【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】大人の「当たり前」が子どもの成長を妨げる
サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。少しずつ寒さを感じる季節となってきました。
今年度の公式戦が終わりに近付いてきて、来年度のことに気持ちが向いてきているご家庭も少なくないでしょう。そこで今回は、更なる子ども達の成長のために、少しだけ考え方を変えてアプローチをしてみよう!という話をさせていただきます。
「当たり前」は相手や状況によって違うもの
「なんで出来ないの?そんなこと出来て当たり前でしょ?」
サッカーの現場でも、ご家庭でも、つい子どもに向かって言ってしまいそうなフレーズです。しかし、その『当たり前』は誰にとっての『当たり前』なのでしょうか? これはもちろん『大人の当たり前』なのだと思います。大人にとっては出来て当たり前のことだとしても、経験値の少ない子ども達にとっては、それがまだ『当たり前』にはなっていないということを認識しておかなければなりません。
そもそも各ご家庭、各サッカークラブ、更にはクラブ内の指導者の中でも『当たり前』は少しずつ違っているものです。何気なく使ってしまう『当たり前』という言葉ですが、それくらいあやふやなものなのです。ですから、子ども達の成長に繋げるために『当たり前』という言葉を使うなら、周囲の大人が子どもの現在の状況や段階を理解し、その子にとっての『当たり前』をよく考えた上でアプローチをする必要があると思います。
サッカーの現場での「当たり前」を考えてみる
サッカーの現場においての『当たり前』を考えてみましょう。私自身がサッカーの現場の中で気になるのは、まだまだ技術的に未成熟なジュニア年代であっても、スピードや運動量を求めがちなことです。ジュニア年代であれば、それだけでも試合に勝ててしまったり、選手として目立つことができるからなのかもしれません。
もちろんスピードも運動量も大切な要素ではあります。しかし、ジュニア年代からそれだけに頼ってしまうと、身に付けなければならない技術が見過ごされたまま成長することになってしまいます。この状態がジュニア年代の『当たり前』の環境になってしまうと、失敗や成功を繰り返すことが出来る年代であるにもかかわらず、必要な技術が身に付かないまま成長してしまうという見方もできます。
出来ること、得意なことを伸ばしていく視点を持ちながらも、その子の状況や段階を見極めた働き掛けが必要なのではないでしょうか。段階的な技術の習得を目指しながら、徐々にそのスピードを上げていくこと。個々への働き掛けは違って良いと思います。ですから、例えば高校生であっても、その選手の特徴を更に活かすために基本に立ち返ることも時には必要です。
「当たり前」にするためには日々の積み重ねが必要
では、まだ出来ないことを『当たり前』に出来るようになるためには、どうしたらいいのでしょうか?
ここで思い出してみてほしいのですが、ご家庭で子どもに歯磨きをする習慣を付けると思います。どのご家庭でも子ども達の「歯磨き嫌だ~!」に苦労されたかと思います(笑)。
最初は、お父さん、お母さんが手伝いながら歯磨きをスタートしましたよね。それが当たり前になるように毎日、毎日「嫌だ~!」に付き合う日々だったかと思います。そこから少しずつ一緒に歯磨きをするのではなく、「歯磨きしなさい!」と口頭で伝えるようになり、そしていつしか言われなくても無意識に歯磨きをするようになってくれたはずです。
サッカーでも同じようなところがあると思うのです。最初は出来なくても、少しずつ段階を上げて取り組むことで技術も身に付いていきます。以前、リフティングの練習に風船を利用すると効果的だというお話をさせていただきましたが、それもその一つですね。
意識して行うことを無意識で行えるようになるまで繰り返す。その際にはその子の状況や段階を考慮してアプローチを変えてみること。その繰り返しの中で習慣化されていくことがあると思います。
大人が「出来て当たり前でしょ?」と思うことでも、子どもにとっては『当たり前』ではないことはたくさんあります。『出来なくて当たり前』という視点を持つことも必要だと思うのです。まだ出来ていないことを『当たり前』に、つまり無意識で行う習慣にするためには、日々の積み重ねが必要です。そして、少しずつ出来ることを増やしていくという感覚で子ども達と接してみてください。