コーチに怒られるのが怖い…怖さから逃げず普段の自分のプレーをするには?
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第35回目。コーチに怒られることを恐れて、普段どおりのプレーができないというお子さんがいると思います。怖さから逃げず、いつものプレーを発揮するためのメンタルの持ち方を解説します。
コーチが怖くていつもどおりのプレーができない
中学1年生のA君からこんなご相談がありました。
A君:「新しいクラブに入り最初は自分らしくプレーができていたのですが、ミスをしたときにすごく怒られた経験があり、それからボールが来ると怖く感じてしまいます。いつもなら自分でドリブルを仕掛けたりできていたのですが、今はパスを優先してしまいパスもずれてしまうことが多いです。そのたびに怒られるのであまりボールに触りたくない気持ちになってしまいます。コーチを気にしないようにしようと考えて練習に臨むのですがやっぱり駄目です。どうしたら以前のようにコーチを気にせずプレーすることができますか?」
中学生になり新しいクラブに入ったものの、コーチが怖くて普段どおりのプレーができないということです。コーチから厳しい指摘を受けた際に怖さを感じてしまう人もいると思います。そんなとき、どのようにメンタルを保ちながらいつものプレーに戻っていくのかご紹介します。
まずはA君に、サッカー以外でも怖い経験を今までしたことがあるか聞いてみました。
A君:「小学校低学年のころ、夜に一人でトイレに行くことが怖いと感じたことがあります。なのでお母さんについてきてもらっていました」
今でも夜に一人でトイレに行くことは怖いですか?
A君:「今は大丈夫です。別に怖くないし一人で行けます」
なぜ怖いなかでも行けるようになりましたか?
A君:「最初はついてきてもらっていましたが、徐々についてきてもらわずに大きな声で話しかけながらトイレに行ったり、鼻歌を歌いながらだったり楽しいことを考えながら行っていたら、いつの間にか怖くなくなっていた気がします」
ここからわかることは、怖いと感じながらも“できる”という経験を積んでいくことで怖さが少しずつ軽減されていったということです。
そこで、サッカーの中でも、怖いと感じながらでもできることを考えていくことにしました。まずA君に、サッカーの中でどんなプレーをしていきたいのか聞いてみました。
A君:「自分の得意なプレーであるドリブルをもっと仕掛けていきたいです。そこからシュートやセンタリングなどの得点に絡むプレーを増やしたいと思っています」
ここでA君に、怖さがあるなかでも今の自分が頑張ればやりたいプレーを何%くらい出せるか聞いてみました。
A君:「15%くらいであれば出せると思います」
具体的に15%はどんなプレーができれば達成なのかも聞いてみました。
A君:「縦にドリブルで2回仕掛けられたら、15%くらいは出し切れた感覚になると思います」
また、縦にドリブルするにはどんな行動ができていると仕掛けやすいかも聞いてみました。
A君:「ボールを受ける前に相手の場所を見ておくことと、ファーストタッチを足元に置くことができていれば、普段はうまく縦に仕掛けられていると思います」
それでは、次回の練習は縦にドリブルを2回仕掛けるために、ボールを受ける前に相手を見ておくこと、足元にファーストタッチを置くことだけを意識していきましょうとお伝えしました。
2週間後、A君と話してみるとこんなふうにお伝えしてくれました。
A君:「あの後の練習で、自分で整理した目標のために意識するポイントだけを考えてプレーしてみたら、ドリブルで4回くらい仕掛けられました! 2回は抜くこともできてセンタリングまでいけて、すごくうれしかったです。今も怖さはありますが、前ほど気にせず自分のやりたいプレーを優先してできている感覚があります」
怖さを避けてプレーしていくと、本来の自分のやりたいプレーができないこともあると思います。そんなときは、怖いなかでもできることから始めていくと、怖さを感じながらも達成感も感じることができます。
この達成感の積み重ねが怖さを軽減していくために必要になってくるので、怖がらないようにプレーしようと思考を働かせるのではなく、怖いなかでもできるプレー、行動を具体化して、そちらに意識を向けていくとより達成感に結びついていくでしょう。
お子さんがこんなお悩みがあるときは、できることやより具体的な行動をまとめるサポートをしてあげると、本来の自分らしいプレーを取り戻しやすくなるので、ぜひ参考にしてみてください。