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その弱点、ホントに弱点?

選手にはそれぞれの個性があります。それぞれの特徴があります。これは小さな子どもから世界のトッププレーヤーまで、どのカテゴリーでも共通することです。

長所はもちろんのこと、短所もまた個性です。得意なプレーがあり、苦手なプレーがあって当然です。攻撃も守備もすべて一人でできてしまう完璧な選手はいません。

選手として成長するうえで、「長所を伸ばす」ことは重要なことです。これはおそらくどのチームの指導者の方も子どもたちに伝えているでしょう。

では、短所・自分の苦手な部分、すなわち「弱点」とはどのように付き合っていけばよいのでしょう。

まず、良い選手は自分の得意なことと苦手なことをしっかりと認識しています。そのうえで試合の中でどのようにして自分の得意な形に持っていけるか、自分の良さを出せるかを考えることができます。

そして「弱点」を認識することで新たな武器が生まれることがあります。たとえばスピードに自信のない子が足の速い子と同じ距離からヨーイドンでボールを追いかけても、ボールに触れることはできません。ならばどのようにしたら先にボールに触ることができるのか。

そのように考えることのできる子は、そのプレー一つがきっかけでポジショニングの重要性に気づくかもしれません。プレーを予測することの大切さに気がつくかもしれません。
本田圭佑選手も言う「伸びしろ」はここにあるのです。足りないものを補うために何かを身につける、課題を克服するために努力する。成長のヒントは「弱点」にこそ多く隠されていると僕は思います。

僕はJリーグの舞台で、ゴールキーパーとして100試合以上の試合に出ることができました。これはまさに自分の弱点を補うために日々考え、試行錯誤した結果だと考えています。身長は191センチという恵まれた体格ではありますが、運動能力的には決して高くない自分にとって、ポジショニングと予測力は生命線でした。

足が速い選手に勝つために、どんなにダッシュを繰り返してもその選手に勝つことはできません。しかし、考え方を少し変え、違う角度からアプローチをすることでその選手にも勝つことができます。

子どもにとっては、「弱点を認める」ことが成長の第一歩かもしれません。ただし、子どもたちにとって、弱点を認めるためには長所や武器が必要です。

足が速い、ボールが遠くまで蹴れる、体力に自信がある、ドリブルが上手い、といったみんなが一目でわかるような長所や武器がある子はそれでよいでしょう。しかし、多くの子がそうではありません。僕もその一人だったのでよくわかります。勝負できる武器がない子が弱い部分を認めるというのは簡単なことではありません。

そんな時こそ親の出番です。しっかりと日頃の我が子の姿を見守る中で、自信を持てる何かを見つけ、それを伝えてあげてください。人には見えにくいものでも必ずそれはあります。

仲間思いなところ、根気強いところ、ボールを怖がらないところ、などなど。どれも立派な才能です。素直に「すごいな~」と思った部分を伝えたうえで、次のステップに進んでいくために「弱点」とどう向き合っていくのかを一緒に考えてみましょう。
「弱点」をどう捉えるか一つで、これからお子さんがぐーんと成長していく。そんな姿を楽しみにしています。

WRITER PROFILE

野田恭平
1981年、神奈川県生まれ。サッカー親子講師。東京V、琉球、岐阜などでゴールキーパーとして活躍。現在は、全国のサッカー少年と保護者を対象に親子向けの親子イベントを開催し、「スポーツを通した人間育成」と「子どもの可能性を最大限に引き出す親のサポートの在り方」をテーマに講演活動を展開。また、JFAこころのプロジェクトのメンバーとして、「夢を持つことの大切さ」と「夢に向かって努力することの大切さ」を子どもたちに伝える活動を行なっている。サッカー少年を育てるママの悩みに真剣に向き合い、絶大な信頼を得ている。