アメリカ少年サッカー記18 「ママのためのフォーメーション講座」
うちの子は、試合中になぜ棒立ちしているのだろう?
息子の試合を見ている時に、ふと疑問に思いました。息子がチームプレーに参加できていないようです。隣にいる夫にこの状況を聞いてみると、「まだボールに触ってすらいないよ」、なんて衝撃的な一言が返ってきます。試合が始まってしばらくの間、息子は、ボールに絡めていないのでした。時々、一生懸命に走りますが、それでもボールが全然回ってきません。
この原因は一体何なのか?ただ、息子が下手なだけなのか?それとも、疲れてこれ以上走れないのか?まさか、チームメイトと喧嘩してパスがもらえないのか。どんどんネガティブな思考の沼にはまります。
ところが、コーチは、この状況を全く違う角度で見ているようです。コーチが何と言っていたか、息子に聞いてみると、次の返答がありました。「このフォーメーションだと、どうしてもボールに絡まない選手が出てしまうので、これまでと違ったフォーメーションをやっていきます」と。何じゃそれ?フォーメーションによって、子供が活躍できたり、ボールが来なくなったりするのでしょうか?
今回は、このフォーメーションと子供のプレーの密接な関係についてご紹介します。
主なフォーメーションは3つ
11人制のサッカーには、プロの試合で見られるように、フォーメーションが何種類もありますが、実は、中学生がよく使うフォーメーションは限定されています。そのフォーメーションを知れば、子供の試合の見方がグン、と変わるかもしれません。
中学年代で、よく見るフォーメーションは、どのパターンでもディフェンスに4人を配置します。センターバックに2人、サイドバックに2人とし、対で互いをカバーするので、守備が安定します。プロのチームでは、ディフェンスを3人にするフォーメーションもありますが、その場合、チーム全体のバランスの取り方が難しく、中学生の試合では、ほとんどみることがありません。
ディフェンスに4人を配置すると、残りの6人をミッドフィルダー、フォワードのポジションに配分することになります。自ずとそのパターンは、4−3−3(守備4人、ミッド3人、フォワード3人)か、4−4−2(守備4人、ミッド4人、フォワード2人)に絞られます。4−3−3や4−4−2は、ゴールキーパーを除き、ディフェンス、ミッドフィルダー、フォーワードの横の3ラインに何人の選手を配置するかを示すフォーメーションの指標です。これらのフォーメーションはさらに細かく分かれますが、その中で中学でよく使われるフォーメーションは主に3つで、「4−3−3」、「4−4−2ダイアモンド型」、「4−4−2フラット型」です。今回はこの3つに注目し、子供達にとっての長所、短所をまとめました。
4−3−3
これは、ディフェンスが4人、ミッドフィルダーが3人、フォワードが3人のフォーメーションです。
長所
・前からプレスがかかりやすい
・サイドに人数が多く、攻撃がワイドになる
・各ポジションの動きが比較的シンプルで分かりやすい
短所
・左右のどちらかのサイドで攻撃や守備が続くと、もう片側のサイドにはボールが回りにくい
・全体的に前からハイプレスをかけるので、前線の選手のスタミナが切れやすい
・前からプレスをかけるため、ディフェンスが弱くなる
4−4−2(ダイアモンド型)
これは、ディフェンスが4人、ミッドフィールダーが4人、フォワードが2人のフォーメーションです。4−4−2には、ミッドフィルダーの配置にいくつかパターンがあり、ダイアモンド型は、中盤の選手をダイアモンドの形に配置します。
長所
・選手間の距離が近く、全選手がボールに関われる
・ウィングを配置しないので、サイドバックが攻撃に参加しやすい
・中盤の人数が多く数的優位になるので、ポゼッションしやすい
短所
・チームを一つのシステムとして動かないといけないので、全選手が理解しないと機能しにくい
・サイド攻撃が弱い
・サイドバックは、攻撃参加が増えるので、運動量を求められる
4−4−2(フラット型)
ディフェンスが4人、ミッドフィールダーが4人、フォワードが2人のフォーメーションで、中盤の選手を左右に広げて配置したシステムです。
長所
・中盤の選手を両サイドにワイドに配置できる
・オフェンスとディフェンスの前後の位置がコンパクトになるので、プレスをかけやすい
・オフサイドを掛けやすい
短所
・オフェンスとディフェンスが間延びすると、真ん中の選手が少ない分手薄になる
・フォワード2人のコンビネーションを取るのが難しい
・左右どちらかのサイドで攻撃や守備が続くと、他方のサイドの選手は試合に参加できない
U14前後のチームのママさんに聞くと、4−3−3を採用するチームが多いです。11人制が始まると、しばらくはフォーメーションを1つに固定し、11人制に慣れるように指導されますが、4−3−3は、そんな最初のフォーメーションに選ばれやすいようです。
そして、この3つのフォーメーションには、それぞれ、このポジションだと試合に参加しにくくなる、と言う、魔の組み合わせがあるのです。
魔の組み合わせはコレ
・4−3−3や4−4−2フラット型
このフォーメーションだと、ウィングやサイドバックのポジションに、ボールがこなくなる場合があります。どちらのフォーメーションも、サイド攻撃が多くなりますが、左右どちらかの攻撃が続くと、ボールが奪われるのも同じ側で、守備まで一方のサイドに寄りがちです。結果的に、もう片方のサイドの選手に、ボールがあまり回りません。冒頭の息子の試合の様子も、まさしくこの状態で、ウィンガーのポジションにいた息子にボールが来ないのでした。
この状況は、中学の最初の頃、逆サイドにサイドチェンジが少ないチームに起こりがちです。そのため、息子のコーチは、4-4-2ダイアモンド型に変更しましたが、このフォーメーションにも魔の組み合わせはあります。
・4−4−2ダイアモンドの場合
このフォーメーションは、ミッドフィルダーの人数が多く中盤でのボールの駆け引きが多くなるので、フォワードには、ボールが回ってこなくなります。
子供にボールが回ってこなかったらどうする?
もし、お子さんが、試合中に一生懸命に走り守備もしているにも関わらず、なかなかボールが回ってこなかったら、チームを観察してみてください。もしかしたら、その原因は、フォーメーションとお子さんのポジションの魔の組み合わせによるもの、かもしれません。そんな時は、何も言わず、見守る、で良いのではないでしょうか。
ところが、このフォーメーションとプレーの関係性には、困った問題が一つ生じます。上で見てきたような、フォーメーションの知識を用いて、息子のチームが使っている戦術を理解しようと試みますが、いざ実際の試合に当てはめようとすると、選手が入り混じり、さらに選手交代で選手の配置もコロコロ変わってしまうので、いったい今、どんなフォーメーションでプレーしているのか、私にはイマイチ分かりません。これぞまさしくサッカーの壁、サッカーはやっぱり難しい、と実感するのです。