「どのくらい練習すると上手になれますか?」アメリカ少年サッカー記23 | サカママ メインコンテンツに移動

「どのくらい練習すると上手になれますか?」アメリカ少年サッカー記23

同年代の上手な選手のプレーや、強豪チームの試合の様子は、今やYouTubeでも閲覧できます。試合で気になるのは、的確なパス、勝負強いドリブル、難しいコースへのシュート、そして組織的な守備など。どうしたらこうしたプレーが出来る様になるのでしょうか。そして、一体どのくらい練習すれば、サッカーは上達するのでしょうか?

こんな疑問を、息子が小学校4年生の頃に抱きました。そんな時に見つけたのが、習得に必要な時間についての議論でした。それが、一万時間、という途方もない時間だったのです。

一万時間の法則

 

誰でも一万時間の鍛錬をすると、プロフェッショナルのレベルに到達できる、と説く一万時間の法則は、マルコム・グラッドウェルの「天才!成功する人々の法則」という書籍で紹介されています。この法則は、スポーツに限らず、ビルゲイツが高校時代にコンピューターに打ち込んだ時間や、もともと演奏が下手だったビートルズが下積み時代にパブで演奏した時間にも当てはまるそうです。この気が遠くなる長時間の鍛錬こそが、成功やイノベーションにつながると言われています。

そこで、この法則を、子供のサッカーに当てはめ、一万時間が毎日どのくらいの練習時間に相当するのか、を見積もってみました。18歳でプロフェッショナルのレベルまでにサッカーが上達するのを目標とする場合、7歳から18歳の12年間で毎日2時間半の練習をすると、一万時間に達します。確かに、1日2時間半も練習を積めば、サッカーの上達はかなり期待できそうです。

ところが、鉄壁にみえるこの法則には、弱点もあります。踵の成長痛がなりやすい時期にチーム練習が連日続くと、多くの子供が踵を痛めていました。こうした状況を考えると、怪我をせずに、毎日2時間半も練習を続けるのは、かなり難しいかもしれません

一万時間の代替案、一万回タッチ

 

さらに、一万時間の法則は、個人スポーツや音楽演奏に効果がある一方で、サッカーのように、人数の多い複雑なチーム競技には適さない、という意見もあります。そして、上達において重要なのは、時間よりも、どういう練習をするか、練習の質が影響するとも議論されています。

こうした議論の中で、新たに提案されたのが、一万回タッチというトレーニングです。このトレーニングは、毎日1万回ボールに触ることで、自然とボールタッチを向上させる方法で、ゴルフやテニスの育成でも導入されているそうです。そして、一万時間の法則が、10年や20年の長い期間を対象にして、成果が見えにくいのに対し、一万回タッチは日々の達成で分りやすい利点もあります。

そこで、息子には一万回タッチのトレーニングを試してみました。1万回なんて大袈裟な名前ですが、私がやったことは、家の中にたくさんのボールを置いただけ。子供の目につく所にいつもボールがあると、自然とボールに触る習慣がつくようで、タッチ数は1万回も達していないでしょうが、ボールタッチを鍛えるフットワークの練習も増えていきました。

一万回タッチ実践から4年後、どうなったか?

 

そこから4年。今や息子は8年生です。チームの中では、息子のボールタッチは柔らかい方で、プレスがきつい試合で浮いたボールも上手くトラップしています。こうした上達は見えてきたものの、同時に、サッカーの難しい側面も分かってきました。拮抗した試合で、トラップがしっかり出来るのは優位に働きますが、長い試合時間の中での一つの要素に過ぎません。これだけでは試合には勝てず、突破力や決定力、チームワーク、個々の戦略的理解力など、勝つために求められる要素は次々と出てきます

結局、「サッカーが上手になる」というのはどういうことか? そこを明確に定義することが、サッカーの上達への第一歩なのかもしれません。もしタッチを良くするという目標なら、一万回タッチは確かに有効でお薦めのトレーニングです。一方で、他の要素を伸ばしたいなら、新たなトレーニングを考える必要があり、サッカーの上達への道は多岐に渡る、ということを今は実感しています。

WRITER PROFILE

近本 めぐみ
近本めぐみ

日米で色々な大学、研究所を渡り歩く理系研究者。現在はアメリカ在住、在米歴と息子のサッカー歴が8年のサカママ。サカママWEBでのコラムを通して、アメリカならではのサッカー育成の面白いところ、興味深いところを発信していきます。

★外部ブログ「アメリカ発少年サッカーの育成事情」でも執筆中