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指導者の言霊「平野直樹 履正社高校サッカー部監督」

指導者の言霊「平野直樹 履正社高校サッカー部監督」

サッカーを好きにさせて次の年代に送ることが重要

私は「ボールを蹴る、止める、運ぶ」といった技術のベースを大事にした指導を心がけています。それは、ジュニア年代でも言えることだと思います。サッカーにおいてボールは唯一の武器であり、ボールの扱いが一番のベースになるからです。技術の習得=反復練習しかありません。ただし大事なのは、正しい反復練習をさせること。できるコーチは手本を見せてあげればいいし、コーチができないなら、できる子を引き合いにだしたり、iPadやスマホで映像を見せるのもいいでしょう。また、ジュニア年代は、真似をすることですぐに習得できる時期でもあるので、右足でも左足でも、ある程度自由に蹴れるよう意識させるのもいいかもしれません。

育成年代に関わっている指導者にとって一番大事なのは、よりサッカーを好きにさせることです。好きになれば、もっと上手くなりたいと思い、反復練習を頑張り、工夫するようになるのです。その時に大事なのは、指導者が、そうした子どもの努力を見逃さず、「いいぞ」と声をかけ、アドバイスをすること。チームの中に、そういった子が一人でも出てくるようになれば、他の子たちも自然と頑張るようになっていくのです。また、子どもたちに「このプレーどうなんだろう?」のように、いつも“?”をつけてアドバイスをすることで、探求心もうえついていくのだと思います。ジュニア時代は、そんな環境や、取り組む姿勢を作ってあげることが大事なのではないでしょうか。

公式戦に出られなかった選手には、練習試合の機会を設けてほしい

公式戦に、なかなか出場できない子もいるかもしれません。でも、勝てるメンバーを選ぶことは、勝負の世界では当たり前のことです。ただし指導者は、出場できないから駄目ではないということを、保護者、子どもにきちんと説明し、安心させてあげることが大事です。また、レギュラーが試合に出る、サブだから試合に出られないのではなく、応援にまわった選手にも、試合の機会を設けてほしいのです。コーチたちは大変かもしれませんが、例えば午前中に公式戦があったならば、午後に試合に出場できなかった子どもたちに練習試合を組んであげて欲しいと思います。子どもたちはみんな試合が一番楽しいものですし、ゴールを決めてネットをゆらす喜びやゲームでの勝利、仲間の大切さを覚え、また負けた時の悔しさから、自分の足りないことを努力するようになるのです。そして何より、監督やコーチが練習試合でも、公式戦と同じように指導をし、見守ってあげることが、平等な指導にもなるのだと思います。

大切なのは子どもと一緒に過ごす時間。むずかしい時は、メモ書きを添えて

保護者の方は、サッカーのことは口出しせず、子どもと一緒に食事をしたり、会話をする時間を大事にしてほしいのです。そうしたことが子どもにとって一番安心できる時間であり、心の栄養になるからです。

とはいえ、家庭の事情でそうした時間があまりとれない方もいるかもしれません。そんな時は、メモ書きを添えてあげてほしいと思います。用意した食事に「頑張って食べてね」、畳んだユニフォームに「思いっきり汚しておいで」のような簡単なメモでかまいません。メールでもいいでしょう。試合の応援に行けなかったとしても、ほったらかしにしてないことを伝えることです。孤独感を与えず、子どもを安心させることが、サッカーを思い切ってやれることにもつながるのです。

また、近頃は食事をとる量が減っている子も多いので、好き嫌いなく、量を食べられるように気を配ってほしいと思います。

昔は高校生になると親に「試合の応援に来なくていい」と言う子がほとんどでしたが、今はそんなことはありません。子離れ、親離れしていない、密な親子関係になっているように感じます。けれど、サッカーは自己責任や自分での判断が必要となるスポーツなので、自立には近づいていくのだと思います。