集中力は腸に関係する!?ベストオブ集中力メニューとは?―前編【鈴木啓太の腸内環境を整えよう vol.1】
腸内細菌に関わる研究を続け、腸内環境からアスリートをサポートしているサッカー元日本代表・鈴木啓太さん。このコラムでは、鈴木さんに教えていたただいた、知っておきたい腸内環境にまつわる情報をお届けします。第1回(前編)は、腸内環境と集中力が関係する、その理由をご紹介。
腸と脳が関係している?
緊張すると便意をもよおしたり、便秘になると気分が沈んだりすることってありますよね。
お腹の調子と感情は深く関わっていると昔から言われていて、「腹が立つ」「腹の虫の居所が悪い」など、お腹と感情に関する言葉もたくさんあるほどです。
じつは、腸には多くの神経系が集まり、密接に影響を及ぼし合うことから「腸脳相関」という言葉があります。また、人間の身体の中で、いろいろな器官に指令を出す脳が一番重要だと思われがちですが、脳からの指示がなくても働く神経系の機能もあることから「腸は第二の脳」とも呼ばれ、重要な役割を担っているのです。
ちなみに、ミミズに脳はないのですが、腸はあるんです。だから、生物学的には脳より腸が主役であり、「脳が腸のおまけ」ということになるのかもしれませんね。
集中力に関係する菌がある!
腸と集中力の関係はというと、ある論文では、一つの物事に長く取り組むことができる人は特徴的な腸内細菌を持っていることが発表されています。我々は、それらを総称して「集中力持続菌」と呼んでいるんです。
(我々の)研究の中で、一般の方と集中力を必要とするある競技の選手の腸内細菌を比較したところ、その選手は集中力持続菌のいくつかが一般の方より多く、中には133倍も多く検出されたという結果も出ているんです。ただ、長く集中を要する競技をしているから、その菌が多かったのか、もしくは集中力持続菌をたくさん持っているから集中力が持続できているのかは研究途中なのですが、いずれにせよ、腸内細菌と集中力は多いに関係しているのではないかと考えています。
幼少期に腸内細菌のベースがつくられる
下記のグラフは、メンタルと腸内細菌の関係を調べたデータです。
このグラフをみると大事な大会の直前にほとんどの選手で腸内細菌が減少しているのがわかりますよね。
緊張、ストレス(プレッシャー)、集中など、どれが要因かはまだ追跡調査中ですが、メンタルと腸内細菌も密接に関係していると言えるのです。
また、腸内細菌の多様性(種類や数)が低下してしまうと、精神的な症状がおこりやすくなるという研究報告はいくつもあり、我々の研究でも、腸内細菌の多様性の低い選手ほど、いろいろな課題を抱えているのがわかっています。
これらのことから、集中力を養い、メンタルを強くするためにも、日頃から腸内細菌の多様性(種類や数)を高めておくことが大切なのです。
とくに3歳から5歳は、腸内細菌のベースが決まるとも言われる大事な時期。この時期に、獲得しなければいけない腸内細菌を得ることができないと、将来的にアレルギーや肥満などのリスクが上がってしまうことも。ママたちは、何かと「除菌」してしまいがちですが、幼少期は菌に触れさせることも大事なのです。
また、乳児の頃から優勢となるビフィズス菌の獲得量もポイントになるので、ビフィズス菌を積極的にとるように意識するといいでしょう。
後編では、集中力を高める「ベストオブ集中力メニュー」について解説します。
※参考文献:腸内細菌と発達障害
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpdd/22/1/22_2/_pdf/-char/en