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簡単なミスを誘発してしまう「無意識に働く思考の癖」とは!?

簡単なミスを誘発してしまう「無意識に働く思考の癖」とは!?

元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第28回目。スポーツをしていると、決定的な場面でミスしてしまうという経験が誰しもあると思います。その原因は「無意識に頭の中で働いている思考の癖」が影響しているかもしれません。

無意識に働く思考の癖

先日、中学校2年生のA君からこんなご相談がありました。

A君:「決定的なチャンスを外してしまいます。難しいシュートは割と決められるのですが、ゴールがガラ空きの時や、1対1の場面で簡単に決められるシーンになると決めきれずに得点できません。どうしたら決定的なシーンを確実に決められる選手になりますか?」

たしかにプロの試合でも見たことがあるシーンなのではないでしょうか? 私自身も経験したことがある場面です。では、このとき選手の頭の中でどのようなことが起きているのか考えてみましょう。

まずはこんな質問をしてみました。難しいシュートを打つときと簡単なシュートを打つときの気持ちは違いますか?

A君:「難しいシュートを打つときは、少し興奮気味でとにかく狙ったところに打つみたいな感じですね。簡単なシュートのときは、興奮しているというよりかは安心してしまうような感覚があります。絶対入るだろうみたいな気持ちですかね」

A君に聞いてみると、簡単なシュートを打つときは安心という感情が出てきています。このときの行動をより深く聞いてみました。

A君:「ゴールがガラ空きで外してしまうときは、いつも通りにインサイドにボールが当たらなかったり、体が浮いていて上に外してしまったりすることが多いですね。1対1のときも、あんまり何も考えずに打っちゃってキーパーに当たってしまいます。少し雑なプレーになっているのかもしれません」

ここでこんな質問をしてみました。安心するとやることが雑になってしまうことは日常生活でもありますか?

A君:「次の日のテスト勉強や準備ができて安心だと思ったら忘れ物をしてしまったり、名前を書き忘れたりしたことがあります。あと、夏休みの宿題がもうすぐ終わると安心したら回答を書くところを間違えてやり直ししたこともありました」

 

無意識の安心が生む失敗

A君には、安心すると“もう大丈夫だろう”と結果のことを考える癖がありました。皆さんもないでしょうか? 例えば、電車に乗り遅れそうになり焦ってしまうと電車を乗り間違えてしまうことなど。人はそれぞれ思考の癖を持っています。A君の経験を見てみると、安心すると結果に思考が回りやすいことが分かります。

ここで結果を考えるのではなく、うまく得点を取れているときの行動を書き出してもらいました。

A君:「ガラ空きのゴールは最後までボールを見て体をかぶせて打てば入ると思います。1対1であればキーパーの立ち位置を見てコースに打てば入ります」

安心したときに“大丈夫だろう”と結果を考えるのではなく、リストアップしてもらった行動を意識すること。私生活でも安心したときこそやるべきことに意識を向けていくことを自ら決めて、メンタルトレーニングを終えました。その後A君からこんなお話しがありました。

A君:「前より簡単なシュートも決められるようになってきました。まだ外してしまうこともあるけど、そのとき行動が雑になっているということを理解できたので改善していきます!」

このように人は思考の癖を持っています。癖は無意識に働くものなのでなかなか気づかないことが多いところになります。しかし、このように自分の思考の癖に気づけると自分の傾向も分かってきます。

サッカーの中で普段の生活でも大切だと言われる部分があると思います。思考の癖はご紹介したとおり私生活にも表れてきます。癖は意識して取り組めば変えることができます。この辺りを自己分析した上で、サッカーと私生活をかけ合わせて考えてみると、取るべき行動がより見えてくるかもしれません。

成長を妨げている思考の癖があるときは、私生活から見直してみることも大切になると思います。

 

WRITER PROFILE

山下訓広

1986年5月29日、千葉出身
流通経済大学付属柏高等学校、流通経済大学卒業後、J2 ロアッソ熊本に入団。
ロアッソ熊本退団後、シンガポール、ミャンマー、インドネシアと東南アジアでプロサッカー選手として活躍し11年間のプロ生活を経て、現在は株式会社43Labに所属しメンタルトレーナーとしてトップアスリート、ビジネスマン、ジュニアアスリートに向けたメンタルトレーニングを行っている。

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