アメリカ少年サッカー記10「アメリカユースサッカーの育成システム」
師走を迎えました。一年を振り返ってみると、今年も、息子のサッカー活動が盛り沢山で、あっという間に月日が経ちました。今年は、9人制から11人制へ移行する学年だったので、チームとして新しい人数やフォーメーションに慣れるよう、カップ戦や練習試合を積極的に行いました。この1年でどれくらいの試合を行なったのか数えたところ、今年は公式のリーグ戦が24試合、カップ戦が21試合。その他に、練習試合が10試合ほどで、合計55試合。1試合は35分ハーフの70分で、こんなに多くの試合をした年は初めてです。一年間の活動で主軸になるのは、やはりリーグ戦です。今回は、このリーグ戦のシステムについてご紹介します。
ユースサッカーは何部まである?
私達が住むユタ州のU13は、公式リーグ戦が全部で9部までのカテゴリーに分かれています。ステイトリーグと呼ばれるユタ州全域のリーグは5部あり、その下に、州をさらに3つの地域に分けて各地域で行われるリーグ戦が4部あります。ステイトリーグは、各カテゴリーに10チームだけが参加できます。上位2部のリーグに関しては、ホーム&アウェイ形式を採用しており、9チームと総当たりでホーム戦とアウェイ戦の両方を行い、一年で18試合をこなします。ステイトリーグに参加するチームはトラベルチームとも呼ばれ、ユタ州全域の強豪チームが参戦するので、対戦相手によってはアウェイ戦が小旅行になることもあります。例えば、息子のクラブのBチームは、今季に車で片道4時間のアウェイ戦があり、コーチは悶絶していました。最終的な順位によって各部のチームが入れ替わるのも特徴で、シーズンの終わり頃にはリーグ内の順位が気になってきます。子供のスポーツでありながら、リーグ戦のシステムはプロのリーグさながらで、白熱して応援している親もよく見かけます。
ステイトリーグを好成績で終えると、翌年に、近隣の州のトップチームが集まるリーグ戦にも参加できるようになります。昨年度、成績がよかった息子のチームは、デザート(砂漠)プレミアリーグと呼ばれる、近隣5州(ユタ、アリゾナ、コロラド、ネバダ、ニューメキシコ)の選抜された10チームで構成されるリーグ戦に出場する機会を得ました。こちらのリーグ戦では、2ヶ月ごとに全チームが一つの会場に集まり、金曜から日曜の週末にかけて3試合ずつ、全部で9試合の総当たり戦を行います。このリーグで2位までに入ることができれば、さらに全米を4地域に分けたリージョンカップの出場権が得られます。このリーグ戦の会場は、州を跨ぎ、飛行機の移動を伴います。学年が上がるごとに、参加するリーグ戦の規模が大きくなっていき、車で1、2時間の距離から、飛行機で1、2時間の距離に広がっていきます。
細分化されたリーグがもたらすメリット
育成年代でリーグが細かく分かれていると、ヒエラルキーが生まれ子供の育成にとって良くないのでは?と考えるかもしれません。しかし、実際にプレーする子供達や応援する家族は、あまりリーグのディビジョンを気にしません。むしろ、気になるのはそのリーグで優勝できるかどうか。各部で順位がつき、優勝競い、残留争いがあります。優勝するチーム数は、ステイトリーグや州の地域リーグを全部合わせて、一学年で15チームに登ります。どのレベルの子供にも、拮抗した試合が用意され、優勝を目指せる点で、このリーグの細分化は上手く機能しているように見えます。
これらのリーグ戦に参加するチームは、サッカーを一生懸命やりたい子供向けです。選手は毎年、チームのトライアウトを受け、合格したチームに登録する仕組みです。各選手の試合時間を十分確保するため、チームの登録選手数は制限されています。そのため、トライアウトは年々競争が激化し、時には、希望するチームに入れず、不本意な移籍になる場合もあります。毎年、あいつはどこに移籍した、などの話題は子供達の間で大いに盛り上がります。
一方で、初めてサッカーを始める子や、楽しくサッカーをしたい子には、レクリエーションチームがあります。こちらのチームは、誰でも歓迎、定員に達するまでに申し込みすれば参加できます。レクリエーションチームは、2、3ヶ月のシーズン制で、練習とレクリエーションチームのリーグ戦があります。私達が住む小さな街でも、レクリエーションチームは1学年に12チームもあり、レクリエーションリーグも活性化しています。
こういったシステムは、アメリカのフェア(公平)という考え方に深く根付いてます。日本でフェアと言うと、どのレベルの子供も同じ環境が与えられる平等を指すと思いますが、アメリカでのフェアは、それぞれの子供にあったレベルの環境が与えられる公平を指します。この公平性の考えに基づき、レクリエーションから全米大会を目指すレベルまで色んな構造を用意し、それぞれの子供に合った選択ができるように環境が整えられており、こうした多様性のある育成環境は、アメリカのユースサッカーにおいて気に入っているところです。
★「アメリカ発 少年サッカーの育成事情」でも執筆中