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スポーツシーンでも大切!AEDのこと、どれくらい把握してますか?

みなさん、こんにちは。スポーツナースの山村です。
来月11月の9日は「119」で消防の日です。今回はそんな日にちなんで、AED(自動体外式除細動器)についてを取り上げたいと思います。

日本は世界有数のAED大国!でも、使ったことありますか?

だいぶ耳にする機会も増えたAED。最近はスーパーや薬局など、身近な場所でも見かけるようになりましたよね。AEDが日本に導入されたのは1998年頃で、当初は救急隊員などが使用するものでした。一般市民でも使用が許可されるようになったのは2004年からで、現在では日本全体で約62万台が設置されています。これは世界的に見てもかなり多い方で、日本は世界有数のAED保有国とも言われているんです。とはいえ、AEDを目にしたことがあっても、実際に触ってみたり使用した経験がある方はほとんどいらっしゃらないのが現状だと思います。

さて、身近になってきたAEDですが、どんな役割があるかはご存じですか? 多くの方は、AEDは止まっている心臓を動かす機械だと思っているかもしれません。でも、実はAEDに止まっている心臓を動かす力はありません。AEDは、痙攣し正常な動きができていない心臓に電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための機械なのです。

 

誰にでも起きる可能性がある「心臓震盪」

心臓が痙攣した状態になるものの一つに「心臓震盪」というものがあります。以前に脳振盪の記事で、脳がゆさぶられるため[振]という漢字を使うことをお話ししましたが、心臓震盪は心臓が細かく震える状態になるため[震]という漢字を使います。心臓の疾患は高齢の人に起こるイメージがあるかもしれませんが、心臓震盪は既往歴などに関係なく誰にでも起こる可能性があります。というのも、心臓震盪は心臓の真上に何らかの外力が加わったことにより起きるためです。

もちろん当たれば何でも起きるというわけではなく、[衝撃が当たる場所] [強さ][タイミング]の要素が重なり合った時に心臓震盪は起きるとされています。[衝撃が当たる場所]は心臓の真上に当たる場合で、遠く離れた場所では起こりません。[強さ] は、強ければ起こるものでもなく、弱くても起きる場合があります。そして、衝撃を受ければいつでも起きるのではなく、心臓が1回拍動する際の一瞬の[タイミング]に当たることで起きるとされ、このタイミングの瞬間は0.02秒と言われています。

また、心臓震盪は子どもでも起きやすいとも言われています。その理由としては、子どもの骨は柔らかく心臓への衝撃が伝わりやすいことがあげられます。また、スポーツシーンに限ってみると、野球などでは投球や打球の速度が[強さ]の条件に当てはまる部分が多いです。サッカーでいうと、胸トラップや接触プレーの際に起きる可能性がありそうですね。もちろん、普段の生活や遊びの場面でも3つの要素が重なれば心臓震盪が引き起こされる可能性があります。

心臓震盪を経験した田中奨選手のお話

今回、実際にフットサルの試合中にボールが胸に当たり心臓震盪になった経験がある田中奨選手にお話を聞くことができました。その際の様子などを詳しく教えてくれたので、ご紹介させていただきます。

その日の田中選手は体調など普段と変わりなく、いつものようにプレーされていたそうです。しかし、試合中にゴール前でシュートをブロックしようとしたところ、胸にボールが当たってしまいます。当たった際は意識があったものの、そのあと1、2歩いてから意識を失い倒れたそうです。倒れた田中選手の異変に気づいたトレーナーが即座に救命処置を行いAEDを実施したことで、田中選手はコート上で意識を取り戻しました。ボールが胸に当たること自体は今までにもあり、シュートの強さも今までに経験していたものと特別変わらないものだったそうです。

この救命が成功したのには、試合会場にAEDがあったことと、即座に救命処置(胸骨圧迫・AED)が実施されたことの2つの要因があり、そのどちらか1つでも欠けていたら今生きていることはなかったと搬送先の病院の先生から言われたそうです。田中選手はこの体験を通し、AED普及などの活動をされながら、現在もフットサル選手として活躍されています。

いざという時のために、AEDの設置場所を把握しよう!

田中選手の事例にもあったように、AEDを即座に実施できると救命率が高くなります。現在、救急車が到着するまでには平均8.7分かかると言われており、それまでの間に何もせずにいれば助かる命も危機に晒されることになります。

皆さんは普段の練習場所から一番近くのAEDがどこに設置されているかを把握していますか? 学校のグラウンドで練習しているから学校にあるものを使えば大丈夫……と思っていても、土日は校舎が施錠されていて取りに行けないなんてこともありえます。そんな時に便利なのが、AEDマップです。「AED マップ」で検索していただくと、アプリやWEBサイトが出てくると思います。実際にAEDがどこに設置してあるかを地図上で把握することができるので、使いやすいものをスマホに登録しておくと、いざという時に役立つはずですよ。

AEDを使えるか不安…という人に知ってほしいこと

AEDマップで近くの設置場所を確認できた!……となっても、実際に使う場面になったらどうでしょう? やはり戸惑ってしまいそうなもの。救命講習などに参加すればAEDを触ることができますが、なかなかそういった機会も少ないですよね。それに、AEDは心臓が痙攣している時に使えると言っても、身体の外からでは心臓がどうなっているかなんて判断できないし……と思うのではないでしょうか。

ここで一つ知っておいてほしいのは、AEDは医療従事者でなくとも使えるようにできているということ。電源を入れれば使い方を順に説明してくれますし、ショックが必要かどうかも判断してくれます。ですので、まず倒れた人がいた場合は、AEDを準備して指示に従いながら使ってみることが重要です。

そうは言ってもやっぱり不安だ……という方には、ペーパークラフトAEDをオススメします。

 
ペーパークラフトAEDの詳細はこちら

このペーパークラフトAEDは、実物ではないにせよAEDがかなり忠実に再現されています。もちろん自分で組み立てることができますので、AEDの中身がどうなっているかを知ることができるんです。私も実際に作ってみましたが、子どもの自由研究などにもピッタリだと思いました。

 
ペーパークラフトAEDの中身はこんな感じ。​​​​
 
私は小さいサイズで作成したかったので、1/4サイズのものにチャレンジしました。

ジュニア年代でも安全へのサポートを広げよう

サッカー界では、2011年に横浜F・マリノスの松田直樹選手が練習中に心筋梗塞で倒れ、そのまま亡くなるということがありました。そこから現在に至るまで、様々な形でAEDの普及活動がされており、現在もその活動は継続されています。ですが、まだまだジュニア世代へのサポートは十分ではありません。どの世代にも、安全へのサポートは必要であり、みんなでそのサポートの輪を広げていければと思っています。

WRITER PROFILE

山村麻衣子
山村麻衣子

シングルマザーとして3人の子育てをしながら、救命センターで看護師として働き、スポーツナースとしても活動しています。末っ子は高校サッカーで全国を目指し奮闘中です。万が一が起きている現場にいるからこそ、スポーツの現場でも安全や予防の必要性を感じているので、コラムではメディカル目線のサポート情報などを中心にお届けしていきます。