女子サッカー選手が陥りやすい不調を予防するための食事ポイントとは?
「女子サッカー選手の身体の悩み」をテーマにした、順天堂大学医学部附属順天堂医院・浦安病院の女性アスリート外来所属の上木先生によるコラム。第4回は「女子サッカー選手が陥りやすい不調を予防するための食事のポイント」についてご紹介します。
まず最優先すべきはエネルギー不足を起こさないこと
第2回でお話した「FAT」。エネルギー不足はFATに陥りやすく、健康を害することにもつながります。食事量の目安は計算式で算出できますが、これはあくまでも目安です。この量をとって実際に身体の動きがいいか、体調の変化や体重などを見ながら総合的に把握することが大事です。
しかしながら、女子サッカー選手のみならず、全体的にアスリートは食事量が足りていない傾向が多いように思います。選手本人にとってみれば相当努力して食べているように思うようですが、残念ながら実際はエネルギーが足りていないということは多々あるのです。
エネルギー補給の肝となるのは、炭水化物をしっかりとることです。いわゆる主食をしっかりとることが基本です。おかずが多すぎて主食が少なくなっていたり、甘いものを食べたいから意図的に減らしていたりしませんか?ご飯を少なくすることで、間食が増えたり、ドカ食につながることもあります。これではコンディションを落とすばかりか、甘いものを食べた罪悪感を感じたり、いらいらしたりなど、メンタルの不調にもつながることがあります。
まずは3食しっかりと運動量に合わせた主食(ごはん、麺、パン)をとること。量が十分にとれているかわからない場合は、試しにひとまずごはんを増やしてみてください。自然と間食がなくなったり、練習の疲れが少なくなったなど、体調によい変化があったら、その量が合っている量かもしれません。その時、主食量を増やしても不思議と体重は心配するほど増えません。その理由としては、足りなかったエネルギーを補給しただけだからです。増えたとしても、そのほとんどが除脂肪体重(いわゆる筋肉量)の増加による体重増で、以前よりも身体が動きやすくなったという選手がいるほどです。
また、月経前の不調や月経痛がつらいなど、月経に関する不調がある選手も多く見受けられ、そのような選手の食事をみてみると、主食のごはんを抜いていたり、量が少なかったりする選手が多いように感じます。加えて間食の量や頻度が多いのが特徴です。この場合、主食を適量に増量しただけで、間食が減るばかりか、パフォーマンスが向上したり、月経痛が軽くなるケースもあります。試してみる価値はありそうです。
低エネルギー状態が長く続き、体調もメンタルも不調ですぐに涙ぐむ様子を見せた選手が、栄養改善に取り組んだ結果、たった1ヶ月後には笑顔に変わり体調不良も改善されたケースもあります。
ですので、まずはじめに、エネルギー補給が適切であるか、具体的には主食量が十分にとれているかを確認しましょう。練習量が増えればエネルギーを増やすなどその時々で調整することが大切です。
たんぱく質は適量摂取で
たんぱく質は体内でとり溜めができないため、3食に分けてとる必要があります。具体的には、肉・魚・卵・大豆製品のおかずを毎食1皿は食べるということです。
毎日の中でたんぱく質が少なくなりがちな食事のタイミングがあります。それは朝食です。トースト1枚のみで済ませたり、シリアルに牛乳をかけておしまいになっていませんか?
「食べるだけまだいいのでは?」という考え方は、女子サッカー選手としてはどうでしょうか。多くの選手の食事内容を拝見していますが、朝食欠食や、食べたり食べなかったり安定していない選手もいます。その選手たちのパフォーマンスは…ご想像の通りです。
朝食から栄養バランスを整えるためには、皿数をそろえ、それを毎日習慣的にとることが、体調とメンタルの安定につながります。まずは朝食のたんぱく質のおかずが不足していないか確認しましょう。
積極的にとりたいミネラル
ミネラルは、身体の中では骨などの組織や体液中の電解質に存在し、重要な役割を担っています。積極的にとりたいのは、鉄とカルシウムです。
鉄は、月経や発汗時に汗で流れてしまうため、女子アスリートは常に不足しがちです。さらに吸収率も低いため、常に意識して食事からとらなければ、あっという間に不足してしまうのです。
女子サッカー選手は、他の競技と比較して筋肉量の増加とともに貧血になりやすいという報告があります。貧血は徐々に悪化し自覚症状が出てきます。疲れやすくなった、練習中に息切れがある、などの症状がある場合は疑ってみるべきかもしれません。
また、エネルギー不足でも貧血になりますので、十分な食事量をとることに加え、鉄を多く含む食品を不足しないように常に意識してとりましょう。鉄は吸収率が低いため、効率をよくするためには、肉や魚などの動物性たんぱく質からとるのがおすすめです。
カルシウムはミネラルのうち最も必要量が多く、骨などの組織や体液中の電解質などとして重要な働きを担っています。1日700~950mgはとりたいので、毎食乳製品を食卓に添え、加えて小魚や大豆製品、青菜などからとりましょう。
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