【チャンスをつかむ!ケガをしないカラダづくり】運動について知っておきたいこと
プロサッカー選手としてスペイン、日本でプレーし、現在はパーソナルトレーナーとして活動している島村麗乃(しまむられいの)さんに「ケガをしないためのカラダ作り」についてお伺いする本シリーズ。
今回は、「ケガをしないカラダ作りのための運動」について。
小さい頃から筋肉に対するトレーニングをしてしまうと、カラダが重くなってしまったり、身長が止まってしまったりするイメージを持っていませんか?
実はそのような科学的根拠はなく、海外では積極的に筋力トレーニングを行っています。
目的に対する適切なトレーニングをすることで、ケガをしにくいカラダを作り、有利にサッカー選手生活を送ることができます。
運動神経はゴールデンエイジまでに決まる
ケガをしないためのカラダ作りにはピッチ外の準備が必要ですが、その中でも前回は食事に関してお話ししました。今回は運動(トレーニング)に関してお話ししていきます。
トレーニングに関して考えるときに、抑えておきたい時期があります。サカママのみなさんならご存知の方も多いと思いますが、「ゴールデンエイジ」です。
ゴールデンエイジとは5~12歳(年長~小6)までの運動能力が著しく発達する時期の事を言います。この時期に基本的運動スキルと専門動作を習得しないと、脳や神経の成長上の関係でなかなか習得が難しくなります。
下図グラフのように、神経系の成長が100%を迎えるのがだいたい12歳。そのため、12歳までに運動神経を鍛えなければいけません。
基本的運動スキルとは、厳密には幼少期(1~6歳)までに身に付けたい運動能力のことで、主に、立つ、歩く、走る、跳ぶ、蹴る、押す、引く、など、本当に単純な動作ひとつひとつを指します。
上図のグラフで「動作の習得」の曲線を見ると、基本的運動スキルが幼少期までに習得したいことが分かると思います。
これらを身に付けるには「色々な遊び」が有効的です。例えば、追いかけっこや水遊び、ボール遊び、公園のジャングルジムなどを通して身に着いていきます。
これに対し、専門動作というのは各競技に特化した動作の事です。
こちらは色々な遊びを通して身に着けるというより、その競技の特異性を持ったトレーニングをして伸ばしていくものです。
プロチームのスカウトマンは、ゴールデンエイジである程度才能を予測し、ゴールデンエイジの終わりの頃、10~12歳までには選別を始めます。
小学生のナショナルトレーニングセンター(ナショトレ=日本選抜)やその上のエリートプログラム(年代別代表の始まりのカテゴリー)などが存在するのもそのためです。
スペインでも同じようにゴールデンエイジの時期にスカウトたちは動きます。あのリオネル・メッシもそうですが、バルセロナやレアルマドリードにスカウトされた日本人の少年たちもゴールデンエイジなのを見ればその時期が重要だと分かると思います。
このようにゴールデンエイジはとても大事な時期なので、運動神経や運動能力を鍛えるためのトレーニングはやっておかなければ損です。
運動神経が良くなればゴールデンエイジを有利に進むことができ、サッカー選手としてリードすることができます。そして、思い通りにカラダが動かせるので、その分ケガもしにくくなるのです。
ただし、注意しなければいけないのは、思い通りにカラダが動かせるからと言って、筋肉の質も良いというわけではない、ということです。筋肉の質が良いということと、運動神経の高さはまた違う部分になってきます。
セットで考えよう「栄養と運動(トレーニング)」
食事と運動は絶対に切っても切れない関係です。
激しいトレーニングをして、筋肉内のエネルギー(栄養)を失うと、筋肉は次の活動に必要なエネルギーを探します。そこで食事をせずに栄養が入ってこないと、筋肉は自分の筋肉自体をエネルギーに変えてしまいます(筋肉が自分の筋肉を食べてしまうようなイメージです)。
すると筋肉はボロボロになっていき、ケガに繋がります。
筋肉が空腹のときに正しい栄養入れてあげることで筋肉の材料が摂れるのですが、それと同時にトレーニングによってしっかりと筋肉を使うことも大切です。トレーニングで筋肉を使うことで、「今以上に成長しなければいけない」と筋肉に思わせ、刺激を送る必要があるのです。
的確なトレーニングを行うことで筋肉が付く準備ができます。そして、準備ができたら食事で栄養を摂ります。そうすることで、筋肉はスポンジのように栄養を吸収し、より機能的で丈夫な強いカラダへと成長できます。
体幹や筋肉は「強くするだけ」ではケガをする
「筋肉に刺激を与えないといけないといことは、筋トレを一杯やればOK?」と思うかもしれませんが、やみくもに筋トレをすればいいというわけではありません。
体幹や筋肉に必要なのは「フレキシブルさ」です。
フレキシブルとは、しなやかで柔軟性のあること、順応性や融通の効くことを言いますが、なぜフレキシブルでないといけないのかというと、強さは硬さでもあります。強さだけでは壊れてしまうのです。ガラスのコップとシリコン素材のコップを高いところから落とした場合、どちらが壊れやすいでしょうか。答えはガラスになると思います。
サッカーは常に激しく揺れ動くスポーツです。そのためには多方面からの動きに融通の効く、しなやかでフレキシブルなカラダでなければなりません。
強さだけでは、不規則な動きに真っ向から対抗することになります。うまく力を逃がし、さらには利用することが出来なければ、大きなケガに繋がるリスクが上がってしまいます。
意識的に筋肉へのトレーニングをするメリットはたくさんあります。
幼いうちから筋肉をつけすぎるのは良くないという考え方もありますが、トレーニングをしっかり行うことは、ケガをしにくいカラダにも繋がるのです。
次回は実践編として、オススメのトレーニング方法を紹介します。お楽しみに!