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Jリーガーたちの原点「酒井 宏樹(マルセイユ)」

Jリーガーたちの原点「酒井 宏樹(マルセイユ)」

子どもの頃はサッカーをするのが楽しくてしょうがなかった

8月6日、欧州プロリーグで一足早く開幕したフランス1部リーグ、リーグ・アン。その開幕戦に大勝し、オリンピック・マルセイユの本拠地スタッド・ヴェロドロームは沸きに沸いた。幸先の良い船出を祝い、誇らしげに歓声に応える選手たちの中に、酒井宏樹はいた。酒井は昨シーズン、リーグ戦35試合に出場し、自らの力でフランスの名門で定位置を確保。開幕戦での先発出場は、その努力の賜物である。

今や日本を代表する右サイドバックとなった酒井だが、その来歴は、いかにもエリート然としたものだ。小学6年生から育成に定評のある柏レイソルの下部組織でプレー。中学で柏レイソルU-15に正式加入すると、後に“黄金世代”として語られるチームの中心として、あらゆる大会を席巻。高校時にU-18に昇格すると、09年にはトップチーム昇格を果たし、誰もが憧れるプロ選手の資格を得た。まさに一路順風、エリート街道まっしぐら。この取材では、その順調すぎるサッカー人生を振り返るのかと思いきや、酒井の口を突いて出てきた言葉は「挫折だらけ」。その内容は“エリート街道”であるがゆえの、チーム内競争と厳しい戦いの連続であった。

酒井少年がサッカーを始めたきっかけは、年の離れた2人の兄の影響だったという。

「兄貴2人もそうですが、親父もサッカーをしていたし、物心ついた頃からやっていました。まあ、年も離れていたし、2vs2の人数合わせみたいなものでしたけど(笑)」

常にサッカーボールと野球のキャッチャーミットが置いてあったという酒井家。サッカーと野球、2つのレールが目の前にある環境の中、サッカーを選んだ理由は何だったのだろうか?「サッカーはボール1個あればできる。その身近さが理由ですかね。でも、野球も好きでしたよ。今も好きですしね。僕の場合、恵まれたことにスポーツは何をやっても上手かったです。とにかく、当時はスポーツをすることが楽しくてしょうがなかったですね」

柏レイソルのアカデミーに入りお山の大将だったと気付いた

フォワードとしてプレーした地元のサッカークラブ「柏マイティーFC」では、点取り屋として活躍し、誰もが頼る大エース。「自分は何でもできるとさえ思っていた」と言う酒井少年に、大きな転機が訪れたのは小学6年生の時だった。柏レイソルの練習会に参加したことが、彼のサッカー人生を大きく変えていく。「1度練習に参加してから、練習生として通うようになりました。物心ついた時から、僕にとってサッカーは、ずっと楽しいものだったけれど、柏レイソルのアカデミーで練習するようになって、それが苦しいものに変わっていきました。お山の大将だったということですね。上には上がいることを知りました」

そんな酒井を、両親は常に変わらないスタンスでサポートし続けた。伸び伸びと自由にプレーできる環境を作り、決して何かを無理強いすることはなかったと振り返る。「試合を見て親が特に何かを言うことはなかったんですけど、プレー内容が悪い時には、逆に良いところを探して褒めてくれる。それが申し訳なくて……(苦笑)。両親がある程度距離を置いて接してくれたことで、自然と考える姿勢が身に付きました。自分で考えて納得しないと前には進めないですからね。僕自身が親になった今、すごくいい育て方をしてくれたと感謝しています」

酒井は、中学入学と同時に柏レイソルU-15に加入する。「小学生の時はフォワードでプレーしていたのに、気づけば右サイドハーフ。前線には上手い選手が揃っていたのもあって、ポジションは後ろに下がっていくし、最初の1年間はまったく試合に出られなかったんです。ただ、日本でトップのレベルで練習できているという事実が、心の拠り所でした」

高いレベルの中でこそ経験するチーム内競争。試合に出たい――そんな思いに駆られる日々に光明が差したのは中学3年次。吉田達磨監督(現ヴァンフォーレ甲府監督)の下、現在のサイドバックのポジションを見出された酒井は、不慣れな守備にも対応しつつ、頭角を現していく。その後は、プロ9人を輩出した黄金世代の中心選手となるわけだが、意外にも酒井にとって「壁を乗り越えた」という感覚はなかったという。

「僕個人で乗り越えたというより、まずサッカーはチームスポーツであるということがあります。だから、周りの選手がすごく上手かったことで、“僕が活かされた”と言った方が正しいと思います」

少し距離を置いて、子ども自らが考える環境を作ってあげることも親の在り方だと思います

「全員が僕より上手い」今でもそう思ってプレーしています

穏やかな性格で知られる酒井は、競争の激しいプロの世界にあって異色の存在といえる。そんな彼が、日本代表、そしてフランスの名門マルセイユで定位置を掴んだ背景には、彼なりの“順応論”がある。「今でも周囲に活かされているという思いは強いです。日本代表もそう、現所属のマルセイユもそうです。実際、他の10人は『全員が僕より上手い』と思ってプレーしていますからね。それでもサッカーは、チームスポーツだから、自分の特徴を出せるシーンが訪れるんです。それに悩むことがあっても、いいタイミングでサッカーの発見や気づきがあって、また楽しくなるんです。それで『もう少し続けてみよう』となる。ずっとその繰り返しですね(笑)。だから我慢ができるチカラが備わって、チームにフィットするようになれたんだと思います。僕はどんどん“順応するタイプ”で、指導者から『こういう選手になってほしい』と言われると、そうなろうと思う性格なんです」

“怪物”とも評されるような才能たちの中で、酒井は周囲と順応することをプライオリティとした。それは同時に、個の力を高いレベルにまで伸ばしたことにもつながる。「僕はチームメイトに協力する努力はしましたが、同時に個人としてのチャレンジも続けました。その結果、今があるのは間違いないです。そう思うと早い段階で上を知れたのは、僕にとって大きかったかもしれないですね。自分が納得するまで追求しないとサッカーは上手くならないし、自分で悩み抜きましたから。それこそサッカーを辞めようと思ったことは何百回とあります。挫折だらけですよ、僕のサッカー人生は(笑)」

自身のこれまでを振り返りそう笑う酒井が、最後にサカママにメッセージを残してくれた。

「みなさん、子どもがかわいい気持ちはすごく分かります。でも、子ども自身が納得してプレーしないとサッカーは上手くならないし、少し距離を置いて、子ども自らが考える環境を作ってあげることも親の在り方だと思います。僕自身、そう育てられてきましたし、そういう親になっていきたいと思います。そして、自分で考えてプレーする子どもが増えてきたら、日本のサッカーはもっと強くなると思っています」

写真/NIKE

2017年10月発行の23号掲載

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