指導者の言霊「谷口哲朗 帝京長岡高等学校サッカー部 総監督」
ジュニアユースチームを設立し、中高を一体化して指導
帝京長岡高等学校サッカー部の監督に就任して25年。6年目の時に、長岡ジュニアユースフットボールクラブ(長岡JYFC)を設立し、中学・高校の6年間で指導する体制をつくりました。というのも、中学から高校にあがる時、とくに中体連の選手は、夏頃に活動が終わり、少しゆるい時間が続くものの、半年後には急に強度の上がるトレーニングが始まります。そのため、高校での3年間、ケガを抱えながらプレーしなければならない選手がでてきてしまう。雪国で冬のトレーニングはままならないですが、いい形で育成年代を過ごしてもらいたいという想いがあり、ジュニアユースチームをつくりました。その後、長岡JYFCの監督がU-12、U-6のカテゴリーを立ち上げ、今は幼・小・中・高校生年代を一貫指導できる環境が整っています。
高校生の選手には、高校教育の一環でもあるため、ある程度厳しい指導を行っています。挨拶や服装のことはもちろん、練習時間も長く、寮生活の面も厳しくしています。練習中の雰囲気、スピードも要求し、移動が遅いと喝が入るようなピリピリ感もあるかもしれないですね。けれど、中学生の選手にはそこまで強度の高いものを要求することはありません。ただ、高校生の選手と同じグラウンドでトレーニングをしていることで、高校生になったら、どういうことが求められるのかというのを自然に感じていると思いますし、ある程度覚悟をして(高校に)来てくれています。サッカーにおいては、中高で求めることの共通点は多いですし、指導者が共通してみている部分もあるので、高校に上がった時に、より一層、スピードや強さを求められても、飲み込みが早く、即効性もあると感じています。
指導するうえでは、絶対に最後の武器となる人間らしさや個性を拾いあげるようにしています。高校生がゆえ、時に間違った方に行ってしまいそうなこともあります。そんな時は「帰って頭を冷やせ」ということもありますが、それは気持ちを入れ替えて出てきなさいという想いを込めての突き放しです。その後、自分の意思でグラウンドに来る選手は、まだサッカーをやりたいという、消えそうではあるけれど前向きな気持ちを持っているわけです。だからこそ、その気持ちを引き上げて、次に繋げることがこの年代にとっては大事だと思っています。
選手たちに昔から言っているのは、「男前になってほしい」ということ。サッカーは道具であって目的ではないので、サッカーを通して、きちんとした大人になるという意味も含めて、かっこいい男になってほしいなと。身だしなみ一つ気にかけられない選手はプレーもかっこよくないですからね。高校を卒業する頃には、そんな男に近づいていてほしいなと思います。
納得がいくまで続けられる環境をつくってあげてほしい
サッカーをやりたいと思う子に、思い切りやらせてあげることが何よりも大事だと思っています。例えば親御さんにとって、家の中でボールを蹴られるのは嫌なことですよね。ならば柔らかいボールを用意したり、ここならボールを蹴ってもいいという場所を作ってあげてほしいのです。子どもがサッカーをしたいと思った瞬間に、その環境を与えてあげることが大切だと思います。子どもたちは、とくに平日、暗くなった中で練習をすることが多いものです。でも、成長のためには太陽を浴びることが大切だと思うので、宿題をやってからではなくて、できるだけ暗くなる前に運動をさせてあげてほしいですね。
私自身の人生の中で一番学んだのは、やり続けることの大切さです。続けてきたものを辞めるのはいつでもできますし、逆を言えば、辞めなければいけない時がくるのがスポーツかもしれません。ですので、子どもたちが思い切り、納得がいくまでサッカーができる環境をつくってあげることが、親の使命だと思うのです。報われない努力はないので、子どもたちに、夢が叶うまで続けることの大切さを伝えてあげてほしいですね。