指導者の言霊「アンソニー・ゴッドフレイ Coaching Resource Manager」
大人になっても必要なライフスキルをサッカーを通して身につける
私が指導しているリバプールFCには、選手を育成するために「リバプールウェイ」というクラブ独自のメソッドがあります。その中で特に大切にしている4つのポイントは「大志」「一生懸命プレーする」「選手としての品格」「チームが繋がる」という点です。
この4つのことを選手たちに教える目的は、将来、子どもたちがトップチームで活躍できる選手へ育成することが1番のテーマですが、同時に人として成長して生きていくためのスキルを養うことも目的としています。
サッカーの世界はとても厳しいので、全ての子どもたちがプロになれるわけではありません。 もしサッカー選手としてのキャリアがダメになってしまった場合やプロになれなか った場合は、社会で生きていく必要があります。リバプールウェイを学ぶことで、社会に出て働くことに順応するライフスキル、つまり生きていくためのスキルを養えるのではないかと考えています。
リバプールFCで指導しているライフスキルは様々です。 例えば、時間に遅れない、時間を守るということもその一つ。時間を守るというのは、トレーニングに遅刻しないということだけでなく、遅刻しないで学校に行くことも含まれます。 また、相手を尊重すると同時に自分のことも尊重する、規律を守る、良い生活習慣を身につける、これらの大切さなども、子どもたちに伝えています。
サッカーは、自分から発信できる主体的な選手になることも重要です。 リバプールFCでは、主体性を育てるために、コーチが小さな役割を与えるようにしています。例えば「ボールを拾うのは今回は君だよ」「ビブスを集めるのは君だよ」と声をかけ、小さな責任や役割を与えます。そうすると、練習に対して積極的になると同時に主体的にプレーできるようになるのです。主体的に行動するのは、ピッチ上もピッチ外も同じこと。明日着るものは前日に準備をする、といったように普段から主体的に行動してもらいたいのです。
それと同時に大切なのは責任感。例えば、自分の着ているウエアを脱いでグラウンドに置いた時、水筒を控室からグラウンドに持ってきた時、そういった時の物に対する責任は コーチや親ではなく子どもたち選手にあるのです。責任ある行動は、社会に出てからも大切なライフスキルなので、サッカーを通して身につけられるよう指導しています。
お互い理解し合うために重要なのは選手同士や指導者との繋がる力
子どもたちを指導する上で、私が1番大切だと思っているのは、メソッドの重要なポイントでもある“繋がる”ということです。 例えば、練習では知らない子どもたち同士が一緒になることがあります。その時にペアを作 って、お互いに競い合ったり、アドバイスやサポートをし合ったり、練習を共有することで、選手同士の結びつきや繋がりが強くなるのです。それを1年に2か月ずつペアを組んだ場合、6人の子どもたちとの繋がりが強くなる。そうすると、ただ名前を知ってるとか、学校を知っているだけではなくて、お互いの得意不得意な部分やプレースタイルまでも知ることになり、相手をより深く理解することにも繋がっていくのではないかと思うのです。
もちろん、コーチと選手が繋がることも大切だと考えています。 そのために何よりも必要なのは信頼感です。子どもたちが問題を抱えた時、それがサッカー以外のことであってもコーチに相談できるような信頼関係を築くことが必要です。従って、我々指導者は選手たちの模範にならなければなりません。子どもたちが練習帰りの車中や電車の中で「コーチがこう言っていたから、こんな風にするんだ」と、親御さんに伝えるぐらい模範になるべきだと考えています。 例えば、子どもたちに靴を磨くよう指導した時に、コーチも自分の靴をしっかり磨いていることが大切なのです。子どもたちが来週コーチに会えるのが待ち遠しい、楽しみだという風に思ってもらえるぐらい模範になることができれば、素晴らしいと思います。
※この記事は2015年8月24日に掲載したものです。