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「感覚の言語化」で修正力&パフォーマンスUP!

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第14回目。
今回のテーマは「感覚の言語化」。シュートやトラップ、ドリブル…自分の動作を細かく説明できますか? 自分のプレー、動作を言語化できると、パフォーマンスアップにも繋がりやすいですよ!

何だか感覚が違う…前のようにフリーキックが蹴れなくなった!

 

皆さんは、今までできていたことが何だか上手くできなくなってしまった…という経験はありますか?

「前のようにフリーキックが蹴れなくなってしまった」

これは以前私のところに相談にきてくれた、中学3年生のお子さんのお悩みです。彼はフリーキックのキッカーを務めており、以前はしっかり狙ったところにフリーキックを蹴れていたそう。ところが、1ヶ月前から狙ったところに蹴れなくなったそうで、時にはとんでもない方向にボールが行ってしまうこともあるとのことでした。なぜ蹴れなくなったのか?と聞いてみると、「何だか前と感覚が違う」とのこと。

フリーキックに限らず、シュートやトラップ、ドリブル突破などなど…、今までは感覚的にできていたことが、なぜか上手くいかなくなってしまうということは、サッカーを続けていると何かしら経験することなのではないかと思います。そんな時、とにかく練習して感覚を取り戻す!という方法もありますが、できるならもっと効率よく感覚を取り戻したいですよね。そこで実践してほしいのが、「感覚の言語化」です。

感覚の言語化ができていると何が良いの?

感覚の言語化ができている例として、私の友人の話を紹介します。彼はJリーグでプレーした経験もあり、とてもトラップが上手い選手でした。彼に、なんでボールが足元にしっかり止まるのか?を聞いてみたことがあるのですが、曰く、トラップの際は「インサイドの面でボールを止めるのではなく、ボールの中心を母指球に当て、足首には力を入れず、体の重心をボールの正面に持ってくるようにしている」とのことでした。これはとても難しい技術なのですが、今回注目したいのは、この技術よりも彼の言語化能力です。トラップという一つの動作に対して、どんな動きをしているのかを細かく、しっかり説明できていますよね。

このように感覚の言語化ができていると、上手くいかなかった時でもすぐに課題を見つけ、修正につなげることができます。これが感覚の言語化の良い点です。もし彼がトラップミスをしても、いつもの感覚と照らし合わせ、どこができていなかったのかをすぐに見つけ、次からは的確に対処することができるはずです。

ちなみに、私はトラップはしっかり止まることもあれば、止まらないこともあり…。現役時代は、「何となくこんな感じでやれば止まるはず」と感覚的にプレーしていて、質にバラつきがありました。皆さんお分かりかと思いますが、これは感覚の言語化ができていない例。この状態だと、いつもの感覚(トラップがうまくいく時の感覚)と上手くいかない時の感覚が比較できず、何が原因なのか分からずじまい…となってしまうわけです。

実践!フリーキックの動作を言語化してみる

それでは、フリーキックが上手く蹴れなくなってしまった中学3年生のお話に戻ります。「何だか前と感覚が違う」と言っていた彼。何となく蹴っている感覚が違うとのことなのですが、どう違うのかはよく分からないようでした。そこで、上手く蹴れた時の動作を詳しく聞いていき、今まで蹴っていたフリーキックの感覚を言語化してみることにしました

質問を重ねた結果、分かった彼のフリーキックの感覚が次のようなものです。

  • 蹴るコースを決める
  • 助走は小さい歩幅で5歩
  • 助走のスピードはゆっくりつま先走り
  • 軸足はいつもより少し離す
  • ボールの中心の少し下をインサイドより少しつま先気味で蹴る
  • 蹴る瞬間はボールだけを見る
  • 蹴った足は斜め上にあげゆっくり大きく振り上げる

どうでしょうか? なんとなく感覚で行っていた一連のフリーキックの動作が、実はここまで細かい動作で成り立っていたことが分かります。そして、この一覧を見て彼は「もしかしたら軸足が少し近かったのかもしれない」という気づきを得ていました。この気づきから、練習では少し軸足を離すことを意識してみようとなりました。

後日、話を聞いてみると、軸足を意識したことでしっかりと修正ができ、また元のようにフリーキックが蹴れるようになったとのことでした。さらに、「振りかぶるときの左手の位置が高いほうがいい」という新たな発見もあったようです。このように、自分の動作を細分化して言語化できるようになると、修正力が上がり、上手くいかなくなった時でも元のプレーに戻りやすくなるのです

いい時の感覚を取り戻したい時は「感覚の言語化」を

 

最初にお話ししたように、感覚的にできていたことができなくなってしまう、というのは程度の差はあれど割と多くの選手が経験するものかなと思います。もしお子さんから、「何かいつもの感覚と違うんだよなぁ…」といった言葉が聞こえてきたら、その時はいつもの動作を細分化していき、どこに違和感があったかを考えてみると、課題解決の近道になるかと思います。また、感覚の言語化ができていれば一つ一つの動作の質を上げやすいですから、パフォーマンスも自ずと上がっていくはずです

いい時の感覚を取り戻したいときは、まずは感覚を細分化して考える。課題がわからないままやみくもに練習すると、余計に時間がかかってしまうこともありますから、お子さんが困っている時はぜひ「感覚の言語化」を試してみてくださいね。

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

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