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プロサッカー選手の腸内環境と食事とは?【鈴木啓太の腸内環境を整えよう vol.15】

腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さんによるコラム。最終回となるvol.15では、鈴木さんのジュニアの頃やプロ時代の食生活にまつわる話、そして気になるプロサッカー選手の腸内環境や食事についてお届けします。鈴木さんからサカママ&子どもたちへのメッセージもあるので、最後まで一読を!

 

小学生の頃、よく食べていたのは具沢山のスープ

小学生の頃を思い返してみると、本当にいろいろな食材を食べていたと思います。母も手を抜きたくなる時はあったと思うんですけど、すごくしっかり食事を作ってくれていましたね。定番は、具沢山のスープ。味噌汁やコンソメスープ、ミネストローネ…、朝食はもちろん、母が食事を作るのが面倒くさいって時には、絶対スープでした。でもそれは、意外と理にかなっていて、おなかもあったまるし、いろいろな野菜もとれる。しかも調理時間もかからないですよね。だから、サカママのみなさんにも、具沢山のスープはオススメです。

母は調理師の資格を持っていたこともあって、「ビタミンを取っておくと、風邪をひきにくいよ」「豚肉は疲労回復にもいいから」など、よく説明しながら料理を出してくれていました。「体は食事からできる!」「バランスよく食べなさい」とも毎回言われていたので、耳に残っていて、食事をする時になんとなく思い出したりもしてましたね。

僕は、体が小さくて、あたり負けしたくないという思いがずっとあったので、食事のことは常に気にかけていました。もし、中学、高校時代、食事のことを意識していなかったら、プロにはなれていなかったと思っています。

プロになってからは、冷たいものを極力控えて、バランスよく食べることをとにかく意識していました。当時は、腸内環境のことを考えてそうしていたわけではないのですが、結果、リンクしていたんだと思いますね。

腸内環境とパフォーマンスの関係

日々、研究をしていて思うのは、食事への意識が高い選手とそうでない選手がいるということです。また、課題がある選手は、腸内細菌の多様性が低い場合も多いですね。

とはいえ「腸内細菌の多様性が上がればパフォーマンスがアップする」と直結しているわけではないと思っています。パフォーマンスは、1日1日、いいトレーニングができる、その積み重ねで上がっていくものです。いいトレーニングをすると疲れたり、その回復に時間がかかることもありますよね。
でも、腸内環境が整っていれば、栄養素を吸収する土台がしっかりできているので、疲れにくかったり、体の調子がよかったり、結果、日々の中でいいトレーニングができるんですよね。

これはアスリートだけではなくて、一般の方も同じことだと思います。腸内環境がよくなれば、少しずつ体が変化して、よりよい生活につながっていくものです。
でも、腸活をメインに考えるのではなく、あくまでもバランスのいい食事に、ヨーグルトなど発酵食品をかけ合わせてくれたらなと思います。大事なのは、体がよりいい方向に変化することですから。

トップアスリートの腸内環境

ここからはアスリートの腸内環境について解説していきます。
サッカー選手をはじめ、トップアスリートの腸内環境は多様性が高く、酪酸菌(免疫機能を調整する菌)を一般の人の2倍以上保有していることがわかっているのです。

また、アスリートの腸内環境をみると、競技により太りやすさの傾向が異なり、ラグビー選手や水泳選手は、比較的太りやすいことがわかっています。それは、食生活はもちろん、運動の違いも影響している可能性が高いといえそうです。

 
一般に2未満:太りにくい、2~5:ふつう、5以上:太りやすい(AuB独自調査より)

とある研究で長距離陸上選手(2014青学駅伝部)の腸内細菌を検査したところ、順位が早かった選手には、ある腸内細菌(Bacteroidesuniformis)が多いことがわかったんです。この菌をマウスに投与すると、水泳の持久力が向上したことなどから、研究途中ではあるのですが、腸内細菌と持久力も関係していることがわかっています。

また、国際スポーツ栄養学会から、腸内細菌が筋肉形成に関与していると報告もされています。

そうしたことから、腸内環境に注目しているアスリートも増えてきていますね。

プロサッカー選手の食事とは?

先ほど述べたように、トップアスリートと一般の方の腸内環境に違いはあるのですが、それは、トップアスリートが一般の方と全く違う食事をしているわけではありません。トップで活躍している選手は、自分に合った食事量で、主食・主菜・副菜・果物・乳製品が揃ったバランスのよい食事を日々とっているのです。

 

上記の写真は、活躍するサッカー選手の運動後の食事例です。栄養バランスが整った食事ですし、品数(食品数)も多く、発酵食品や食物繊維もとれていることから、腸内細菌の多様性の向上にもつながるといえるのです。

また、プロのサッカー選手は、トレーニングの時間に合わせて食事や補食の時間を組み立てています。運動をする時は食事の内容はもちろん、タイミングも大事になってくるからです。下記は、あるプロサッカー選手の食事のタイミングを記したものです。

 

トレーニングの時間に合わせて、食事や補食をとる時間を変えていることがわかりますよね。お子さんの試合の時や土日の練習などに、参考にしていただければと思います。

毎日、バランスのよい食事を意識し続けることが、トップアスリートに近づく一歩かもしれませんね。

腸内環境のことは、競技力だけでなく、生きていくうえで大事なこと

 

一番大切なことは、毎日を楽しく過ごすことだと思っています。そのための大きな手段として、サッカーがあるんじゃないかなと。サッカーは、やっている人はもちろん、観ている人、応援している人や支える人も、いろいろなことを学べると思います。子どもたちも親御さんも、サッカーを通して楽しんでほしいですし、どうせ楽しむなら、上を目指してほしいなと思いますね。

プロ選手としてサッカーをやる期間が10年としたら、1日3回食事をするとして、10年間で約1万食ですよね。その1万回の食事を考えて取り組んだ人とそうでない人とでは、やはり差はすごくでるものです。ですので、若いうちから食事の知識をつけて取り組んでいただくことで、何もやってこなかった人よりは大きな差がつけられると思いますし、成長や活躍の度合も変わってくるんじゃないかなと。

私たちが今やっている腸内環境のことは、サッカーの競技力だけではなくて、生きていく、健康のために大事なことです。そんなことも意識しながら、保護者の方には、子どもたちを観察してほしいなと思います。

子どもたちは一生懸命楽しむことが恩返しになるので、親からサポートを受けていることに感謝して、サッカーを頑張ってほしいと思います。

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