたくさんの人数ができず、ハーフタイムなどではバケツの数を増やす必要があります。また、順番に冷水を使用すると、後の人が使う際には冷水で無くなっていたり、汚れも出てきたりしてきます。そこでお勧めなのが、この保冷剤です。
普通の保冷剤を凍らせて使用するのもいいのですが、朝から試合会場に居ると、溶けてしまっていることもあるかと思います。この保冷剤は、使用したい時に衝撃を加えると瞬時に冷たくなります。保冷効果は15分程度であり、普通の保冷剤よりかなり短くはなりますが、手掌冷却するには十分です。
これなら、メンバー全員が一度に実施できるかと思います。この保冷剤は単回使用のため使いすてにはなりますが、100均にも売っていますよ。また手掌冷却は、パークーリングだけでなく、プレクーリングにも有効とされています。注意点としては、冷やしすぎると血管が収縮してしまい熱の発散がしにくくなります。また保冷剤は、直接握らずタオルなどを巻いてくださいね。
これから夏本番を迎えて猛暑日が続いてきますので、お子さんや保護者の方も上手に熱中症対策を行ってスポーツを楽しんで下さいね。
※本記事は、看護師としての経験や知識をもとに書かれているものです。
熱中症が疑われた場合は、必ず専門の医療機関をご受診ください。