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試合で“いつもどおり”のプレーをするための練習への向き合い方

試合で“いつもどおり”のプレーをするための練習への向き合い方

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第36回目。「試合で練習どおりのプレーができない」という経験がある方がいると思います。試合で本来の力を発揮するためには、練習の際にとある意識をすることから始めてみるといいかもしれません。

練習をたくさんしているのに、試合でいつものパフォーマンスが発揮できない

中学二年生のA君からこんなご相談がありました。

A君:「公式戦になるといつもどおりにプレーできません。練習では自分の思いどおりにプレーできていますし、誰よりもやっている自信があります。でも公式戦になるとだめです。コーチからも『いつもどおりにやれば必ずできるから自分を信じて頑張れ』と言われるのですが、どうしてもうまくいきません。どうしたらいつもどおりのプレーを公式戦でも出すことができますか?」

公式戦でいつもどおりのパフォーマンスが出せないことは、多くのプロの選手でも抱える悩みになります。メンタル的にさまざまな要因が考えられますが、今回のA君はどのような要因からパフォーマンスが出せていないのか考えてみましょう。

まずはA君にこのような質問をしてみました。
公式戦ではなぜパフォーマンスが出せないと思いますか?

A君:「うまくできるのか、とにかく不安になります。“不安があるからうまくいかない”と思うので、“たくさん練習もしているし今日は大丈夫、できる”と自分に言い聞かせて公式戦に臨んでいますが、やっぱりうまくいきません。周りからも『あんなに練習しているのだから大丈夫だよ』と言ってもらえるのですが、どうしたらいいかわからないです」

うまくなっている実感はありますか?

A君:「少しはありますが、まだまだだなと感じています。とにかく不安なまま試合に臨みたくないので、練習量を増やしてやっています」

不安や緊張感のあるなかで自分の持っている力を発揮するためには、自信を持ってプレーできる状態で試合に臨むことが大切です。しかしA君は、練習を積み重ねても自信を持つことができていません。自信をつけるために練習しているはずなのに、逆に自信を失い続けています。

このようなとき、自信をつけていくために大切なことは“目的を明確にすること”と“どのように練習に取り組んでいくか”です。
まずは、何のためにどんな練習に取り組んでいるのか確認してみました。

A君:「試合で不安にならないためです。なのでシュートをとにかくたくさん練習しています。あとは走り込みもやっています」

試合ではどんな活躍をしたいですか?

A君:「FWなので、たくさん点を取れる選手になりたいです。裏に抜けるプレーが得意なので、そのあたりも試合の中で出せたらいいですね」

自信をつけていくために大切なこと

このように考えてみると、本来の目的は“点を取り、自分の得意なプレーを出せること”ですが、練習では“不安にならないために取り組んでいる”ことになります。ここで重要なのは、“不安の中でもできている”という成功体験を積んでいくことです。

A君には、“不安にならないために練習すること”をやめて、“点を取るために必要な練習”を考えてもらいました。

A君:「裏に抜けてボールを受けたときはキーパーと1対1の状況が多いので、その際のシュートの決定力を上げていきたいです。あとは裏に抜ける際の動き出しの精度を上げていきたいです」

そのために、練習ではどのような動作を意識していきますか?

A君:「まずは相手から離れながら走ることと、1対1の場面ではコースにインサイドで強いシュートが打てれば良いです」

では、練習でそれを意識していきましょうと伝えました。
また、試合で不安の中でもできるプレーを聞いてみました。

A君:「不安の中でもできることは、相手にプレスをかけることと、裏に抜けることだと思います。あとは、外れてもいいのでシュートを打てれば良いかなと思います」

それでは、試合の中ではそこを目標にしていこうとお伝えしました。

公式戦を終えたA君ともう一度話してみました。

A君:「練習の中で意識したことがどんどんイメージどおりにできるようになって、自信につながっている感覚があります。試合の中では不安はあったけど、前よりできる感覚があって、後半は自分のプレーが出せていました!」

試合に対する不安が出てくることもあります。そのなかで“不安にならないこと”を目的にしていくと、日々の練習でやることもずれてきてしまいます。

まずは試合の中でなりたい自分の姿を明確にして、そのための練習に取り組みながら自信をつけていくこと。そして不安の中でもできることを増やしていけると、試合での自信につながっていきます。

お子さんをサポートする際は、そのあたりを一緒に整理してあげると、より具体的な日々の取り組み方が見えてくると思います。参考にしてみてください。

最後に

これまで約3年間サカママさんで全36回の連載をさせていただきました。
今回が最後のコラムとなります。

メンタルスキルコーチとして子どもたちの成長をサポートしてきた経験を、保護者の方々の子育てに少しでもお役に立てればと思い執筆活動を続けてきました。これからも1人でも多くの子どもたちの成長に貢献していくために、私自身も成長しサポートしていければと思います。

私のコラムを読んでいただき誠にありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。

株式会社43Lab
メンタルスキルコーチ 山下訓広

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

★株式会社43Lab HPInstagramFacebookTwitter

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