「コントロール領域」に集中して、パフォーマンスアップ!
元プロサッカー選手で現在はメンタルトレーナーとして活動する山下訓広さんによる連載第7回目。
今回のテーマは「コントロール領域」を理解すること。サッカー以外のことが気になって、プレーに集中できない…!そんな時に必要な考え方とは?
評価や結果が気になって、プレーに集中できない!
以前サポートしたお子さんに、「練習のときはうまくプレーできるが、親が見に来ているとうまくプレーできない」という悩みを持っている子がいました。いつも通りプレーしたいのに、親がいると気になってしまうとのこと。話を聞いていると、どうやら親御さんにいいところを見せたいという気持ちがあるようでした。
このように、サッカー以外のことが気になってしまい、プレーに集中できずパフォーマンスが落ちてしまう、ということは少なくないと思います。この子の場合は、親からの評価が気になっていましたが、これが監督からの評価という場合もあるでしょう。周囲に「いいところを見せたい」という気持ちは多かれ少なかれ大多数の子どもが持っているでしょうが、その気持ちが強ければ強いほど、相手の様子が気になってしまい、集中力が散漫してしまうものです。
また、他人からの評価以外にも、結果が気になって集中できないということもあります。例えば、セレクションに合格できるか、この試合で点を取れるか、などなど…。現役時代の私もこちらのタイプで、「今日の試合勝てるな?」「いいパフォーマンスがしたいな…」と試合の最中から結果にばかり意識がいってしまい、プレーの質が落ちてしまうということがしばしばありました。
他人からの評価や結果、その他にも環境が変わるとパフォーマンスが落ちてしまう、というケースもありますよね。いずれにしても、このような集中できずにパフォーマンスが落ちてしまう状況になった時、どのような対策ができるでしょうか? それにはまず、集中するためには何に意識を向けるべきなのかを理解する必要があります。
自分でコントロールできるもの、できないもの
まず、自分がコントロールできるもの、できないものを考えてみましょう。
最初に、「自分ではコントロールできないもの」です。先ほどの話にも出てきた他人からの評価、これは自分でコントロールできるものでしょうか? 100%を出し切って、自分では良いプレーができたと思っていても、それが必ずしも評価されるとは限りませんよね。結果に対しても同じことが言えます。良いプレーが出来ていても、試合に負けてしまうことだってあるでしょう。つまり、人からの評価や結果は、自分自身でコントロールできるものではないということです。
また、感情も出来事に対して自然に湧き出てくるものですから、同じようにコントロールすることはできません。緊張や不安は、いくら無くなれ!と念じても、消えることはないのです。
それでは、「自分でコントロールできるもの」とは何なのでしょうか? それは、自分の「行動」「思考」「言動」、この3つに集約されます。自分がコントロールできるもの、自分のコントロール領域を理解してプレーすることができれば、集中力は格段に上がっていきます。
自分がやるべき行動を整理して、意識を集中させよう!
実際に集中したいシチュエーションを控えているときにおすすめの対策は、本番前に自分がやるべき行動をまとめておくことです。
例えば試合の前であれば、今日の試合で何をするべきか、自分ができる行動は何かを整理し、試合中はそれらに意識を向けるようにしてみてください。自分のするべき行動が整理できているので、意識を向けるところが明確になり、集中力を高めることができるはずです。
それでも結果や評価が試合中に気になることがあるかもしれませんが、そんな時も自分が整理した行動をフォーカスポイントとして持っておければ、意識を再び自分の行動に向けやすくなります。集中するということは、自分がコントロールできるものだけに意識を向ける、ということなのです。
このように、自分がコントロールできるものにのみ意識を置けるようになれば、パフォーマンスの質を上げることができます。お子さんにアドバイスする際にも、自分自身でコントロールが効く「行動」に対する声がけを心がけてみてください。
「緊張し過ぎだよ」「リラックスして」といった感情に対する声がけや、「点が取れるといいね」といった結果に対する声がけよりも、その中で起きている行動に対して声がけができれば、お子さんの意識もそちらに向かっていくはずです。
コントロールできないものを評価するのではなく、コントロールできるお子さん自身の行動に対しての声がけはパフォーマンスアップに繋がります。お子さんの成長のスピードを早める、本番に強くなる感覚を身につけるために、参考にしていただければと思います。