大学サッカー受験秘話 ~サッカー・勉強両立の極意~(早稲田大学/鈴木怜選手)
「大学でサッカーを続ける」にはどんな手段と方法があるのだろうか? 見事合格を勝ち取り、大学サッカーの第一線で活躍する先輩たちに話を聞いた。
サッカーの超名門であり、国内屈指の難関私大
今季のJ1を独走する川崎フロンターレの三笘薫(筑波大学卒)、旗手怜央(順天堂大学卒)の大卒ルーキーコンビの獅子奮迅の活躍により、注目が集まっている「大学サッカー」。高校卒業時にはプロには届かなった選手が、大学での4年間でピッチ内外で人間性を育み、プロで即戦力で活躍できるレベルに成長する。そんな選手の増加により、全国の大学リーグ戦はスカウトの熱視線を浴びている。
今回紹介する川野秀悟選手と鈴木怜選手が所属する早稲田大学ア式蹴球部は、インカレ4連覇を2度、関東大学サッカーリーグ1部で最多優勝27回を誇る超名門。そんなプロクラブも熱視線を注ぐサッカー部で汗を流している両選手は、スポーツ推薦ではなく、一般受験を経て早稲田大学スポーツ科学部に合格した経歴を持っている。
高校3年間で全国レベルの試合を経験しながらも、与えられた時間の中で文武両道を体現してきた2人が、合格を勝ち得た要因は何だったのか?
各々のアプローチで未来を掴み取った「受験秘話」をここに紹介する。
1998年9月26日生まれ、東京都出身
早稲田大学スポーツ科学部4年
駒澤大学高校出身
入試形態:センター試験+競技歴方式
高2で選手権出場。サッカーでもっと上のレベルに
中学は清瀬市にあるSTFCでプレーして、駒澤大学高校サッカー部に入りました。1年生から授業は真面目に受けていましたが、高3の夏まではサッカー中心の生活を送っていました。部員が260人近くいる大所帯なので、練習時間がチームごとに区切られていました。Aチームは18時に練習開始で、終わるのが20時くらいなので、帰宅時間は21時をすぎていて、もうクタクタでした。僕は受験コースの理系のクラスで学んでいて、いずれは薬学部のある大学の進学を考えていました。でも、2年生でレギュラーを勝ち取り、第94回全国高校サッカー選手権大会に出場できたことが自信になり、「サッカーでもっと上のレベルを目指したい!」と思うようになったんです。
スポーツ推薦が叶わず高3の夏に挫折
スポーツ推薦での大学進学を考えていて、高3の夏は大学の練習会にも行きました。「合格できそう」という声も聞いていたのですが、夏休みの終わり頃に「推薦での入学は厳しい」という結果が届き…ショックでしたね。駒沢大学高校は当時、1学年で12クラスあって、10クラスが進学コースで駒沢大学にエスカレーター方式で上がります。残りが受験クラスで指定校推薦や一般受験等で他大学を目指すコースになり、僕は受験コースの真ん中あたりの位置にいました。高3の夏も終わり、特に受験勉強もしていない状態だったので、他大学への進学は正直諦めていたんです。
限られた時間で、サッカー選手権と大学受験を目指す
夏休み明けに先生との面談があり、「まだ間に合うぞ!」と言っていただいたんです。完全に受験を諦めていましたが、信頼する先生が可能性を示してくださったことで、僕の中で何かが変わりました。すべてを考え直し、色々と受験について調べた結果、一週間後には「受験しよう」と決めました。サッカー推薦で届かなった想いをそこにぶつけて、「見返してやろう!」と再び心の火が点火したんです。そこからは完全に一日の勉強時間を改めるようにし、1時間早く学校に行き、その時間を勉強することにしたんです。授業が終わった後は、サッカー部の練習開始までのわずかな時間も勉強するようにし、21時すぎの帰宅後は、寝るまで勉強を続けました。ただ、寝不足はサッカーのコンディショニングに影響するので、睡眠時間だけはしっかりとるようにしましたね。
予備校には行かずに限られた時間を有効活用
受験の教材として参考書は先生に何を勉強すれば相談していましたが、特に塾には行っていませでした。もちろん、サッカーで選手権出場を目指していたので、週末の試合・練習時間を考えると塾や予備校は現実的ではありませんでした。それまで集中して勉強もしていなかったので、模試を受けてもMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)はどれもE判定。でも生活を改めてからは短期間で右肩上がりに成績が伸びていって、B判定まで出るようになったんです。限られた時間を勉強に有効活用したことで、短期間で結果が出たことは嬉しかったですね。そこは大きな自信とモチベーションアップにつながりました。
英語は基礎からやり直し大幅に成績アップ
もともと数学が得意で、英語と国語は苦手でした。英語の長文はまったく読めなかったので、面談で相談してくれた英語の先生からアドバイスをいただき、しっかり精読するクセをつけるようになりました。それこそ文法の5文型の基礎からやり直し、英単語帳も毎日欠かさず覚えるようにしました。そうしたら、長文も読めるようになっていき、成績もグングン伸びるようになりました。
最後の選手権でベスト8に進出。センター試験までわずか10日
高校3年での第95回全国高校サッカー選手権大会ではベスト8まで進出しましたが、準々決勝で佐野日大高校に1-2で敗退。さすがにその日の1月5日はショックで勉強できませんでしたが、翌日からは切り替えて勉強するようにしました。センター試験が14日、15日に控えていたので、猶予はたったの10日。そこれそ、食事と睡眠の時間以外はすべて勉強していたと思います。センター試験対策問題集と、過去問を何度も何度も徹底的にやりました。
英語が伸びたことで早稲田大学に合格
センター試験では一番成績が伸びた英語で200点満点中190点を取ることができました。数学、国語のトータルで8割ほど。早稲田大学スポーツ科学部スポーツ科のセンター利用は、英語200点、国語100点、数学100点、競技歴が200点と、1/3が英語だったので、そこは僕にとって有利になったと思っています。他大学の受験も併行して進めていた2月8日、早稲田大学から合格の報が届いたときは嬉しかったですね。諦めないでよかったなって…。
サッカーと勉強が互いに作用する好循環
高3の夏から時間は限られていたけど、サッカーがあったから僕は勉強も頑張れたと思っています。サッカーのエネルギーをそのまま勉強に使い、充実した気持ちがサッカーにも働く好循環となっていきました。勉強、サッカーの両方のモチベーションを、ずっと高い位置で保てることができたことが合格の要因だったと思います。
早稲田大学で学んだ「自分で考えて発信するチカラ」
早稲田大学ア式蹴球部での4年間で、「自分で考えて発信するチカラ」が身に着いたと思っています。このチームに所属して感じるのは、誰かが発信したことに対して、周囲が「もっとこうしたらいい」と、意見を出し合う雰囲気があるんです。外池大亮監督、サッカーはあくまで社会の中の一部分であることを気付かせてくれて、企業やプロクラブの方の講習会などの機会を設けていただき、視点を広げてくれました。卒業後はコンサルティング業界で働くことが決まっていますが、この4年間で養ったことを社会に生かせればと思っています。
成長する意志さえあれば挑戦する価値がある
「サッカーが上手いから、大学でサッカーをする」ということではないと思うんです。今は上手くなくてもサッカーが好きで、大学で成長していずれプロになるという強い気持ちがあれば、大学サッカーに挑戦する価値があると思います。迷うことが沢山あると思うけど、未来を信じてチャレンジを続けてほしいと思います。
- サッカーのモチベーションをそのまま勉強へ。
- 限られた時間を無駄にせず、すべて勉強の時間へ。
- 配点の多い苦手科目を克服し、一番の得意科目に。
- 高校3年の秋からでも諦めなかったこと。
6:00 | 起床 |
7:45 | 登校・勉強 |
8:45 | 授業開始 |
12:00 | 昼食 |
16:00 | 授業終了・勉強 |
18:00 | サッカー |
21:00 | 帰宅・夕食 |
21:30 | 勉強 |
24:30 | 就寝 |
(3年次の秋から)
写真提供/早稲田大学ア式蹴球部