メインコンテンツに移動
 

アメリカ少年サッカー記17 「子供の成長のために親ができる最大限のサポートとは?」

成長を阻むもの、促すもの

サッカーの試合において、子供のプレーの大きな障害になるのは、応援席からの指示や文句かもしれません。私も、息子が6歳くらいの時は、試合中に相手選手に押され、転んで泣き出した息子を見て、「なんて乱暴なの!」なんてことも、口から出ていました。こういった罵詈雑言は、一生懸命にプレーする子供達の自由を奪い、失敗を恐れ、プレーを萎縮させてしまう、と感じます。特に失敗を極度に恐れることは、創造性や時には勇敢さも求められるスポーツにおいて致命的です。試合中の保護者の指示や文句を禁止するチームもありますが、それでも、我が子の試合を見ていると、プロのリーグ戦を見るのと同じ感覚で、つい色々な言葉が出てしまいます。とはいえ、親というのは、自分の子供を応援したい気持ちも強いはずです。

子供をしっかり応援しつつ、かつ、静かに試合を観戦することは、はたして可能なのでしょうか?そんな問題を一気に解決する方法があります。それは試合をビデオで録画することです。

ビデオ撮影に集中すると、試合を直接目にするよりも、やや客観的に見られ、感情がコントロールしやすくなります。さらに、この大きなメリットは、子供自身も後で試合の復習ができる点です。子供の記憶はかなり曖昧で、試合の時に気になったプレーについて聞いても、良く覚えていないことがあります。そんな時は、論より証拠で、映像を見返せば、記憶が喚起され、自分のプレーや、チームの状況をより具体的に学ぶことができます。

私は、これまで息子の試合を100試合くらい撮影して、だいぶ慣れてきました。当初は、絶好のシュートシーンを目視してボールの軌道が画面から消えてしまうこともありましたが、撮影に慣れれば、そういったミスもなくなります。試合映像は、YouTubeに限定公開し、チームにシェアしているので、私もチームの活動に貢献でき、一石二鳥です。

birdview

試合撮影の心がけ

試合を撮影する上で、抑えておきたいポイントが3つほどあります。

1つ目は、撮影を前半と後半に分けて、途切れなく一気に撮影すること。小さい頃の試合映像を見返すと、スローインごとに撮影を切っていました。しかし、年齢が上がるにつれ、スローインでボールを受ける動きも確認する必要があり、さらに、試合の流れも把握したいので、後で試合を復習しやすいように連続で撮影しています。他にも連続撮影にはメリットがあり、ファイル数が1試合で前半と後半の2つで済むので、チームで映像をシェアする上で便利です。

2つ目は、なるべくズームを使わず、ボールを中心に周囲の選手の位置が把握できるようワイドに引いて撮影することです。こうすると、ビデオから反対側でプレーする選手が誰なのか判別しにくくなりますが、あくまで撮影では、試合の全体的な流れを捉えることを第一優先にしています。最近は、1試合の中でフォーメーションをいくつか試すので、キックオフ時に自分達と相手チームのフォーメーションもわかるアングルも入れようかと考えています。カメラの三脚は、フィールドのセンターラインの延長線上に置くのが理想で、そこからだと、両サイドのコーナキックもしっかり映すことができます。ただし、あまりワイドに撮影しすぎると、誰のプレーかわからなくなるので、ベストなレンズの倍率を見つけるために、試行錯誤が必要です。

そして3つ目は、高い位置からの撮影です。今使っているカメラの三脚は、長さが5mあり、どんな平坦な試合会場でも、フィールド全体を上から映すことができます。

長いポールを使うことで、モニター越しから試合を常に鳥瞰的に観戦しているので、雨の日などビデオ撮影ができない時に下から観戦すると、その情報量の少なさや、全体の見えにくさに驚きます。

もし、長いポールが手に入らない場合には、なるべく高い位置から撮影するのも代替になります。例えば、応援席のあるスタンドなら、スタンドの最上階からの撮影は同じような鳥瞰的なビューになります。上からと下からの撮影を見比べた場合、その違いに驚くと思います。高い場所からの映像は、子供達が普段フィールドから見るものとは全く異なります。フィールドでの記憶と、後から見る高い位置からの映像を重ね合わせることで、子供達の鳥瞰的な視野や空間的な理解は大きく養われるんじゃないか、と期待しています。

 

ここまで工夫して、試合を撮影し、私からの雑音を一切シャットアウトしているにも関わらず、復習の映像を見て黙ってはいられない家族が一人います。夫は、息子の色んなプレーを映像で見返して、言いたいことがたくさんあるようで、我慢できずに半分くらいは口から吐き出しています。この状況をさらにレベルアップして子供の成長の機会とするには、私たちもまだまだ精神的な修行が必要そうです。

camerapole

 

WRITER PROFILE

近本 めぐみ
近本めぐみ

日米で色々な大学、研究所を渡り歩く理系研究者。現在はアメリカ在住、在米歴と息子のサッカー歴が8年のサカママ。サカママWEBでのコラムを通して、アメリカならではのサッカー育成の面白いところ、興味深いところを発信していきます。

★外部ブログ「アメリカ発少年サッカーの育成事情」でも執筆中