メインコンテンツに移動

女の子が男の子の中でサッカーをすること【育成年代の女子サッカー】

こんにちは、元なでしこリーガーの吉野有香です。今月もよろしくお願いします!
今回は「女の子が男の子の中でサッカーをすること」について、私自身の経験も交えつつお話ししていこうと思います。

女の子がサッカーを始めたい!と思ったら、どうする?

 

女の子のお子さんがサッカーを始めたいと思ったら、どうしますか? もちろんお子さんがやりたいと言ったら、やらせてあげたいと思う親御さんが多いかと思います。
ですが、「女の子のサッカーチームってあんまりなさそう…」と心配する方も多いのではないでしょうか。

JFAが発表している数値によると、2019年度の女子サッカーチームの登録数は1,326件。第4種年代(小学生年代)の登録数が8,482件となっているのを見ると、まだまだ女子のサッカーチームは少ないのが現状です。
(参考:日本サッカー協会HP https://www.jfa.jp/about_jfa/organization/databox/team.html

「じゃあ、女の子がサッカーってやっぱり難しい…?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。小学生年代であれば、男女一緒に活動しているチームも多いですし、全国大会レベルでも男の子と一緒に活躍している選手がたくさんいます。

女子チームが近くにないから諦めるのはもったいない。ぜひ男女で活動しているチームも探してみてほしいですし、気になるチームが現状男の子だけで活動している場合でも、チームスタッフに問い合わせてみるのもありかなと思います。

「女になんか負けるなよ!」心無い言葉に悔しい思いをすることも…

ここからは実際にサッカーを始めてからの話。私自身の経験も踏まえて、子どもたちを見守る保護者・指導者の方に大切にしてほしいと思うことお話ししたいと思います。

私がサッカーを始めたのが小学1年生の頃。まだなでしこリーグも存在してない頃です。ありがたいことに、私の地元、愛知県犬山市には女子だけのサッカークラブがありました。なので、私のサッカー人生は女の子だけのチームでスタートしました。

その後、高学年になるとより高いレベルを求め男子のクラブにも所属し、チームを掛け持ちする感じで毎日のようにサッカーボールを追いかけていました。
小学六年生までは背も高い方で体も大きかったので、男子の中に入っても全く負けている気がせず、女の子の中でやるよりも"サッカー"をしている感じもあり、楽しかったことを覚えています。
そんな強気な私でしたが、思い返せば悔しい経験もたくさんありました。

6年生の時、相手チームの男子に挨拶の時、私だけ握手をしてもらえなかったり、相手チームの保護者の集団から「女になんか負けるなよ!!」などと聞こえてきたり…。

その時ずっと「なんで女に生まれただけで、こんなにも否定されるんやろ?」そう心の中で思っていました。

悔しい思いを感じつつも、チームメイトに恵まれていたお陰で、その疑問をサッカーに持ち込むことなくプレーができていました。嫌なことを相手チームに言われた時、いつも一緒にDFラインにいた男の子が「プレーで見返せ」と言ってくれたことは今でも覚えています。

その頃からチームワーク、信頼というものを私はサッカーを通して学んでいたと感じます。ピッチに立てば、男子も女子も関係なく、実力で勝負できるということも。

だけど…。もしあの時、優しいチームメイトに恵まれていなかったら、どうなっていただろう?
そして、女の子に生まれただけなのに…と心の声をふさぎ込み、悩んでいたら、今頃サッカーを辞めてしまっていたかもしれないと思うのです。

私は負けず嫌いなので「見返す」というやり方で逆境を乗り越えられました。だけど、全ての女の子がそうではないと思うのです。負けん気が強くない子もいるだろうし、ただサッカーが好きで、楽しいから続けている子もいると思います。そういう子達が苦しんでいるのではないか?

大切なのは女の子も男の子も「サッカー選手」として見守ること

 

「だったら女子だけのチームでサッカーをすればいい」と思う方々もいらっしゃると思います。ですが、最初に紹介した通り、女の子がサッカーをできる場所はかなり少ないのです。「選べない」のがまだまだ日本女子サッカー界の現実なのではないでしょうか。

ここ数年のサッカー日本女子代表の活躍や、今年の9月に開幕するWEリーグ(女子サッカープロリーグ)など、本当に少しずつかと思いますが、女子サッカーの現状も良い方に変わっていくと思います。
だけどすぐには変えられない。だからこそ、このコラムを読んでくださっている保護者の皆さま、指導者の皆さま、そして少年少女のサッカーに関わる全ての皆さまに、育成年代で起っているこの事実を知っておいて欲しいのです。

もし、相手チームに女の子がいても、女だからとか男だからとか思わず、どの子のことも同じ「サッカー選手」という括りで見守って欲しいです。
どんなスポーツにも、多少なり性別の壁は出てきてしまうものだとは思います。ですが、その中で悲しい思いをしている、悔しい思いをしている、深く悩んでしまう言葉を投げられていることがある。そんな事実を知って欲しいです。

そして、今男子の中に混ざって頑張っている女の子もいると思います。男子選手の中で頑張ってきて、なでしこリーガーになったり、WEリーガーになっている選手を私はたくさん知っています。だから、性別が女の子だからって諦める必要はないです。自分の未来は自分で選んでいけるのです。

女の子が男の子の中でサッカーをすることについて、さまざまな意見があるとは思いますが、私が伝えたいのは、みんなサッカーが好きで、サッカーがしたいといった、”根本にあるものはどの子も同じ”ということです。
どの子にも同じだけの可能性があり、チャンスがあると思っています。だからこそ、女の子でもサッカーを伸び伸びと続けていける環境を作っていけるよう、私も頑張ります。

WRITER PROFILE

吉野有香
吉野有香

元なでしこリーガー(女子サッカー選手)

愛知県出身。常盤木学園で全国大会優勝を経験後、なでしこリーグのクラブに加入。引退後に起業し、サッカー指導者やメンタルコーチ、解説MCなど、全国で広く活動している。
現在は株式会社ゆかサルを設立。京丹後市に女子サッカークラブを立ち上げ、まちおこしとサッカーを掛け合わせたプロジェクトを発足。同時に女子アスリートのキャリア支援なども行っている。

Youtube

Pick Up

ニチバン presents ママが知っておくべきケガの知識について(全3回)

サカママの皆さま、ケガには種類があることをご存知ですか?
現在もケガに多くの子どもたちが悩んでいます。ケガが悪化してしまうと、今後のプレーに大きな影響が出てしまうことも…
サカママに大好評のオンラインイベント『ケガ予防講座』の内容を更にアップデートしたイベントを開催します。この機会にぜひご参加ください!

2025年度サカママライター募集【一緒にサカママWEBを盛り上げませんか?】

2025年度から新たにサカママライターとしてご活動いただける方を募集します。サッカーキッズをサポートするママたちに役立つ情報を発信して、一緒にサカママWEBを盛り上げてみませんか?
読者にとって身近な存在として、自分が持っている情報を発信してみたい!という方はぜひこの機会にご応募ください。

実録!ジュニアユースセレクション~合格から入団以降の流れと注意点

小学6年生世代にとってはジュニアユースのセレクションもいよいよ佳境に入っていると思います。そこで今回はセレクションに受かった後のスケジュールや注意点、クラブチームから合格いただいた後の動きなどを経験を踏まえてお伝えしていきます。

卒団式、何やってる?気になるあれこれをサカママに聞いてみた!

サカママ&サッカージュニアにとって3月は「卒団」のシーズン。そこで卒団式特集を全2回でお届けします。第1回は、卒団式はどんなことをしているか、記念品は何を贈るかなど、気になるあれこれを調査しました。