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Jリーガーたちの原点「大久保 嘉人(川崎フロンターレ)」

Jリーガーたちの原点「大久保 嘉人(川崎フロンターレ)」

並々ならぬゴールへの執念、幼少期から続く負けん気の強さ

170㎝と小柄ながらピッチの最前線で躍動し、2013年に初のJ1得点王に就いて以来、リーグ史上初となる同タイトルを3年連続で獲得。今年7月には、それまでのJ1リーグ歴代最多タイの157得点を更新し、前人未踏の領域に突入している。34歳、3児のパパにして全盛期、それが大久保嘉人だ。

並々ならぬゴールへの執念、人一倍強い負けん気の強さ、それは幼少期から続く彼のアイデンティティーでもある。“Jリーグ史上最強ストライカー”はいかにして育まれたのか。大久保が自身を振り返る。「子どもの頃からサッカーでは絶対に負けたくなかったですね。ずっと親からも言われてきたし、実際負けると怒られるし(笑)。負けないためにどうしたらいいか、それを常に考えてきました」

大久保少年が初めてその競技を目にしたのは小学1年生の頃。両親と買い物に出かけた際に、河川敷で玉蹴りに興じる風景を眺めながら「あれは何のスポーツ?」と聞いたところ、それが「サッカー」であることを知った。「さっそく体験会に行ってはみたんですけど、ボールを上手く蹴れなくてそれ以来行かなかったですね。でも3年生の時に学校の友達に誘われて苅田サッカースポーツ少年団に入ったんです。それから本格的に練習をするようになりました」

小学生の大久保がサッカーに没頭できた一番の理由は「ひたすら楽しかった」から。1年生の時は蹴っても浮くことすらなかったボールが、3年生になったらまっすぐ飛ぶようになった。朝の6時には仲間と校庭に集合し、学校が始まる8時まで無我夢中でボールを蹴り続けたという。時には授業が始まったことすら忘れ、担任の先生から「早くしろ!」と怒鳴られることもあったそうだ。

両親は共働きだったが、試合の送迎はいつも母親がしてくれたという。「土日の試合は母が観にきてくれました。ただ、母は相当厳しくて、試合に出てないと怒られるし、試合に出ても点を取らないと怒る。正直来てほしくなかったですね(苦笑)。でも、グラウンドに立つと点を取りたい一心で、親に見せたいと思ってました」。気付けば福岡県の選抜チームに抜擢され、ゴールを量産。すでに非凡な才能を開花させつつあった。

全国屈指の強豪校へ進学、初めて直面した挫折という壁

そんな愛すべきサッカーが“遊び”から、“プロを目指す”ものへとシフトしたのは、小学校5年生の時。1993年、世間は華やかに開幕したJリーグに熱狂していた。

「僕もああなりたい!と思いましたね。中学はサッカーの名門校への入学を打診されていたんですけど、友達も行かないっていうので最初は断っていたんです。でも父に『1%でもプロになれるかもしれないから懸けてみろ』と言われたことで決意しました」

大久保が進学したのは名門、国見町立(現・雲仙市立)国見中学校サッカー部。長崎県立国見高等学校を全国屈指の常勝軍団に創り上げた名将・小嶺忠敏総監督が指導する中高一貫のサッカー指導を受けに、他県からも優秀な生徒が集められていた。親元を離れ初めて経験する寮での共同生活、中学生にして強いられる過酷な生存競争、大久保はここで人生最初の挫折を経験する。「もう帰りたいって思いましたね。みんな上手いし、試合には出られないし…。でも親が汗水垂らして働いたお金を出してくれているのに、これでいいのかと。あとちょっとだけ続けてみよう。その“ちょっと”が積み重なって、中3にはレギュラーになっていました」

国見高校に進学しても、その志の高さゆえ試練は続いた。「プロになるなら1年生から試合に出ないといけないと言われていて、同級生も4人くらいメンバーに入っていたんです。でも僕は応援する立場、このままではヤバイと思いました。もう少しだけ続けてダメだったら帰ろう…中学の時と一緒ですね」

子どもの頃からサッカーでは負けたくなかった。負けないためにどうしたらいいか、それを常に考えてきた

高校三冠までの険しい道程、支えたのは「負けたくない」一心

逆境を跳ね返す原動力となったのは、冒頭の言葉にもある「負けたくない」の一心。そのための努力を惜しむことはなかった。寮生が寝静まった時間に起床し、誰からも見つからないようにと、近くの公園に空き缶を並べてドリブルの練習をした。これは中学時代から一貫して欠かすことのなかった習慣だった。そんな大久保のひた向きな姿勢は、後にチャンスを引き寄せることになる。「ある日、先輩の退部もあって、偶然トップ下のポジションが空いたんです。それまでフォワードしかやったことがなかったのに、監督から『ヨシ、お前できるか?』って。それからですね、道が開けたのは。今でもなんで任せてもらえたのか分からないですけど…」

その後はレギュラーとして定着し、チームのエースとして国見高校の黄金期を築き上げる。高校三冠達成、個人としても全国高等学校サッカー選手権、インターハイで大会得点王に輝き、ユース代表として国際戦にも出場。各クラブ争奪戦の末、Jリーグでプロとなってからの活躍は先述の通りだ。

やらされる、じゃなく自分から。親がサッカーと向き合ってほしい

今、大久保は自身が父となり、息子達の姿に当時の自分を重ねるという。「親のサポートがあったから、今の自分があると思っています。僕もたまに子どもを練習に連れていくのですが、送り迎えをすることだけでも本当に大変なことだと思います。ただ、親がちゃんと向き合えば、子どもはサッカーが上手くなっていくのかもしれないですね」

大久保には今サッカーを楽しむ全国の子どもたちに伝えたいことがあるという。「まずはサッカーを楽しむこと。そして自分の好きなプレー、得意なプレーを早く見つけて、伸ばしていってほしい。僕は中学の時に一度ドリブルで上手く抜けた瞬間があって、それがすごく楽しかった。だから、そのタイミングを何度も何度も練習しました」。今でも日々の練習の中でそうした気づきがあり、それが試合でできると自信になっていると語る。「僕は昔も今も、試合中に自分がいけると思ったらシュートすることがほとんど。試合では失敗することは考えなくてもいい。失敗することを考えたら何もできなくなってしまうから。負けたくないという強い気持ちを持って、諦めずにサッカーを続けてほしいですね」

最後に全国のサカママにもメッセージを残してくれた。「毎日が本当に大変だと思います。家事だって山ほどあるしストレスだって貯まるでしょう。実際、うちがそうなんで。ただ、子どもが“楽しい”と思ってくれることは親にとって掛け替えのないことだし、いずれはプロにだってなれるかもしれない。しんどいのは今だけだと思うので、朝早く起きてサポートしてあげてください。って、僕が嫁に言っているみたいですね(笑)」

写真/野口岳彦、金子 悟

2016年12月発行の19号掲載

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