人と比べて落ち込んでしまう…そんな時に必要なことって?
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第8回目。
今回のテーマは「人と比べること」。お子さんが「○○君に比べてダメだ…」と、自分と人を比べて落ち込んでしまったりすることありませんか? ついつい人と比べて落ち込んでしまうという場合は、まずは自分の状態を確認することが必要かも…。
人と比べて自信を失う…そんな時どうすればいい?
子どもたちをサポートしていると、人と比べて自信を失ってしまうといった場面をよく見ます。周りの友達に比べて技術がない、走れないなど、人比べるポイントは様々です。また、人と比べることで自分の可能性にブレーキを踏んでしまい、挑戦すらできなくなってしまうこともあります。
私も現役時代には、他人と比べて上手くできていないことに自己否定感を味わい、自信を失ってしまうことが多々ありました。こんな時、どのように対応すれば、自信を構築していけるのでしょうか。
人と比べたり、競争ができる段階に自分はいる?
まずは、人と比べるということについて考えてみましょう。そもそも、人と比べる、競争したくなるということ自体は悪いことではありませんし、それをしたからと言って必ずしも自信を失うとは限りません。では、人と比べて自信を失ってしまうのはどんな時でしょうか?
アルバート・バンデゥーラという心理学者が提唱した社会的認知理論をもとに、私の現場での経験を交えて考えると、人のモチベーションが上がっていく段階は次のようなフェーズに分かれていると感じます。
自信喪失状態➡自信構築➡目標達成➡再現または維持
自信喪失状態と目標達成の間に自信構築のフェーズがあるように、自信を喪失している状態のままでは目標達成に向けて行動するためのモチベーションを保ちづらいことがあります。人と競争したり、誰かと自分を比べるにしても、自信構築がされているタイミングにしなければ、目標達成に向けたステップを踏むことができない場合が多いので、注意が必要です。
私の現役時代を例にとって考えてみましょう。私はヘディングには自信がありました。相手選手もヘディングが強ければ、余計にこの人に勝ちたいと思い、競争心が湧いてきたものです。この時もし相手に競り負けたとしても、自信を失った感覚はなく、悔しいからもう一度チャレンジしたいと思っていました。
その一方で、体力には自信がありませんでした。走るトレーニングではいつもほぼ最下位…。周りに比べて走れない自分はダメだと自己否定感を味わい、自信も失っていました。そして、もう走るのは嫌だなとさえ感じていました。
1つ目のヘディングは自分が得意なこと、つまりもう既に自信がある程度育っているものです。この時の競争は、自信という土台がある中で行われるので、モチベーションのフェーズで言うと目標達成に向けた準備が整っていることになります。
2つ目の体力は自分が苦手にしていることで、当然まだ自信が育っていません。モチベーションのフェーズでは目標達成に向けた準備が整っていない段階です。この段階で人と比べたり、競争してしまうと、余計に自信を失うことになりかねません。
自信が育っているものは人と比べる(競争する)準備ができていて、自信が育っていないものはまだその段階にないということです。
人と比べる前に、まずは自信を構築すること
人と比べたり、競争ができるようになるタイミング(=自信の土台ができた状態)は、保護者の方がお子さんと一緒に考えていけるといいかと思います。もし、お子さんから「みんなに比べて僕なんて…」というような言葉出てきたら、そもそも競争ができるタイミング、自信の土台ができた状態だったのかを考えてみてあげてください。
もし、まだ自信がない状態なら、まずは自分軸で目標設定をするお手伝いをしてあげると自信を構築していきやすくなります。自信をつけるために重要なのはプラスの感情なので、達成感や喜びなどを味わえる目標設定をしていきましょう。そのためには、以前連載でも書かせていただいた「スモールステップ」が重要です。日々小さな達成感を味わえるような目標設定を行い、「上手くいっているぞ」という感覚を積み重ねていけば、最終的に自信が構築されます。その段階になってから、人と比べる、競争するというチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。
自信がない状態で人と比べてしまうと、「どうせ自分には無理だ」とチャレンジ精神も失ってしまうことがあります。お子さんが人と比べてしまって自信を失っている時には、自信の状態を見て、競争が適切なタイミングだったかを考えてみてくださいね。