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服装からできる熱中症対策って?

みなさん、こんにちは。スポーツナースの山村です。
いよいよ8月が目前に迫ってきました。コロナ第7波の中ではありますが、できる範囲での活度を頑張っている選手達のサポートとして、前回に続き熱中症対策をお届けします。今回は少し目線を変えて、服装から出来る熱中症対策です。

知っておこう、体温コントロールの仕組み

服装からできる熱中症対策の前に、おさらいも兼ねて体温調節の仕組みについてお話しします。

人は活動することで熱を作り出していますが、暑い環境下での運動は外気の影響を受けるので、より体温が上がります。この時、上がった体温を下げるため、私たちの体は外気に近い皮膚表面の血管に血液を集めて皮膚温度を上昇させ、体の熱を外気へ逃しています。またこの他にも、汗が蒸発する際に皮膚表面の熱を奪い体温を下げたりと、私たちの体には体温を一定にコントロールする仕組みが備わっています。

さて、体温調整に重要な役割をしている汗ですが、汗をかくと失われてしまうのが体内の水分です。体重の3%の水分が減るような脱水状態になると、汗の量がグッと低下し、減少率が7%にもなると汗がほぼ出ない状態になってしまいます。こうなる頃には汗をかけない以外にも意識が朦朧としたり、体に様々な異変が出てきてしまいます。
体重の2%の脱水から喉の渇きを感じるようになると言われていまから、喉が渇いたと感じた時には、既に汗がかけなくなる手前ということ。喉が渇いたと感じる前からしっかり水分補給をすることが大切です。

また、汗は蒸発することによって体温調節に繋がっているので、湿度が高く、汗が渇くことなく流れていくような時は特に注意が必要です。汗が蒸発せず渇くことがないと、体温の冷却に結びつかないまま、ただ体の水分が失われていきます。サッカーの練習着は比較的速乾性のあるものが多いですが、汗だくになったシャツのままで試合や練習の合間を過ごすのは避けた方がいいでしょう

それでは、服装でどんな熱中症対策ができるのかを紹介していきます。

熱中症対策には黒より白い服

 

野球の話になりますが、つい最近まで全国高校野球選手権では、選手が全員黒いスパイクを履いていました。実は、これはルールでスパイクは「黒の単色」と定められていたため。このルールは熱中症対策の一環として改正されることになり、現在は白いスパイクも履くことができるようになっています。子どもの頃に理科の授業で習ったのでみなさんご存知かと思いますが、黒は熱を吸収する色なので、足元が熱くなってしまうのを避けたということですね。

熱を吸収する黒に対して、白は光の反射率が高いので熱が上がりにくい特徴があります。黒は紫外線を通しにくいので日焼け対策には向いていますが、熱中症対策という観点からすると白の方がオススメ
また、人工芝の下はアスファルトになっており、水分を保持できず蒸発もされないため、表面温度は50~60度にもなると言われています。人工芝用のスパイクはデザインでけでなく、色に着目して購入するのもアリかなと思います。

白黒以外はどうなのか気になる方は、色による表面温度の変化を調べた実験もあるので、参考にしてみてください。

★ウェザーニュース 熱中症予防に効果的な服の色は?表面温度は20℃の差
https://weathernews.jp/s/topics/202108/050255/

夏場はシャツインよりもシャツアウト

 

色の他に服装からできる熱中症対策として、「シャツアウト」があります。

一昔前に比べると、練習や試合の時でもシャツアウトをしているチームが増えた印象がありますが、シャツアウトをしていると「だらしない」と感じる方もいるのではないでしょうか? そう言う私も、息子がジュニアチームの頃はそう感じていました…。
ただ、シャツアウトをしていると風通しが良くなり、熱を逃しやすくなるので、シャツインの状態よりも4度前後も体温が下がるということが実験で分かったりしています。

★朝日新聞デジタル 運動着の裾、出してもいい? 暑さ対策、理科教諭が実証
https://www.asahi.com/articles/ASL9444FXL94UBQU00C.html

怪我防止やマナーとしてシャツをインするように指導しているケースもあると思いますが、猛暑の中での大会などでは熱中症対策の一環としてシャツアウトを許可するなど、柔軟な対応が必要になるのではないかと思います。そのためにも、選手達は見た目で判断されない行動を心掛けたり、保護者もまた見た目だけで判断しない姿勢を持てるといいのかと思います。

熱中症対策と言うと、水分補給や体を冷やす方法に注目しがちですが、こういった身に付ける物にも意識を向けてみてくださいね。

WRITER PROFILE

山村麻衣子
山村麻衣子

シングルマザーとして3人の子育てをしながら、救命センターで看護師として働き、スポーツナースとしても活動しています。末っ子は高校サッカーで全国を目指し奮闘中です。万が一が起きている現場にいるからこそ、スポーツの現場でも安全や予防の必要性を感じているので、コラムではメディカル目線のサポート情報などを中心にお届けしていきます。