アメリカ少年サッカー記16 「チーム練習を再開して大丈夫? 」
練習再開のメドがたった時の決断
長い自宅待機が終わり、「そろそろチーム練習を再開するのはどうか?」と、コーチから提案がありました。子供は、ほとんど家に籠もり2ヶ月間を過ごしました。学校ですら休校して、コロナウィルス感染の予防に努めてきたわけですが、果たしてチーム練習を再開しても大丈夫なのでしょうか?
こうしたウィルス感染への警戒心は、おそらく父親より母親の方が敏感です。買い物した商品を消毒・洗浄したり、外出先で頻繁に手を消毒するのも、女性に多かったように思えます。感染予防に真剣に取り組んでいると、いざ、チーム練習の再開のメドがたった時、どう判断したら良いのか、迷う方がいらっしゃるかもしれません。
私も判断に迷ったので、まず、住んでいる地域の感染者数、特に18歳以下の子供の感染者数の推移を調べました。チーム練再開の話題が挙がった5月上旬は、郡での感染者数は50人ほど、18歳以下の感染者は7,8名と少数でした。さらに、その数日間の新たな感染者も数家族に限定されていると発表があったので、チーム練習に参加しても、ウィルス感染の確率はとても低いのではないか、と考えました。結局、コーチから練習再開の意見を聞かれると、全員が賛成で、練習再開に漕ぎつけました。
それでも、もしかしたら不安に感じた家庭はあったかもしれません。同じ時期に、チーム練習の再開が決まった他のチームでは、子供本人が練習への参加を心配したり、高校の部活がキャンセルされているので、街クラブも練習の再開を反対する保護者の意見も聞きました。子供をチーム練習に参加させるかの判断は、家庭によって大きく分かれそうです。
さらなる問題の勃発
チーム練習が再開し、しばらくして、新シーズンにチームの移籍を検討することになり、移籍希望先のチーム練習にも合流することになりました。それまで、地元で15人弱で行っていた練習と比べ、広い地域から選手とコーチが25名ほど集まり練習を行います。地元より都市部にて、より多くの人数が一緒になって練習する場合も、安全に練習ができるのか気になりました。
そこで、簡単な見積もりしてみました。選手やコーチ一人一人が濃厚接触する人数を10人と仮定します。この人数は、子供が一緒に住む家族だけでなく、会う機会の多い親戚や友人なども考慮します。夏休みに入り学校での接触はないため、人数は少なめです。練習参加者25人全員の濃厚接触数は、25人×10人で250人になります。この中の一人でもウィルス感染すると、練習を通して感染リスクが高くなるので、この250人のうちの1人が感染する確率が、実際の感染率より高いのか考えてみました。
実際の感染率は、住む場所で大きく変わりますが、私達の住む州は人口320万人中、感染者数は1万人です。320万人分の1万人、つまり320人につき1人が感染しています。この感染確率なら、250人の濃厚接触者がいても、1人も感染しない確率です。なので、現状では、この規模での練習なら、感染リスクはまだ小さいのかな、と思いました。
この見積もりは、一人一人の濃厚接触者数で変わりますし、実際の感染者数の地域差も考慮していないので、かなり大雑把です。感染率の比較で、私は大丈夫と判断しましたが、320人と250人の数字は近いので、もしかしたらリスクは相応であると捉える人もいるかもしれません。
チーム練習で感染を防ぐ取り組み
州のユースサッカー協会は、チーム練習のための細かいガイドラインを設け、練習での感染を極力防ぐ取り組みも行っています。練習再開に向けた最初のガイドラインは厳しめで、内容の一部を紹介しますと、
* 選手とコーチを含め20人以下
* トレーニング中は、選手間の距離を3m離す
* 屋外の練習に限定
* 練習前、練習中の休憩時間、練習後にはプレーヤーとコーチは手を消毒する
* 練習へのカープール(車の相乗り)を禁止
などです。練習の人数制限を20人以下としたので、私達の州は最初からチーム練習ができましたが、州によっては、練習の人数を10人以下に絞り、最初はチーム練習を避けるプランもあるようです。その後、州政府の警戒レベルが緩和し、このガイドラインも更新されました。今は、50人まで集まることが可能で、練習試合もできるようになりました。
このようにチーム練の参加を検討し、細かなルールに沿ってチームは感染予防に取り組む一方で、人間の慣れとは恐ろしいものです。最初は、練習後の子供にすぐ手の消毒をしたり、自宅に着いたらすぐシャワーをさせていたのに、今や、練習後の車内で飲み食いも許してしまっています。私自身の感染予防がどれだけ継続できるのか、の方が、実は手強い問題なのかもしれません。
★「アメリカ発 少年サッカーの育成事情」でも執筆中