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「小6と中3が一緒に試合?! ユニークな育成方法“Bio-Banding”」イギリスサッカー便り

みなさん、こんにちは!
小学校高学年から中学生年代くらいまでは、身体の大きさ、成長度合いに個人差が出やすい時期ですよね。我が家の長男は昔から大きい方で、小学校卒業すぐくらいで声変わりもして身長もぐんぐん伸びていきました。一方、次男は気がついたらどんどん背の順も前の方になっていき、中学2年生の現在も声変わりもまだで成長段階の途中という感じです。イングランド1、2年目のシーズンは、1学年上のカテゴリーでやっていたこともあり、もともとの体格差プラス1学年下ということで、それはもう大人と子どもか?という場面に何度も出くわしました。

 
ひときわ小さいのが次男。体格差は仕方ないものだと思ってました。

イングランドでのサカママも3年目になりますが、成長期の子どもたちに対するとてもユニークで画期的な育成方法に出会いましたので、今月は実際に経験したその取り組みを少しご紹介させていただきたいと思います。

ユニークで画期的なBio-Bandingとは?

今シーズン次男が所属するチームでは、今年に入ってから2月中旬までの6週間、“Bio-Banding”と呼ばれる取り組みを行っています。これは、U11からU15までの選手を、学年ごとのカテゴリー分けではなく、Bio-Blockと呼ばれる成長度合いに応じたグループに分けて活動するものです。つまり、実際の年代順の年齢ではなく、身体的成長度合いに応じてグループ分けをするのです。

やはり成長のスピードには個人差があり、同じ学年であっても人より成長が早い早熟の選手もいれば、ゆっくり成長する遅咲きの選手もいるものです。Bio-Bandingは、そんな身体的な成長スピードの差を軽減する取り組みです。この時期のサッカー選手にとっては成長スピードの個人差は仕方ないもので、あって当たり前だと思っていたので、この育成方法を知ってとてもおもしろいと感じました。

 

どのようにグループ分けされるの?

身体的成長度合いでのグループ分けといっても、そのグループにいる選手たちがみんな同じくらいの身長というわけではありません。なぜなら、各選手の大人になったときの最終身長は異なるからです。このグループ分けに用いられているのが、“Predicted Adult Height(%PAH)、パーセント予想成人身長”です。

詳しい計算方法はわからないのですが、現在の身長体重、両親の身長などをもとに、その選手が今何パーセント成長しているか(つまり成人になったときの身長を100%として今その子の身長が何%くらいにあるのか)が算出されます。そして、U11からU15の5カテゴリーを、A.84%未満、B.84-87%、C.87-90%、D.90-94%、E.95%以上の5グループに分け、この6週間は、U11-15ではなくA-Eのグループで活動しています。

U14の次男は、%PAHが90%ちょっとだったので、Dグループに属していますが、そのDグループにはU12から15までの選手がいます。つまり、U12と15の選手が一緒にトレーニングや試合をするということです。日本で言えば小6の選手と中3の選手が一緒に活動するということになります。次男にとっては半分くらい自分より年下の選手なのですが、「ほとんどオレより背が高かった……」と言っていました(苦笑)。
この期間は、週末の試合も同じBio-Bandingを取り入れているチームと対戦します。先日対戦したチームも同じようにU12からU15までの選手がいたようです。

Bio-Bandingのメリット

成長度合いに応じたグループ分けをする最大のメリットとして、身体的な差が軽減されるということがあると思います。早熟の選手は、普段同じカテゴリーの選手と比べると身体的・体力的に優位になるので、小柄な選手より強いシュートが打てたり、身体が強かったりすることがあります。ただ、その優位性に頼りすぎていると、後々周りの成長が追いついた場合、伸び悩んだりする可能性もでてきます。なので、身体的に競った相手と一緒にやることで、足元の技術だったり戦術的な理解などの必要性を感じることができるのだと思います。

逆に成長がゆっくりの選手は、普段自分より体格もスピードも上回る選手たちの中でプレーしているので、フィジカルな部分でどうしても不利だったり、怪我のリスクも出てきます。実際、次男も何度か怪我をしてしまったこともありました。ただ、小さい選手は小さいなりに戦う方法を考えるので、ポジショニングであったり戦術眼であったり武器を身につけますし、このBio-Bandingでは身体的、体力的な優位劣位がないので、よりその武器を発揮できることもあると思います。

 

Bio-Bandingを実際にやってみた感想は?

何度かBio-Banding中の試合を観戦しましたが、正直誰がU12で誰がU15かはぱっと見ただけではわかりませんでした。でも要所要所でとても活躍している選手がいて、後で聞くとやはりU15の選手でした。体格差は全くなく、むしろその中でも小柄な選手なのですが、精神的には成熟していますし、技術や戦術的な理解度の部分でもやはり年代が上なだけあるなというのが感想でした。次男も同じような感想を持ったようです。

次男自身は、やはり限られた6週間という期間しかないので、なかなか普段一緒にやらない選手たちとの連携や呼吸みたいなものは難しいと感じる部分はあったようですが、体格差で勝てないということが減った分、より自分の強みを活かせる感覚はあったとのことです。ただ、体格差がないからこそ感じたこともあり、普段ならハンデだったことも言い訳できなくなるので、逆に自分の今後の課題も見つかったと言っていました。またひとつ新しい経験ができたと思いますし、これがBio-Bandingのいい点かなと感じました。

とってもユニークなこの取り組みも期間限定なので、今月下旬からはまた普段の年齢別のカテゴリーに戻ります。ぜひこの経験を、シーズン後半にも生かしてほしいなと思っています。

WRITER PROFILE

クリストファーズ佳世
クリストファーズ佳世

イギリス在住、3兄弟(16歳、14歳、11歳)を育てる現役サカママ。 神戸市在住時は、地元の強豪クラブチームで6年間サカママ生活を満喫。2019年3月にイギリス移住後は、サッカーの本場・イングランドでシーズン1年目の新米サカママとして生活をスタート。 日本とイギリスのサッカー事情の違いなどを、サカママならではの目線で伝えていきます。