指導者の言霊「池上正 京都サンガ ホームタウンアカデミーダイレクター」 | サカママ メインコンテンツに移動
指導者の言霊「池上正 京都サンガ ホームタウンアカデミーダイレクター」

指導者の言霊「池上正 京都サンガ ホームタウンアカデミーダイレクター」

「サッカーは楽しい」指導する上で最も伝えたいこと

私が指導する上で、最も伝えたいことは、「サッカーは楽しい」という一言に尽きます。 先日、少年サッカーの指導者に向けた講習会で、私はウォーミングアップもさせずに「試合をしますよ」と言いました。おもしろいことに全員が「えっ!?」と驚きました。でも、しばらくすると指導者たちは、まるで子どものように楽しんでいる。そこで皆さんに「サッカーはこんなに楽しいものなんですよ。でもなぜ、皆さんは練習から入るのですか? まずは走ったり、体操させたりしていませんか?」と語りかけました。子どもはサッカーをしたいのだから、最初から試合をすればいいのです。60分間の練習なら、最初に20分間試合をして、そこで出た問題を20分で解決し、最後の20分でまた試合をすればいい。サッカーは楽しくなければダメなんです。

子どもたちが楽しむ、子どもたちを楽しませるという考えの指導者は、おそらくゼロに近いでしょう。強くさせようという人が99%くらいだと思います。子どもはうまくなりたいと思っていないかもしれないのに、指導者が余計なお世話をしている可能性もありますよね。サッカーを楽しむことこそが大事で、それを伝えるには、指導者が自らサッカーは楽しいものだと、実際にやってみせることが大切です。こんな例があります。千葉県で中学生を指導している方がいるのですが、最初は恐い指導者だったので子どもたちは萎縮していました。でも、その方自身が楽しませることを意識してからは、一切、怒らなくなりました。はじめは選手たちも疑心暗鬼でしたが、やりたいことを言える雰囲気に変わっていくと、その学校は県大会に出られるようになったのです。厳しい指導を受けてきた選手に話を聞くと、彼らは練習から逃げることばかりを考えている。指導が厳しいと、練習が辛いではなく、指導者が恐いと思うようになる。でも、それではあらゆる面でマイナスです。私が指導した子どもたちの中に練習が嫌いだと言った子どもは一人もいません。

子どもにとってサッカーは遊びと一緒。指導者は子どもたちを見守ってほしい。

指導者には、子どもたちを最後まで見守ってほしいと思います。無理にサッカーをさせる必要はありません。特に指導者には「頑張れ」とか「やれば何とかなる」という言葉を使う人が多いですが、実際は頑張っていても負けてしまうことはありますよね。子どもたちが練習していると、母親もお世話をしようとしますが、子どもにとってサッカーは遊びと同じなんです。だから、お世話をするよりも、見守ってあげる。その姿勢でいいのです。

日本のサッカーを本当に変えるなら、学校のクラブを見直すことです。J リーグも育成組織を持たずに学校へ指導に行けば、校庭もあるし、授業が終わったらすぐに練習もできますよね。家から近ければ、練習後に家で食事も勉強もでき、文武両道が可能になります。そうすれば時間をかけてクラブまで通う、親が送り迎えする必要もなくなるわけです。

私は、日本人が厳しさを間違って解釈していると思っています。叱りつけるとか、きついトレーニングをすることが厳しさだと。私の場合、娘がサッカーで忘れ物や遅刻をしても、一切手助けしませんでしたが、娘は周りから借りたり、自分自身で遅刻をしないようになりました。それが自立であり、あるいは大人になるということだと思うんです。

私は学年に関係なく、幼稚園から小学6年生まで一緒にサッカーをさせます。高学年の子は、低学年の子と試合をしたら上達しないと言いますが、実際の試合になるとパスミスを連発する。でも、その子に代わってコーチがプレーすればミスはない。そう示すことで、低学年の子どもとプレーしてもうまくなるということを見せてあげるのです。そうすることで協調性も身に付いていきます。

「夢」は遊びの中から出てくるもの。サッカーという楽しい遊びの中で、みんな自分がうまいと自慢したい。そういう子がうまくなってプロになる。楽しくて、もっと上達したいと思う子が、大きな夢を見るのです。

取材・構成/原田大輔(SCエディトリアル)

※この記事は2014年11月19日に掲載したものです。