Jリーガーたちの原点 Special「藤尾翔太(FC町田ゼルビア)」
人気連載「Jリーガーたちの原点」。今号はパリ五輪で、U-23日本代表に選出された藤尾翔太選手にインタビュー。子どもの頃を振り返りながらサッカーとの関わり方、両親のサポート、今後の目標についてもお聞きしました。
結果を出したことで、自信と信頼を得られるように
-まずは、サッカーを始めたきっかけを教えてください。
「元々父と兄がサッカーをやっていて、その影響で始めました。小学生の時に入ったのは、地元大阪のリップエースSC というクラブチーム。当時からずっとFW で点を取っていたのを覚えています。ただ、全国大会までは進んでも、最後までは残らなかったですね」
-最初からプロ選手になることを目指していたのですか?
「初めはプロになりたいという気持ちはなかったんです。中学1、2年生の頃までは身長もあまり大きくはなく線も細かったですから。中学3年生の時に178㎝くらいまで背が伸びて、その頃、公式戦でも得点を重ねることができるようになりました。とくに印象に残っているのは、高円宮杯U-15 関西サンライズリーグ。全チームの中で1番得点を取ることができて、自信につながりました。得点が増えたことでチームメイトも信頼してくれて、より僕にボールが集まるようになったんです。ゴール前のチャンスが増えたことがFW としての成長につながったと思います。徐々に自信がついてきて、プロへの道も考えるようになりました」
伸び伸びとサッカーができたのは、サポートに徹してくれた両親のおかげ
-小学生時代、ご両親はどんなサポートをしてくれていました?
「一番印象に残っているのは、自分が履きたいスパイクを買ってくれていたということです。成長する中でスパイクを変えることが頻繁にありましたけど、自分の足にあったものを常に買い与えてくれました。それと、洗濯!人工芝でサッカーをすると、ソックスに芝がたくさんつきますよね。母からはいつも『芝を取ってから帰ってきて』と言われるんですけど、取らずに帰って(苦笑)。それを毎回きれいに洗ってくれて、次にサッカーをする時にはきちんと準備してくれるというのが日課でした。兄弟でサッカーをやっていたこともあり、今思うと、すごく大変だったと思うので感謝しかないですね」
-サッカーのことで、ご両親に何か言われたことはありますか?
「父とは休みの日によくボールを蹴っていましたけど、プレーに関して細かく言われたことはなかったです。両親が口出しをせずにサポートに徹してくれていたおかげで、伸び伸びとサッカーを楽しみながらプレーすることができていたんだと思います」
点が取れず不安になっても気持ちはブレなかった
-リップエースSCで小中学生時代を過ごし、高校からセレッソ大阪 U-18へ。順風満帆でしたか?
「中学3年次にリーグ戦で得点を量産していたのがスカウトの目に留まり、セレッソから誘いを受けて入団することができたんです。ただ、Jリーグの下部組織でプレーするのは初めてだったので、やはりレベルが上がったように感じました。得点できない試合があると、不安になったり、自信を失ったり。でも、入団した時からプロなることを目標にしていたので、気持ちはブレなかったです。レベルの高い環境で練習を重ね、試合でゴールを決めることで自信を取り戻し成長していったように感じています。世代別の代表に継続して選ばれるようになったことも大きな自信になりました」
-万能なプレースタイルで、チームに勢いをもたらす藤尾選手。現在のプレースタイルはいつ頃培われたのでしょうか?
「ベースは高校時代に作られているとは思うのですが、当時のクオリティは低かったですね。ゴール前で冷静になりきれず、キーパーにボールを取られてしまうこともよくありましたから。結果的にプロになれたことで、今もなお成長できていると感じています」
自分が決めたことを継続すれば、プレーの成長にもつながる
-ピッチ外で意識していたことはありますか?
「セレッソ U-18に入ってからは寮で暮らすようになり、食事を意識するようになりました。よく食べるということはもちろんですが、添加物やお菓子、カップ麺など細かい部分にも気を遣うことを覚えたのは高校生の頃だったと思います。世代別代表には細かいところまで意識を高く持ってプロを目指している選手が集まるので刺激を受けましたし、コンディショニングの面でも参考になることが多かったですね。育成年代は若さで乗り切れてしまうこともあるんですけど、上を目指すなら、食事や睡眠も意識して習慣化できるようになっておいたほうがいいと思います」
-現在、FC 町田ゼルビアで9番を背負い、攻守にわたりチームを支えている藤尾選手。今後、目標にしていることは?
「まずは自分の価値をもっと上げていきたいと思っています。日本代表として長く活躍できるような選手になりたいですし、ヨーロッパなどでもプレーしたいという思いもあります」
-最後に、子どもたちとサカママへメッセージをお願いします。
「食事や睡眠の習慣化など、今からできることはたくさんあります。僕の場合はプロの世界に入り『変わらないとついていけない』と感じてから、意識が変わりました。もっと早く気づいていたらもっと成長できたのではないかという後悔もありますね。自分が決めたことを続けることで身体やコンディションは変わっていくし、プレーの成長にもつながると思います。
小中学生の頃、両親に『ありがとう』と口に出すことは少なかったですけど、母が送迎をしてくれたり、父が一緒にボールを蹴ってくれたことに感謝の気持ちを持っていました。きっと子どもたちも、そんな思いを持っているはずです。厳しく口を出すよりも、子どもたちが伸び伸びとサッカーができるようにサポートしてあげてほしいと思います。僕自身、両親がそんなふうにサポートしてくれたことで、サッカーがずっと好きで続けてこれたんだと思っています」
写真/©FCMZ